月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(145)Omiさん

2023-07-29 07:14:24 | アーティストリレー日記

今月は、TOKYOマイムカレッジに所属し、宮崎に移住しているOmiさんの日記をお届けします。3度目のリレー日記ご登場です。

2021年12月4日。午前11時頃だと思う。

目が覚めたとき、峠の道路に横たわっていた。傍らには男性が見守っていて、近くにはフロントが破損したバイク。事故った?おれが?
でも記憶がない。下りの峠を走っていて、スピードには気をつけてなきゃと思っていたところまでは覚えている。そして今、倒れている。

しばらくして救急車が来て運ばれた。その後ドクターヘリに移り、大学病院まで。痛みはない。外傷も無さそう。プロペラの大きな音の中で考えていたのは、明日の息子の幼稚園の発表会のこと。
「行きたいな。これが夢だといいな」
そんな事をずっと考えていた。ヘリコプターから降ろされると、すぐにPCR検査。コロナ陰性であることがはっきりしないと病院に入れないらしい。結果が出るまで外で待機。緊急搬送されて何じゃそりゃ?と今なら思うものの、その時は、なんとなく冷静に受け入れてた。

そして陰性が分かり、やっと病院に運ばれて精密検査。診断は以下の通り。
・脳震盪
・右第5中足骨基部骨折 (下駄骨折)
・右踵腓靭帯付着部裂離骨折 
・右第3肋骨骨折
脳震盪による記憶喪失のため、事故の原因は未だ不明。たぶん曲がりきれず、ガードレールにぶつかったのだろう。そのまま転落していたら命はなかった。脳に異常は見られなかったため、翌日退院。当然発表会には行けず。

その後2ヶ月間自宅療養。ギブス生活のためほとんど外出はせず。療養中は毎日映画観たり、ギターを弾く日々。その間に考えたのは死ということ。今回思ったのは、死ぬというのはスマホのバッテリーを外すようなものだということ。画面が突然真っ黒になり、反応しない。ただそれだけ。近い将来人間からもデーターが取り出される様になるかもしれないけど、今のところそれはない。死が恐いんだとするなら、それは自分の全てが消滅してしまうことの恐れかもしれないな。なんて考える。

タナトフォビア症というのがある。自分の存在が死によって消えてしまうことを考えると、不安でパニックになってしまう症状らしい。その気持ち理解できる。でも同時にいつか来るものを恐れていてもしょうがないという感覚もある。
ハムレットのセリフ。
「今来なければ後で来るだけ。
後で来なければ今来るだけ。
肝心なのは覚悟だ」
まさにこれ。

さて、2ヶ月の安静とリハビリの後、無事に社会復帰。それから2年。平衡感覚に若干不安は有るものの、特に問題はない。パフォーマンス活動はやっていないものの、子どもと遊ぶ時、マイムで買い物ごっことかをやっている。子供の想像力は無限、教えなくてもパントマイムをしている。無対象を表現しているときにふと
「無対象ですべてを表現できるなら、そこに存在し続ける必要なんてある?」
なんて思った。

Omi


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