横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

早川正士・電通大名誉教授の地震予測「予知するアンテナ」は当たるのか?

2017年02月02日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)
 
昨年2016年の9月から、早川正士・電通大名誉教授という方が、予知するアンテナという有料地震予測サービスを開始しています。

早川正士氏といえば、かつて電波を観測して地震を予測する「地震解析ラボ」という団体を立ち上げて有料地震予測をしていましたが、なぜか「地震解析ラボ」から離脱して、独立した格好です。

サービス開始以降、「予知するアンテナ」は色々な夕刊紙や週刊誌などで取り上げられ、「地震予測の的中率は7割ほど」だと宣伝し、次々と地震予測を披露してきました。では、それらの地震予測は、果たしてどれくらい的中していたのでしょうか。以下に検証してみましょう。


 ■

2016年9月のサービス開始から、2017年1月まで、早川正士氏の「予知するアンテナ」が、週刊誌や夕刊紙に発表してきた地震予測は、以下のとおりです。


「2016年9月10日までに北海道~東北で大きな地震が起きて津波が発生する」
 (夕刊フジ 2016年9月7日)

「北海道・東北太平洋岸で9月中に震度5!」
 (FRIDAY 2016年9月16日)

「2016年10月12日までに岩手を中心に最大震度5弱」
「2016年10月12日までに熊本から沖縄で最大震度5弱」
「2016年10月15日までに福島~千葉でM5台」

 (いずれも夕刊フジ 2016年10月11日)
 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161011/dms1610111550004-n2.htm

「2016年12月20日までに道東からオホーツク海にかけて内陸ならM5・0前後、海底ならM5・5前後」
「2016年12月25日までに宮城から岩手にかけて内陸ならM5・0前後、海底ならM5・5前後、最大震度は青森、福島も含めて4程度」
「2016年12月25日までに東北地方の南側から房総半島にかけて内陸ならM5・5前後、海底ならM6・0前後。福島、茨城で最大震度5弱程度」
「2016年12月20日までに北信越を中心に東海や北陸にかけての内陸でM5・0前後。岐阜と長野で最大震度4程度」
「2016年12月22日までに中国、四国、九州、沖縄で内陸海底ともにM5・5前後、最大震度4程度」

 (いずれも夕刊フジ 2016年12月20日)
 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161220/dms1612201700011-n1.htm

「2017年1月7日までに南九州から南西諸島にかけてM5・5前後」
「2017年1月9日までに中国、四国、九州にかけてM5・5前後」
「2017年1月9日までに小笠原諸島の海底でM6クラス以上」

 (いずれも夕刊フジ 2017年1月6日)
 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20170106/dms1701060830006-n1.htm

「2017年1月中に、福島が2度大揺れする」

 (FRIDAY 2017年1月13日)


以上、ざっと数えますと14件の地震予測を発表してきたことになります。では、そのうち、的中したものはどれくらいあるのでしょうか。

…なんと、以上の14件の地震予測のうち、1件たりとも的中がありません

強いて言えば、夕刊フジの2016年12月20日号で発表した「2016年12月25日までに東北地方の南側から房総半島にかけて内陸ならM5・5前後、海底ならM6・0前後、最大震度は5弱程度」という予測に対して、同12月24日に福島沖でM5.1の地震が発生したケースがあります。しかし、M6.0という予測に対して実際はM5.1であり、規模は大きく外れています。また、「最大震度は5弱程度」という予測に対して、実際の最大震度は3でした(しかも郡山市の観測点1点だけ)。さらに言えば、この12月24日の地震は、同11月22日の福島沖M7.4の余震に過ぎず、大きな地震の後には余震が起きることは誰でも知っていることですので、仮に的中させたのだとしても全く驚くべきものではありません。

 ■

このように、自分では「的中率は7割ほど」だと宣伝して有料地震予測サービスを行っておきながら、実際に検証してみると「14件予測して1件も的中しなかった」わけです。7割どころか、地震予測能力はほぼゼロであるようにしか思えません。こうした宣伝文句と実績との大きな乖離は、強い批判を浴びてもさすがに文句は言えないのではないでしょうか。

ぜひ早川正士・電通大名誉教授には、ご自身の地震予測の精度をいまいちど客観的に振り返って頂き、真摯な態度で研究及び事業を見直して頂きたいと、切に願っています。


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8 コメント

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明白ですね (みれ)
2017-02-02 13:35:26
こういった地震予知は、得てして有料会員制サービスで発信しているので、第三者によるオープンな検証を行うのが難しいですよね。
「7割的中!」とか言われると、いくらハズレ例をあげつらっても「それは3割の方だから!」と逃げられそうです。

しかし、今回の検証からでも、早川氏の予測は明白にデタラメだとわかりますね。わざわざメディアに発表した情報の9~10割ハズレなのですから・・・
返信する
客観的な検証が必要だと言うことがよく分かります (ばーど)
2017-02-05 22:51:27
週刊誌や日刊紙を見ると、「見事的中!」「恐ろしいほどよく当たる」と言う風に、自賛されることが多い訳ですが、冷静に発表を検証して確認すれば、この有様というのは、いつもながら誇大広告が過ぎますね。

やはり科学は検証と批判、そして再構築というプロセスを得なければ、まともな理論にならない訳です。その点を無視すれば、「足を引っ張っている」だの、部分をあげつらって、「矛盾している」だのという、非難をしてくると言う非科学的な論法が出てくることになります。

