出会えて良かった
附録の王者「軍艦三笠の大模型」
その3
》》その2はこちら
》》その1はこちら
ボクは無謀にも復刻の企画書を講談社社長室へ提出し、さらに計画の地盤を固めるため、巧みな復刻技術を有する印刷所の選定や、的確な助言・指導が得られる辣腕のペーパーモデラーさがしなどに奔走した。
もちろん、復刻企画は社長室の認可だけで為せるものではない。著作権を有する模型製作者の子孫への挨拶と契約、保存資料にかかわる講談社内各部署への申請許諾など、6ヵ月間にわたってさまざまな関門を経て、ボクはようやく秘庫の奥から引き出された「軍艦三笠の大模型」と対面したのであった。
この紙黒の中にパーツが納められている
保存用の包み紙に手をかけると、一気に緊張が目を覚ます。掌に汗がにじみ、指先がかすかにふるえる。処女の衣をはぐように、そっと包みを左右に開くと、なかから“御神体”のごときオーラを放つ部品シートが、静かに顔をのぞかせた。
二つ折りにされたB4大の厚紙6枚とA4大・B5大の厚紙が各1枚……
そこにはボートや大砲、煙突などの部品が一面に描かれ、各部品の周囲には、抜き型が刻まれている。
ところどころに茶色いシミや破れが見受けられるものの、保存状態はすこぶる良好だ。しかも、すべての部品がそろっているではないか。あの瞬間の興奮を、私は生涯忘れないだろう。
パーツを見ているだけで、心は大海原へ
一見、なんの変哲もない組み立て式の附録ながら、これこそ昭和の少年たちの度肝を抜き、その後も長きにわたって模型ファンの心をときめかせつづけた巨大紙模型なのである。
主砲や舷側砲、艦橋や甲板出入り口、長官専用スタンウォーク(艦尾回廊)など、複雑な形状がみごとに再現されているばかりか、露天艦橋に東郷平八郎司令長官が指揮した場所を記したり、黄海海戦と日本海海戦で被弾した箇所を彩色したりするという細やかさ。この模型にかけた設計者や編集者の意気込みが、随所に息づいている。
雑誌の附録は消耗品として捨てられることが多く、オークションでも入手至難となるのが普通であるが、今回は昭和7年のオリジナルをもとに、最新の技術を駆使して、新品同様に補整が行われた。その結果、およそ80年の時を超えて“附録の王者”を甦らせることができたのだ。
昭和初期に創られた模型ならではの味わい深いフォルム、そして昭和の少年たちが紙模型に抱いた熱き心を、この機会にご自身の手で感じていただければ、“秘宝ハンター”としてこれ以上の幸せはないのである。
おしまい。
写真の模型は一部に加工と塗装を施してありますので、実際の商品とは多少異なります。
「完全復刻『少年倶楽部』附録大模型 軍艦三笠」
■講談社 価格:3675円(税込)
■ISBN 978-4-06-216254-8
■箱入り・シュリンクパック
お求めはこちらから
お近くの書店でもお申し込み頂けます。
申込書はこちら
申込書をプリントアウトして、
お近くの書店でお申し込みください