月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(67)新堂雅之さん

2016-08-14 09:30:32 | アーティストリレー日記
今回は、6月の「シアターパントマイムフェス」にも出演し、マイムリンクのイベントでお馴染みの一糸堂の新堂雅之さんの日記をお届けします。

7月29日、ナラティブシアター土の子公演「茶色の朝‐明日もよろしく」に出演しました。
「明日もよろしく」は、いずみ凜さん作で女と相方の日常を描きつつ、ニホンの今を風刺したおはなし。
「茶色い朝」はフランスの作家フランクパヴロフさん作、で、日常が茶色に染まっていくというおはなし(フランスでは茶色はナチスを連想させる色)。最初に茶色以外の猫を取り除く法律を政府が課し、〈俺〉は違和感を持ちながらも法に従い、自分の飼っていた白に黒のぶちの猫を始末する。次に茶色以外の犬が処分され、その法律を叩いた新聞が廃刊にされ、茶色以外の本も図書館や本屋の棚から強制撤去され、〈俺〉はうっとおしいと思いながらも茶色を受け入れていく、そうすれば面倒に巻き込まれることもないだろうと思っていたが、前に茶色以外の猫を飼っていた者も犯罪となり、〈俺〉も逮捕されることになる。この期に及んでも〈俺〉は「政府の動きはすばやかったし、俺には仕事があるし、毎日やらなきゃならないこまごましたことも多い。他の人たちだって、ごたごたはごめんだから、おとなしくしているんじゃないか?」と警戒や抵抗しなかった弁明をする。
「茶色の朝」の描いている状況は、いまのニホンにぴったりです。
今年に入って、ピースリーディング「9条が好きと言えなくなって」や第五福竜丸記念館40周年レセプションに朗読と歌で参加、そして「茶色の朝‐明日もよろしく」。今は9月3日のたまっ子座「刻の罠」再演にむけて稽古の真っ最中。たくさんの言葉ひとつひとつに取り組んで、格闘しています。
『戦後、どうして主権は国民にありと決められ、議会制民主主義になり、天皇が象徴になり、徴兵制が廃止になり、平和憲法ができ、軍事力をまったく放棄し、財閥解体、農地改革、思想、言論、結社の自由が許されたのか?』
これは「刻の罠」で私のセリフです。
これらの作品に取り組みながら、いろいろな方のお話、現代史やルポルタージュ、戦争関係の本や映画に触れていけばいくほど、知らないことがいかに多いことか!「刻の罠」のセリフについても知らないことが多かった。
もっともっと現在、世界や日本で起きていること、起きていたことを学び、日々自分のまわりで起きていることで生じる違和感に、きちんと向き合っていかなきゃ、と実感しています。「茶色の朝」の〈俺〉にならないように。
でも稽古をおえて、ぼっーとして、小三治を聴き、好きな映画を見、本を読んだり(最近読んだ本のなかでは新潮文庫でウイリアム・サローヤンの「僕の名はアラム」がすごくおもしろかった、たくさん笑えた)吉本新喜劇を見て大笑いし、好きなポールサイモンを聴く。(この6月、74歳でニューアルバムを出した。小三治も74歳!)
このぼっーとできる至福の時間を持つことができなくなる世の中にしないために、ぼっーとばかりしていられないか!?

そして、本多愛也のこと。
1995年8月9日ちょうど今日、21年前か!愛也の故郷(愛也の生まれ育った家の目の前は海)宇和島で「ヘイヘイブラザース」の公演をやった。その時はマイムありジャグリングありブルースハープにギターありのファミリー向けのショーだった。
それからずっとたって、2014年愛也が「ゾエルナ!番外編」でブルースをやらないかと声をかけてくれた。それから、2015年6月、十条での最後のライブまで、お互い時間をやりくりして週に1回は会おうと決めて、なかなかそうはいかなかったけれど、新宿紀伊國屋書店前のカラオケ館できっちり2時間、ひたすらハープとギターでうたう。
愛也が、『シンドーちゃん、歌いたい曲があるんだよ』と言って、コクヨの文庫本サイズの水色のキャンパスノートにびっしり書いた詩を見せてくれて、それが次回稽古の課題曲。
時間が来たら酒も飲まずに、じゃあ、またね、と別れる。
愛也はライブで、うたの合間に楽しそうに曲の説明をしたり、とてもおしゃべりになって、おかしかった。
シンドーちゃんから雅やんと呼び方が変わって。
名前を呼び捨てにできる男友達もいなくなってしまった。
至福の時間だった。

本多愛也の追悼公演が10月20日三鷹の武蔵野芸能劇場であります。
小島屋さんたちが準備をすすめてくれています。
みなさん、ぜひぜひ観に来てください!

2016年8月9日 一糸堂 新堂雅之

○一糸堂公演情報
◎太鼓と芝居のたまっ子座「刻の罠」
日時:9月1日(木)14:00(開始予定)
会場:西多摩郡瑞穂町「スカイホール」小ホール
内容:時は現代。小5の千杜と中2の七海のひい爺ちゃんの「消えた過去」を探る物語です。
戦後70年を過ぎても今尚争いや戦争は止まず、核や放射能への不安、飢餓や貧困は広がり、私たちの平和憲法さえ揺るがす声が聞こえています。
「なぜ?」「何ができる?」を問いながら、刻(とき)に仕掛けられた罠の秘密を、私たちと一緒に探してください。未来は消させない…。
◎太鼓と芝居のたまっ子座「刻の罠」
日時:9月3日(土) 会場:長野中部子ども劇場
◎ナラティブシアター土の子「茶色の朝‐明日もよろしく」
日時:11月5日(土) 会場:葛飾子ども劇場、来年再演予定
◎「第5福竜丸一座」日本新劇協会フェスティバル
日時:10月11日(火) 会場:ブレヒトの芝居小屋
◎「モコとシドロモドロフのおもしろおはなしマイム」
日時:9月18日(日)、10月9日(日) 会場:黒姫童話館
※詳細は一糸堂メールisshido03@yahoo.co.joにてお問合わせ下さい。





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