早川先生にせよ他の方にせよ、大学教授や名誉教授の肩書きを持つ以上、きちんと科学的な視点を持って、ご自身の理論を客観視する勇気を持ち合わせてほしいものです。

それではまた。
返信する
地震予知におけるメディアの責任 (伊牟田勝美)
2017-02-08 00:22:59
ばーど様の御指摘のとおり、早川氏にせよ、村井氏にせよ、検証が甘いですね。キチンとした検証を行えば、予知できていないことが簡単にわかるはずですから。
メディアが誇大広告を張ることも、おっしゃる通りです。
真実を伝えるべきメディアが、デタラメ地震予知を蔓延らせる要因の一つになってしまっている理由として、メディアの科学的なチェック能力の欠如があると、思っています。

実例として、「セウォル号事故」の解説があります。
御存知のとおり、事故原因はセウォル号の復元力にありました。
復元力を語るには「メタセンター」は外せないのですが、「セウォル号」でニュース検索をすると1500件以上もヒットしていたのに、「メタセンター」では0件でした。

同様に、ダイエット術の紹介も科学的根拠が薄い点で似ています。
なぜ痩せられるか、後付けと思われる理由は添えられていますが、肝心の「体重(質量)どこから体外に出て行くのか?」を説明したダイエット術を見たことがありません。
その割には、聞き覚えのない物質名を並べて、「痩せられる!」と力説しているのです。
肝心な部分を無視していたら、効果も半減しますよ。

「えっ? そう言う貴方はどうなのかって?」
今はですね、地震予知とメディアの問題をコメントしてるんですよ。
私の体型は、関係ないでしょう!
返信する
尺度のちがい (シン)
2017-02-16 10:17:23
地震予知は難しいものだと思います。
この分野の研究は、いつ、どこで、どれぐらい 全てを的確に予測するまでには至っていないのではないでしょうか。

ただ、その全てが的中しなくても危険を伴うケースは多く、このような予測情報が少しでも減災につながれば良いのではないかと私は考えますけどね。
返信する
Unknown (サンピラー)
2017-02-18 19:49:23
シンさん

>その全てが的中しなくても危険を伴うケースは多く、このような予測情報が少しでも減災につながれば良い

「このような予測情報が少しでも減災につながれば良い」という人は結構います。
しかし、この考えにはかなりの疑問符がつきます。
なぜなら、いつ地震が起きてもいいように(予測関係なしに)備えればいいだけですから。
減災を考えるなら予測の必要性はほぼありません。


・・・もしかしたら、
何か具体的に不安を煽る情報がなければ対策する気が起きないのかもしれません。
また、予測期間でないときに、地震対策を疎かにしてしまう可能性もあります。
それらは怠惰でしかないのですが・・・
返信する
不思議に思うこと (ばーど)
2017-02-25 09:24:39
シン様のコメントやそのほか、早川先生や村井先生を擁護される方のコメントを見ていて、改めて気が付いたことがあります。

擁護されている方々の多くは、「早川先生や村井先生の理論を実は全く理解できていない」と言うことです。

普通、「○○先生の言っていることは正しい!」と理解できているなら、「○○先生の理論は、××な着目点に基づいているので、このように正しいものなのです」と言う感じで、きちんと論理的な擁護が出来るはずです。

しかしコメントを見ていると、「全てが的中しなくても危険を伴うケースは多く、このような予測情報が少しでも減災につながれば良いのではないかと私は考えます」とのように、減災に繋がると主張される方や、「今の的中率が低くても、これから向上するはず」と確率論に拘る方、「まじめな研究をしている人の足を引っ張るな」という感情論に逃げる方ばかり見受けられます。
これらはただ、「地震を次々的中!」と言った文言に踊らされているだけの、非論理的な逃げです。
なぜ自分が理解できないものを、そこまで盲信できるのか、いつも不思議に思います。

あと減災については、私もサンピラー様と同じ意見です。
地震予測情報以前に、普段から減災についてまじめに考え、準備していれば良いだけの話です。
わざわざお金を払ってまで、得なくてはならない貴重な情報なのだかどうか、コスパにあったものなのかどうかと個人的には思っています。


管理人様
「理科の探検」早速注文しました。楽しみに読ませて頂きます。
返信する
Re:不思議に思うこと (横浜地球物理学研究所)
2017-02-27 10:43:37
ばーど様

>「理科の探検」早速注文しました。楽しみに読ませて頂きます。

ありがとうございます!
かなりマイルドに書いたので、物足りないと思われるかも知れません(笑)。限られたページ数では、やはり書ききれませんね…
返信する
2.4% (伊牟田勝美)
2017-04-16 16:15:05
「予知するアンテナ」は、以前の「地震解析ラボ」とは違い、過去の予知情報も公開しないので検証が大変ですが、Twitterの内容からできる範囲の検証を行ってみました。

Twitterでは、東北、南東北、北関東、北総、関東、中部の地名が出てきます。
具体的な場所は分からないので、東北は東北六県、南東北は宮城・山形・福島、北関東は群馬・栃木・茨城・埼玉、北総は千葉県北部、関東は一都六県(島嶼部は含めず)、中部は山梨・長野・新潟・富山・石川・福井・静岡・愛知・岐阜(三重県は含めず)の九県とみなしました。
予知期間は、Twitterに「〇〇に△件の地震予知情報が出ています」と出てから次のTwitterの前日までとしました。
Twitterによる地震予知情報の宣伝は、2016年9月13日から始まっています。
切りが良かったので、2017年3月31日までのちょうど200日間について検証してみました。
検証のポイントは、「重大な地震を予知できているか?」です。

検証した結果、東北から中部の全6地域のそれぞれで、全て最大の地震が発生した時点でTwitterに地震予知情報は出ていませんでした。
つまり、最大の地震を全ての地域で予知できていなかったのです。
その確率を計算すると、僅か2.4%でした。
ここまで見事に外されると、逆に「ワザと外した」と思えてしまうくらいです。
返信する

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