月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(3)鈴木秀城さん

2011-04-06 01:20:00 | アーティストリレー日記
 今号では、震災から2週間後という大変な時期に公演を上演した鈴木秀城さんの日記をお届けします。

 東日本大地震で被災された方々にお見舞い申しあげます。
 アーティストリレー日記も、やはりこの話題で書かせていただきます。読者の皆さん、ご無事でしたか。地震発生時、私は都内の自宅にいて無事でした。こわかった。もうダメかと思いました。
 3/26(土)・27(日)に公演を予定していました。“ぜんぷくトリヲ”の『いのちのオンパレード』。喫茶店を会場に、3人のパントマイムショーです。この日記も、公演の宣伝で結ぶつもりでした。そこへ、あの地震です。参りました。
 公演は「延期」を視野に一旦保留。出演者のひとりは水戸市在住。被害が大きく、交通の復旧も微妙との事。メルマガ配信も先送りされてしまいました。
 私周辺の上演を見合わせた公演も、理由はいろいろでした。危険予知、交通事情、計画停電…。「余震がつづく中、劇場に人を詰め込む行為自体ナンセンス」とも。そして、なんとなく「自粛ムード」も漂ってきました。
 災害などの非常時、パントマイムに限らず演劇等「余暇」「遊び」に属するものに「暫し待て」がかかることは納得できます。優先順位の、ずっと後に追いやられ、送り手はタイミングとやり方に配慮しなければならない局面に立たされるのです。
 3.11地震当日夜、こんな事もありました。震災被害を伝える民放ラジオで男性アナウンサーが「こういう時だからこそ」と言ってビートルズをかけたのです。受け手としてもまた、タイミングに敏感になっていた私は、強い違和感をおぼえました。「優先順位からいって、今はビートルズより安否情報だろ!」と。
 後日、「あの夜、ビートルズのおかげで緊張が和らぎました。音楽の力に感謝です!」という感想が寄せられている事を知りました。感じ方はいろいろです。
 送り手と受け手の間の、ある種の緊張状態を背景に「自粛ムード」は醸成されていきました。
 そして、我々の公演は……結局、予定どおり上演しました。少なくとも東京都市部では、しだいに余震が落ち着いていき、水戸からの交通も復旧。お店のオーナーさんの応援もいただき、やる方向に舵を切ったのです。地震の前と後で変更した点といえば、「万が一、大きな地震がきたら避難します」と開演前にアナウンスを入れたことだけで、本番は決行されました。
 いざやってみると…会場はほぼ満席。ほとんどが知り合い。上演中、反応はまちまち。作品の評価はそれぞれ。途中、地震がなかったのは幸運でしたが…はっきり言っていつもとあまり変わりません。つまり無事にできたのです。そして、会場に集まった仲間同士、お互いの無事を喜びあっているのを見て「ミニコミなりの役割は果たすことができたのかな…」と思いました。このさい公演は口実で、集う人の輪、というか、そんな場が作れてよかったな、と。ご来場いただいた皆さん、ありがとうございました。
 あの地震から公演終了までの2週間余、「決めた日時にお客さんに集まってもらうことの有り難さ」をあらためて感じ、「この非常時に、こんなつまらないものをっ!」と言われないようにしなきゃ…と気が引き締まりました。震災後、世の中が舞台に注ぐ眼が「ちょい辛」なのを感じます。人前でやる以上、つまらないものは「自粛」ってことですかね。
 3月末現在、災害復興は依然難航。福島原発も予断を許さぬ状況が続いています。地デジも、相撲も、小向美奈子も、みんな地震で吹き飛んだそのあとに、あたたかな春が来ています。お花見どこに行こうかな。

 さあ、日常をとり戻さなければ。誰か私に仕事をください。パントマイムを観にきてください。あなたが来なければ、はじまらないのです。
 ●『TOKYOマイムカレッジ・ライパ♪6』5月22日(日) 17時開演 500円パフスペース(東西線早稲田駅下車 馬場下町交差点 早大文学部並び フェニックスビル3F※1FはDoCoMoショップ)
 気が向いたら、どうぞおこしを。私は阿部邦子さんとふたり、アンサンブルで出演します。終演後には交流会もありますので、ぜひ参加して、お声をかけてください。

鈴木秀城でした。
コメント
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