VLF/LF電離層擾乱に基づいて有料地震予測サービスを行っている、「地震解析ラボ」(所長:早川正士・電通大名誉教授)という団体があります(運営会社はインフォメーションシステムズ株式会社)。
当サイトでは以前より、地震解析ラボの地震予測を検証し、有意な予測能力は全くみられないと指摘してきました。しかしながら、彼らは依然として有料地震予測サービスを継続しており、メディアでもしばしば「精度が高い」などと紹介されているようです。
そこで今回は、地震解析ラボが、2016年4月14日に発生した熊本地震(4月16日に本震とされるM7.3、最大震度7)を事前に予測できていたのか、検証してみましょう。
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地震解析ラボの過去の予測実績は、彼らのサイトで公開されています(こちら)。このなかから、熊本地震の発生直前である、4月11日に地震解析ラボが発表していた地震予測を、以下に抜粋します。
…いかがでしょうか。北海道東部から千島列島、関東の太平洋側、伊豆諸島から小笠原諸島、伊予灘から日向灘、そして南西諸島に地震予測が出ています。しかし、熊本県は全域が、予測領域から外れていることが分かります。
熊本に近い場所では、伊予灘~豊後水道~日向灘にかけて、青く示された予測領域(識別番号028)が出されていますが、青は予測規模「M5.0前後」(M4.7~M5.3)を意味しており、熊本地震の規模M7.3とは全くかけ離れています。熊本県も全くカバーしていません。
以上から、かなり甘く判断しても、熊本地震は予測失敗したと言うべきでしょう。
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熊本に近い伊予灘から日向灘にかけて地震予測を出していたのだから、「惜しかった」「かすっていた」と擁護される方もおられるかも知れません。
ですが、地震解析ラボは、伊予灘から日向灘にかけては定期的に地震予測を出しており、熊本地震直前のこの時にだけ予測を出していた訳ではない点に、留意が必要です。
熊本地震発生前の1年間で、地震解析ラボは8回、伊予灘から日向灘に地震予測を出しています。それぞれが1週間の予測期間ですので、単純計算で6.5週間のうち1週間の頻度で、この領域に予測を出し続けていた計算になります。
そして、そもそもこの予測領域は熊本県を全く含んでもいないので、熊本地震当日に地震解析ラボが当該領域に予測を出していた事は、評価に値しないと思います。
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以上のとおり、「地震解析ラボは熊本地震を予測できなかった」と結論して良さそうです。ただ、ほぼ日本中に地震予測を出しながら九州だけが完全にノーマークだった、MEGA地震予測に比べれば、近隣の伊予灘~日向灘に予測を出していただけ、評価のガタ落ちを運よく避けられた感があります。
だからと言って「熊本地震を予測できた」などと誇張した宣伝をせず、真摯な自己検証にもとづいた、誠実な研究と事業運営を、地震解析ラボには望みたいと思います。
熊本地震の場合、御本人の基準に照らし合わせても規模が誤差範囲外なので、それを知らしめ、自己検証基準外にも関わらず予知成功のように装っている事を指摘すべきです。
予知できていなかった証拠の一つとして、「陸域M5.0」としていた事を挙げればいいでしょう。
規模を予測できていたのなら、「陸域M6.0」としていたはずです。
数ある同一地域の予知情報と同じ「M5.0」としていた理由を信奉者に考えさせることで、地震解析ラボの地震予知情報に価値がないことを気付かせれば、少しずつ人心は離れていくと思います。
少なくとも、違う基準で「外れた」と主張しても、意味がないことかなと思います。
出展者プレゼンテーション
https://www.kikikanri.biz/conference/detail/pr-12.html
http://www.eqpsj.jp/symposium.html
「地震予知研究の手引き」で応募してみましょうか。
もちろん、冗談ですが・・・