日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

朝に死に、夕に生るゝならひ、たゞ水の泡にぞ似たりける

2020年02月19日 07時14分13秒 | 政治
 「日産自動車が、会社資金の私的流用など数々の不正を認定したカルロス・ゴーン前会長に対し、100億円の損害賠償を求めて提訴に踏み切った。民事上の責任追及を本格化する構えだが、前会長は昨年末にレバノンに逃亡しており、実際に賠償の支払いを受けられるかどうかは不透明だ」(2020/02/13朝日新聞)
 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。世中にある人と栖と、又かくのごとし」(方丈記)だ。かつて生きるの死ぬのと日本中を不安に陥れた日産自動車が希代の青年経営者カルロス・ゴーン氏を招へいしてV字回復とやらを遂げたとして世界に評判になったのもまたそう遠い話ではない。
 こうして世界一の出荷台数を成し遂げた巨大企業グループがいまや一転して赤字すれすれの決算状態におちいっているという。この間、V字回復の立役者カルロス・ゴーン氏は総額数十億円の隠し金を着服したとして司直の手にわたされ、そこから世紀の「大脱走」を遂げてはるか地球の裏側から自己の正当性を語ってやまない。
 そのゴーン氏の「悪事?」を官憲に通じた後継者は、それ故に、ゴーン氏の懐刀ですらあって、自らも会社から決して合法的ならざる利益を簒奪していたと聞けば、何をかいわんやである。この間、V字回復の栄光の裏で2万人もの労働者が解雇され冷や飯を食わされたという裏面史はいささかも語られることはなかった。
 この八転び七起きの歴史の果てに天下の名門日産自動車は、いまやそのプレゼンスにおいて、斜陽の日本国内においてすらトヨタ、ホンダ、スズキ、スバルの後塵を拝するランクにあるという。この間、アベノミクスという国を挙げての為替操作による政治・経済的支援を受けつつ、また輸出市場で追い風を受けつつ、よって新自由主義主義の恩恵に浴した経営者たちが、得た利益のすべてを自らの力量で勝ち得たものと勘違いしながら強欲資本主義を謳歌した結末がこれである。
 「たましきの都のうちに、棟を並べ、甍を争へる、高き卑しき人のすまひは、世々を経て尽きせぬ物なれど、是をまことかと尋ぬれば、昔しありし家はまれなり。或は去年焼けて今年作れり。或は大家滅びて小家となる。住む人も是に同じ。所もかはらず、人も多かれど、古見し人は二三十人が中に、わづかに一人二人なり。朝(あした)に死に、夕(ゆうべ)に生るゝならひ、たゞ水の泡にぞ似たりける」
 無常を書き続けた「方丈記」作者の言は今の世もかくのごとく鮮明に照らしているのである。
 


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