探索・採集・飼育みたいな雑記的記録

北海道の自然探索と生物の飼育観察・採集記みたいなものを漫然と、かつ自己中心的に紹介するとかしないとか。

渡島半島のセッケイカワゲラ

2018年04月30日 | 自然探索記~採集記(道南)

先日、ある目的のため来道された大八木さんに無理を言って、通過予定の渡島半島のセッケイカワゲラを採集してほしいと依頼した。
目的は、3種とされる北海道産のセッケイカワゲラ(無翅)を全て確認すること。
時期はかなり遅く、標高のある峠でもほとんど雪が残っていない状況であったにもかかわらず、見事に採集して頂いた大八木さんには感謝いたします。

以下がその結果。
産地は渡島半島を徐々に北上している。

<上ノ国町>

左:♂8~10mm 右:♀11~12mm
雌雄ともに大型で、札幌で確認した個体よりも大型であった。


雄の肛上板基部の柄はとても長いのが特徴。
腹面の刺状板には腕状節片があった。
特徴からこの個体は、エゾユキクロカワゲラ Eocapnia yezoensis と思われる。
北海道に分布する3種のセッケイカワゲラ(無翅)で、唯一記載されて和名のあるのが本種。
セッケイカワゲラ類の研究は進んでいないので、そもそも北海道には3種しかいないのか、3種は本当にそれぞれ別種なのか・・・疑いを払拭できない。


<北斗市>

左:♂約6mm 右:♀7~9mm
上ノ国町産よりやや小型


雄の肛上板
基部の柄は長いが、肛上板は上ノ国町産と比較して細い。
Eocapnia yezoensis の変異と思ったが、腹面の刺状板には腕状節片を確認できなかったので、札幌で確認した未記載種と同じと考えるが自信はない。
このように曖昧な個体がいるから、本当に3種に分けていいの?って疑ってしまう。
貴兄はどう思われるだろうか。

ちなみにこの産地では、もう一種の未記載種(以下の八雲町と同じ)が混生していた。


<八雲町>

左:♂5~7mm 右:♀7.5~9mm
北斗市産とサイズ範囲は似ているが、小型が多かった。


肛上板基部には柄が無い。明らかにEocapnia yezoensis とは異なる。
腹面の刺状板には腕状節片を確認できなかった。
これはもうひとつの未記載種だろう。

これで3種とされる北海道産のセッケイカワゲラ(無翅)を全て確認できたので、目的を達成することができた。
時間のある時に「生き物研究室」の方で、まとめて公開しようかと思ったり。