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横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

丹沢のセラドナイト(セラドン石)

2015年11月02日 | 鉱物・地質
 
神奈川県は都に隣接する首都圏ですので、あまり自然が豊かなイメージは無いかも知れません。しかしながら、地質学的にみると、実は非常に面白い場所が数多くあり、その意味では特異な県だとも言えそうです。

県東側では、三浦半島に数多くある地層の露頭や、活断層などが挙げられます。県西側では、沸石で有名な湯河原や、箱根・丹沢といった、特徴的な地質や鉱物を多くみせてくれる地域もあります。隣県まで少し足をのばせば、静岡や山梨の富士山溶岩や火山灰、埼玉などの三波川変成体など、興味深い場所がたくさんあります。

そのなかで、今回は丹沢山地(特に東丹沢)でみられる特徴的な鉱物である、セラドナイト(セラドン石)を挙げてみます。

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セラドナイトは、理想組成式(Mg,Fe2+)(Fe3+,Al)[(OH)2 |Si4O10]の、青みがかった緑色が美しい鉱物です。特に綺麗なものは、翡翠のような宝石に近い外観のものもあります。それほど貴重な石ではありませんが、特殊な成因でできる石なので、ありふれた石という訳でもないようです。書店などで良くみかける「鉱物フェア」の類では、まず売られていません。ネット販売などでも、売っているのを見たことがありません。堀秀道さんの『楽しい鉱物図鑑』でも、ややマイナーな鉱物を紹介する第2巻で出てきます。

東丹沢では、このセラドナイトが、ざっくざっくと採れます。採れますというより、簡単に拾えます。


セラドナイト(神奈川県愛川町中津川産 横浜地球物理学研究所蔵)
(実物は石全体がもう少し綺麗な青緑色に見えるのですが…。茶色の部分はデイサイト質凝灰岩で、丹沢でのごく一般的な産出形状です)


神奈川県では、ごくごくまれにですが、「セラドナイトをみつけよう」といったツアー(イベント)があることがあります。色が翡翠に似ているので、勾玉に加工することもあるようです。そういったイベントで、丹沢の山奥に入って行ってセラドナイトをみつけたりすることもあるのですが、沢の上流にある大きな露頭を目指すものでない限り、東丹沢を流れる川の河原で当たり前に見つかります。ハンマーすら必要なく、転がっているのを拾うだけです。付近にお住まいの方は、ぜひ探してみてはいかがでしょうか。

上の画像のセラドナイトを採取したのは、中津川という川です。中津川は相模川の支流で、宮ケ瀬湖を上流に持ちます。特に、愛川町中津付近の中流域は、バーベキューを楽しむひとたちで賑わい、車を停めるところも広いので、便利です。その河原で、特に川の水が流れているところまで入ると、青緑色の石ころがあっと言う間に、簡単に見つかります(濡れているほうが目立ちます)。ここで綺麗な青緑色の石があったら、まずセラドナイトだと思って良いと思います。鉱物採集の「入門中の入門」として、おすすめできます。


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セラドナイトは、海底火山の噴出物が海底に堆積し、海水中の成分と反応することによって生成するのだそうです。つまり、丹沢で特徴的にセラドナイトが見つかるということは、丹沢山地がかつて海底火山であった証拠なのです。同様な起源を持つ伊豆などでも、セラドナイトは見つかるようです。詳しいところは専門家の方に譲りたいのですが、丹沢のセラドナイトは、おそらく1500万年以上前(古第三紀から新第三紀)に、海底で堆積しつくられたものだと思われます。

このような地質学的にも面白く、かつロマンあふれる鉱物が、ふつうに転がっていて簡単に採取できるのですから、神奈川県は(意外にも)おもしろいのです。

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3 コメント

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鉱物大好きですが・・・ (Skullcrusher707)
2015-11-02 20:10:16
セラドナイトは古来よりテールヴェルトという顔料の原料としても使われていて、現在市販されているテールヴェルトは合成品ですが、退色し難いので私は好んで描画に使用しています。

