感染症内科への道標

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HTLV-1関連脊髄症(HAM)診療ガイドライン2019

2020-05-04 | 臓器別感染症:中枢神経系・頭頚部

日本神経学会、日本神経治療学会、日本神経免疫学会、日本神経感染症学会、日本HTLV-1学会、日本移植学会 監修

HTLV-1 
ウイルス:
・HTLV-1感染症のCD陽性リンパ球より検出
・B型肝炎などと異なり、血清(血漿)中には殆どウイルスを検出できないため抗体で診断する。一度感染した場合、自然に消失することは殆どなく終生感染が持続する。
・感染者の末梢リンパ球からHTLV-1の遺伝子を検出することができる。
・ATL, HAM, HU/HAUが感染症として代表的であるが、発症するのは感染者の5%以下。
 ATLの発症は60歳代後半に多い。

疫学:
・九州・沖縄地方に多く全体の40%が集中する。全体としては減少傾向にはあり、最近の予測では約80万人(日本)とされている。大都市圏では増加傾向にある。
・体液中にはウイルス粒子は殆ど検出されず、感染力は弱い。母乳を介した母子感染と、男女間の水平感染が主である。性交渉は配偶者間が主で男→女が優位である。これら以外で感染を広げる危険は無視してよい。
・2011年より妊婦検診でHTLV-1抗体スクリーニング検査が実施されている。

感染診断
・一次検査(抗体スクリーニング)→陽性の場合、ウェスタンブロット法(WBB)もしくはラインブロット法(LIA)→判定保留(20%)の場合にはPCR(2014年保険適用)、妊婦以外にPCR法の保険適応はない。LIA法の方が判定保留率が低い(2017.10保険収載)
・HTVL-1プロウイルス量が多いほどHTLV-1関連疾患の発症リスクが高い。プロウイルス4%以上でHTLV-1関連悉皆の家族歴を有する場合はATL発症のハイリスクグループ

HAM 
・HAMの平均発症年齢は43.8歳で女性に多い(1:2-3)、毎年30名前後 
・両下肢の痙性麻痺、抗HTLV-1抗体が血清・髄液で陽性、ほかの脊髄疾患を除外できることの全てを満たす場合に診断される。排尿障害は9割以上にみられ、病初期より出現する。

指針要約
・成人HAM患者において、ステロイド内服治療を行うことを条件付きで推奨する。2D 
・成人HAM患者において、インターフェロンα治療を行うことを条件付きで推奨する。2D
・成人HAM患者にいて抗レトロウイルス薬を使用しない事を推奨する。
・成人HAM患者においてステロイドパルス療法の推奨はなし。但し疾患活動性の高いHAM患者に対しては、発症早期にステロイドパルス(保険未承認)を行うことが望ましい。

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