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小児下痢患者におけるスワブ検体の有用性(Luminex/培養)

2017-07-25 | 臓器別感染症:消化器系
題名: Enteropathogen detection in children with diarrhoea, or vomiting, or both, comparing rectal flocked swabs with stool specimens: an outpatient cohort study
著者名:Stephen B Freedman
雑誌名:Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017 Jul 13. pii: S2468-1253(17)30160-7. doi: 10.1016/S2468-1253(17)30160-7.

要旨:
嘔吐または下痢を3回以上認めた18歳未満の患児を対象に、直腸スワブ(綿棒を直腸に挿入・360度回転:flocked swab, FecalSwab)の有用性を便検体と比較した。基準検査としてLuminex xTAG Gastrointestinal Pathogen Panelおよび便細菌培養を用いた。
※flocked swab: 乾燥スワブ、FecalSwab:採取した検体を保存液に漬けるスワブ

本論文から得られる知見:
・総参加者1519名、そのうち便検体 1147名(76%)、スワブ検体 1514名(99%, flocked swab 1512名、FecalSwab 1468名)が提出された。便検体・スワブ検体の両方が提出された患児は1142名だった。 便検体の陽性数は871/1147, スワブ検体の陽性数は1024/1514だった。年齢中央値は1.6才(IQR, 0.94-3.30)。

・comparative yield: (陽性検体÷検体提出数)で計算
 ①便検体・スワブ検体の両方が提出された1142名で比較
  便検体:866/1142 (76%)、スワブ検体:793/1142 (69%)  
   →便検体の方が陽性率が高かった OR 1.38(95%CI 1.26-1.51)
 ②下痢を認める1015名で比較 OR 1.24 (95%CI 1.11-1.38)   
 ③下痢なし嘔吐のみの497名で比較 OR 1.77 (95%CI 1.50-2.10)   

・overall yield: (陽性検体÷総患者数)で計算 (検体提出がない場合は「陰性」と扱った)
  便検体:871/1519 (57%)、スワブ検体:1024/1519 (67%)
   →スワブ検体のほうが陽性率が高かった OR 0.65 (95%CI 0.59-0.72)

・便検体とスワブでの検出菌一致率(κ値)
 全体 0.76 (95%CI 0.68-0.80)、ウイルス0.82 (95%CI 0.79-0.86)、細菌 0.74 (0.68-0.80)
 ロタウイルスが 0.95(95%CI 0.93-0.97)と最も一致率高く、C.difficile 0.76 (95%CI 0.70-0.82)と最も一致率低かった。

※overall yieldの計算は便検体 377人分を全て「陰性」にしており、この結果から筆者の主張どおりスワブ検体の検査特性が優れていると言い辛い。しかし、実臨床では便検体をとれないことがあるため、検体提出率を含めた陽性率と解釈すれば、スワブ検体のほうが優れている点もあると考えられる。便検体が採取できる場合は便検体の提出を行ったほうがよさそうだが、便検体を採取できない場合は少し検出率が下がることを理解した上で、スワブ検体で代替可能かもしれない。
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