感染症内科への道標

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感染性のある検体検査中の、器具、実験室、実験者の汚染頻度

2018-06-13 | 感染制御

●目的
 感染性の高い疾患検体を扱う検査室は、検査室作業員に危険をもたらす可能性がある。しかし、標準的な保護用具(PPE)を使用して実施された日常的な実験室中でのウイルス感染のデータはまれである。この論文の目的は、患者検体の日常業務での検査室での汚染を評価することである。この研究から得られた情報は、実験室作業員への病原菌感染のリスクを低減するために臨床検査室の安全な運用を改善させるかもしれない。

●汚染を判断するためのマーカー
1 蛍光マーカー:医療従事者が用いる個人用防具(PPE)の汚染をモニターするために使用される。視覚化が容易ではあるが、検体処理中のウイルス粒子に特異的なマーカーではない。肉眼的汚染のマーカーとして用いることができる。
2 MS2:汚染のバイオマーカーとして用いることができる。血液や体液などの生物学的検体や実験装置にもともと存在しないため、新規汚染の検出に役立つ。

●材料および方法
 便や尿、EDTA全血、EDTA血漿、陽性血液培養中の鼻咽頭スワブからなる未同定の残検体

●結果
 残検体に非病原性のMS2バクテリオファージを添加し、MS2のRT-PCRを用いてコンタミネーションを評価した。資料容器には、UV光を用いて肉眼的に汚染を可視化できるように蛍光塗料で外装をコーティングした。試験は標準的な実験室のPPEおよび対応する機材を用いて2人の経験豊富な実験技術者によって行われた。

36/36 (100%):実験室技術者の手袋
13/36 (36%):実験室技術者の手
4/36 (11%):実験室技術者のコートの袖口 に蛍光塗料が検出された。
8/36 (22%):バイオセーフティキャビネット
14/23(44%):試験カートリッジ/装置
29/32(91%):付属の試薬 で蛍光塗料が検出された。

 蛍光塗料は、実験室機器やその周囲では検出されなかった。
 蛍光塗料の検出とは対照的に、MS2検出はめったにみられなかった。 検出されたものとしては、3/286 (1%)で、FilmArray機器および、FilmArrayアクセサリ機器の試験セットアップ内で検出された。蛍光塗料の検索では、手袋を2重にしてみたところ、内側の手袋は4/8(50%)で蛍光をはっした。素手では蛍光を発しなかった。技術者のそでには1/8(13%)で蛍光を発した。MS2は二重手袋でも作業員および、すべての試験後のスワブで陰性だった。

●結論
 今回の知見では、標準的な予防策とPPEの使用が遵守されていれば、感染性粒子の汚染から実験労働者を保護することが可能であることを示している。定期的な臨床検査で、検査室の表面が血液由来のウイルスで汚染される可能性はあるものの、標準的なPPEおよび標準予防策を実施することで検査室の作業員と計測器を保護することができる。

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