日本国内に於けるセラドナイトの産出地が限られているとしたら、各地の古墳から検出されているセラドナイトは交易で広まったのかも知れません。

上述のように、自分は顔料絵具を使って描画しているので、顔料の原料である藍銅鉱、孔雀石、ラピスラズリなど鉱物に興味があり、鉱物店で購入した物を持っていて、今度鉱物店でセラドナイトを見付けたら購入したいですが、それが簡単に拾えるとは羨ましいです。

南関東は、領家帯、三波川帯、秩父帯、四万十帯が狭い範囲に集まっているので、産出される岩石・鉱物の種類は多いと思いますが、近畿北部の地質も、大陸地殻の下に沈み込んでいく海洋プレートと共に地殻下部に沈み込んだ「底付け付加体」が隆起して形成されているので、多種類の岩石・鉱物が産出し、曽ては多くの小規模鉱山が稼働していました。

自宅と目と鼻の先にある生駒山地でも様々なペグマタイト鉱物が産出するようですが、鉱物探しに迄は手が回りませんね。
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Re: 鉱物大好きですが・・・ (横浜地球物理学研究所)
2015-11-04 08:40:32
Skullcrusher707様

コメント有難うございます。
セラドナイトも顔料として使われているのですね。私も藍銅鉱や辰砂など顔料となる鉱物(買ったものです)を持っていますが、眺めていると砕いて顔料を作りたい衝動に駆られます(笑)。

石を拾うのは折々よくやるのですが、なかなかハンマーを持って採集に行くまでは手が回りませんね…。絵も描いてみたいのですが、それも手が回りません…。
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JESEAの狡猾さが増しました。 (Skullcrusher707)
2015-11-10 20:33:04
今や地震予知界のアイドル的存在wとなった村井センセ以外の記事だとレスが来ないようなので、鉱物ネタを連投します。

私はチューブから出した原色をそのまま使うことは無いので、道端に落ちている石でも砕いて顔料に出来たら、落ち着いた色彩の絵になるのになぁと思うことがありますが、手間が掛かり過ぎるので、実行したことはありません。

昔の人は実際に手間暇を掛けて鉱物を選別し、精製して顔料を作っていたので、色彩が富や権力の象徴であったことが頷けます。

藍銅鉱をお持ちの横浜地球物理学研究所はご存知でしょうが、藍銅鉱は孔雀石と混じって産出されるので、純粋な天然群青を集めるのは大変な手間だと容易に想像出来ます。

その孔雀石も顔料に利用されますが、笙のリードにも孔雀石の粉末を塗って調律していて、雅楽をしている人から孔雀石を売っている所を聞かれ、鉱物店で購入した孔雀石を譲ったことがあります。

扨、JESEAが地震予測の根拠にしている「週間異常変動」を最終解から速報解へ切り替えたこともご存知と思いますが、彼らはそれでも飽き足らず、段彩図とかいうグラデーションを付けた画像を表示し、4cm超より更に小さい変化でも、其処に「異常変動」が起きたかのように見せる手法も始めたようです。

地震や噴火の規模の差異を全く理解出来ていない村井センセが長野県神城断層地震を見事に外してから1年近くになりますが、彼ら今度は絶対に外さないように、毎号のメルマガで北信越地方・岐阜県にあれこれと「異常変動」をこじつけて警戒情報を出し続けています。

新潟-神戸歪集中帯という地震常襲地帯である北信越地方・岐阜県では、震度5程度の地震など何時でも起こり得る訳で、発生したら三流週刊誌で囃して貰って宣伝材料に使う腹積もりなのでしょう。

7年経過しても予測している地震が発生しない串田嘉男氏は既に「過去の人」になりつつありますが、商売上手の村井俊治一味の害毒は更に蔓延しそうな気配なので、糾弾の手を緩めてはならないと考えています。
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