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恐怖のルート87(ウルトラマン第20話)

2009-04-03 23:43:47 | 特撮:ウルトラマン
●「恐怖のルート87」昭和41年11月27日放映 高原竜ヒドラ登場
 制作第20話 放映第20話 脚本:金城哲夫 監督:樋口祐三

 昭和40年代、「交通戦争」と呼ばれた多数の交通事故、そして死者。特に子どもが事故死する悲劇は、多くのドラマの中でも描かれていました。『ウルトラマン』でのこのエピソードも、交通事故で死んだ少年が残したデザインによる「怪獣の像」とそっくりの怪獣が、クルマを襲うというものです。そして「人間社会を脅かす怪獣」をウルトラマンが初めて退治しなかった(ガヴァドンはそこまで脅威の存在ではなかったので)、という問題作です。私は子どもの頃、「ヒドラ」のデザインとこの結末があまり好きではありませんでした(^^ゞ(今は好きですが)

 劇中に登場する「高原竜ヒドラ」の像は、伊豆シャボテン公園の「荒原竜」が使われています。この像は『仮面ライダー』第14話、一文字隼人が初登場する「魔人サボテグロンの襲来」でのショッカーアジトのロケでも使われています。たしかに、初期ショッカーの紋章にも似ています。ムラマツ役の小林昭二さんは、2大ヒーロー番組のロケで2回もロケに訪れていることになります。
 大室山から姿を現したヒドラに対してスーパーガンやスパイダーで攻撃するシーンでは、ハヤタ役の黒部進さんが腰を落とした拍子にサボテンの上にお尻をついてしまい、トゲが刺さって大変だったそうです^^;

 ナレーターが浦野光さんに交代されています。

 大室山公園の異変を目撃した警備員は金井大さんですネ。『ウルトラマン』では他に第37話「小さな英雄」でピグモンが現れたデパートの店員だったり、『ウルトラセブン』第3話「湖のひみつ」でエレキングの幼生を釣り上げそうになったり、エレキングの出現をウルトラ警備隊に通報したり、第44話「円盤が来た」ではフクシンくんが働く工場の社長だったりと、ずいぶんたくさんのエピソードに出演されています。

 半年前から急に木が枯れ始めた大室山。そして「高原竜ヒドラ」をデザインし、科特隊本部に現れ「ヒドラが暴れだす」と言い残したムトウアキラ少年は、半年前に交通事故で死んでいた! この流れ、非常に怖いんですけれど‥‥。怪談のようですよネ。アキコ隊員がアキラ少年の写真を目にして、「この子だワ、本部に現れたのはこの子なのヨ。」と言うシーンでは、今でも鳥肌が立ちます‥‥。

 樋口祐三監督は、現在でも『水戸黄門』などのプロデューサーとしてご活躍です。当時はTBSの助監督だったようで、円谷一氏の作品に関わっていました。その縁での登板なのでしょうが、金城哲夫氏による『ウルトラマン』としての王道的なストーリーを堅実に演出されています。この「恐怖のルート87」では、怪事件と科特隊の捜査活動、人知の及ばない不思議さ、科特隊の作戦行動(第1話に倣って「ウルトラ作戦第2号」と命名)、そしてウルトラマンと怪獣の激しい戦闘が盛り込まれています。脚本から導かれたものでしょうが、そこにはプロデューサー的な視点が働いているように思います。
 そして最後には、ヒドラとともに昇天していくアキラ少年の姿を認めたアキコ隊員の言葉に応えて、スペシウム光線を放たないウルトラマン。ウルトラマンの優しさが感じられるシーンです。こんな結末を用意して映像化した金城、樋口両氏によって、ウルトラマンの魅力に幅が生まれました。また、スペシウム光線を発射しようとした手をふっと緩める、古谷敏さんの演技も見事にそれに応えています。(ヒドラに一度やられて倒れ、気が付いてから頭を軽く振るシーンも見事!)
 このエンディングに流れる劇伴は、『ウルトラQ』の「鳥を見た」のものですネ。さすがに『ウルトラQ』から関わっている樋口監督らしい選曲だと思います。

 大室山が発光して、ヒドラが現れるシーンや、ヒドラが飛行するシーンはかなりの迫力です。これは『空の大怪獣ラドン』にもヒケをとらないでしょう。

 今回から、最後にウルトラマンが飛び立つ時の声が「シェア!」から「シュッワッチョ!」(←私にはこのように聞こえます。オノマトペって難しい‥‥)に変わります。
 ハヤタがケガをしていても、ウルトラマンには影響が無いんですネ。第22話「地上破壊工作」でも、地底人に操られていたハヤタが変身したあとのウルトラマンは、地底人の思い通りにはなりませんでしたし。

 ジェットビートルからの攻撃はフラッシュ光に戻っています。また、垂直離陸ではなく、カタパルトから発進するという珍しいシーンもあります。

 アキラ少年が轢き逃げ事故に遭ったという「国道87号線」は実在しません(国道では二桁は59~99が欠番だそうです)。この名前は、誤植によって「M78星雲」となった、元の「M87星雲」と関連があるのでしょうか。


  ●ヒドラ

 飛行機乗りに憧れていた円谷英二氏を想い、「鳥形の怪獣は悪モノとして描かない」という配慮がされていたそうです。
 シャボテン公園の「荒原竜」を基にデザインされたものでしょうか。シャボテン公園にある像は「荒原竜」ですが、「ヒドラ」は「高原竜」となっています。
 ギリシャ神話の「水蛇ヒュドラ」から名付けられました。
 特殊能力としては、一瞬だけ口から炎を吐く描写があります。また、翼を羽ばたいて強風を巻き起こしたり飛行したりできます。翼を羽ばたかせるシーンでは、腕と翼が固定されて撮影されています。

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4 コメント

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Unknown (tirusonia)
2009-04-05 07:41:21
デザイン的には鶏に近い感じ。口ばしの攻撃は、ウルトラマンの頭を割りそうな勢いがありました。ウーと並び霊が関与する怪獣ですね。
HGの紫色は実物と違い変。
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アキラ少年の霊 (自由人大佐)
2009-04-05 10:37:21
 エンディングのヒドラに乗ったアキラ少年の霊の合成は、縮尺のおかしさには目をつぶって(苦笑)、なかなか良いトーンですネ。

 ガシャの紫は明らかに違和感があります。
返信する
けっこう苦戦してましたね (こーじ)
2009-04-06 00:35:22
 ウルトラマンはヒドラに対して珍しく苦戦してましたね。
 鳥系の怪獣に対する相性の悪さは、これが元祖ですか。

 ちなみに このEPは死んだはずの子供が霊になって警告に来るなどウルトラマン版ノンマルトの使者という感じですね。
  
 そうそう、初めて科特隊本部に守衛らしき人がいるのが分かりますね。
 あの大きな基地に5人しか普段は存在しませんでしたから。

 ラストでウルトラマンがスペシウム光線を撃たずにアキラ少年を乗せたヒドラを見送るシーンのBGMは鳥を見たの`鳥と少年’ですね。
 場面に見事にシンクロして大好きなラストになってます。
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鳥系元祖 (自由人大佐)
2009-04-06 22:01:36
 「円谷の鳥型怪獣が悪モノではない」の元祖は「リトラ」と「ラルゲユウス」ですネ。だから、ラストの劇伴がシックリするのでしょう。

 ウルトラヒーローと戦う鳥型怪獣の元祖は、まさにこの「ヒドラ」です。
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