「苦役列車」を観た後に、ああ、原作はあの芥川賞作家の自伝的小説だったんだと気がついた。
なんともいえない不思議な後味のする作品だった。
主人公には人に心を許せぬ傷がある。時代は昭和の終盤61年から64年頃。
19歳。青春を謳歌するその時期に彼は、日雇いの生活費を家賃もなくなるほど酒、タバコ、そして風俗へと費やすだけの日々を送っていた。
学歴、家族、友人、金、定職を持たず漂い生きる。黙々と現場で重労働をし、ただ腹を満たすだけの食事と暇さえあればタバコをくわえ、鬱憤を晴らすために安酒をあおり風俗に通う。
誰から見ても生産的ではなく、イケてない生き方。でも彼はあきらめている。見栄を張る気もなく観念的で刹那的な生き方を選んでいる。
しかし、そんな彼にもおぼろげながら読書という趣味があり、いつか自分の作品を書きたいと思っていた。
それははかなげな夢だった。夢を抱くことすら否定してきたから。
父親の犯した犯罪をあたかも自分自身の汚点だと戒めてきたから。
現場で知り合った初めての親友。行きつけの古本屋で一目惚れした女の子。
自堕落な曇り空のような彼の生活に、時折晴れ間が現れたような二人の存在。
しかし、破壊的な彼の言動は次第に二人を遠ざける。
どこまでも天涯孤独な彼。その不器用さがあまりに痛い。
三年がたち、現場で負傷した同僚が夢叶えテレビのオーディションで歌う姿を見る。
同僚も中卒がコンプレックスで、自分たちには夢も希望もないと嘆いていた。しかし、泥沼のような生活からはい上がる力を振り絞っていた。
彼は変わった。相変わらず安アパートのその日暮らし。金もなく恋人も友人も家族もない。もちろん肩書もない。
あふれるような感情を、書きなぐる後ろ姿で映画は終わる。
確実な希望ではなく、しかし絶望でもない。
無心で書く彼の背中。飲み屋での乱闘により、傷まみれの裸姿。全て無くしたのは彼の意思。しかし、最後に残ったのはペンだった。
主人公の貫太役は、森山未来が演じていたせいかどこか明るくお茶目で、それに救われたかな。
なんともいえない不思議な後味のする作品だった。
主人公には人に心を許せぬ傷がある。時代は昭和の終盤61年から64年頃。
19歳。青春を謳歌するその時期に彼は、日雇いの生活費を家賃もなくなるほど酒、タバコ、そして風俗へと費やすだけの日々を送っていた。
学歴、家族、友人、金、定職を持たず漂い生きる。黙々と現場で重労働をし、ただ腹を満たすだけの食事と暇さえあればタバコをくわえ、鬱憤を晴らすために安酒をあおり風俗に通う。
誰から見ても生産的ではなく、イケてない生き方。でも彼はあきらめている。見栄を張る気もなく観念的で刹那的な生き方を選んでいる。
しかし、そんな彼にもおぼろげながら読書という趣味があり、いつか自分の作品を書きたいと思っていた。
それははかなげな夢だった。夢を抱くことすら否定してきたから。
父親の犯した犯罪をあたかも自分自身の汚点だと戒めてきたから。
現場で知り合った初めての親友。行きつけの古本屋で一目惚れした女の子。
自堕落な曇り空のような彼の生活に、時折晴れ間が現れたような二人の存在。
しかし、破壊的な彼の言動は次第に二人を遠ざける。
どこまでも天涯孤独な彼。その不器用さがあまりに痛い。
三年がたち、現場で負傷した同僚が夢叶えテレビのオーディションで歌う姿を見る。
同僚も中卒がコンプレックスで、自分たちには夢も希望もないと嘆いていた。しかし、泥沼のような生活からはい上がる力を振り絞っていた。
彼は変わった。相変わらず安アパートのその日暮らし。金もなく恋人も友人も家族もない。もちろん肩書もない。
あふれるような感情を、書きなぐる後ろ姿で映画は終わる。
確実な希望ではなく、しかし絶望でもない。
無心で書く彼の背中。飲み屋での乱闘により、傷まみれの裸姿。全て無くしたのは彼の意思。しかし、最後に残ったのはペンだった。
主人公の貫太役は、森山未来が演じていたせいかどこか明るくお茶目で、それに救われたかな。