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続ストーカー10

2023-01-16 09:36:34 | 日記
「仕事でミスをしたんです。」

「…うん。」

カフェで、いつも優しい坂元先輩と向き合っていた。

「田岡主任は、いつも厳しくて…」

「うん。」

「それでも山口女史…あ、女史と呼んでるんですが…。私を信頼してくれていたのに…」

「そんな事もあるよ。いちいち気にしてたら身が持たないよ。時には聞き流さないと」

坂元先輩は、そっとカップに手を添えていた七美の手に触れた。

「あ…はい。……そうですね」

七美は、戸惑った。

坂元は優しい…。

優しさに甘えていると、誤解をさせてしまう。

「ありがとうございます。先輩からのアドバイスをちゃんと心に刻んで頑張ります!」

添えられた坂元の手からそっと自分の手を引っ込めた。

一瞬、坂元は寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。


続ストーカー9

2023-01-13 10:47:11 | 日記
ある時七美は、会社で大きなミスを起こした。

気難しい上司の田岡は、眉間にシワを寄せて七美を見る。

山口女史も、言葉は柔らかいが、嫌味を言ってきた。

「大丈夫だよ。あまり気にしないで。」

遥加だけが優しく言葉を掛けてきた。

そんな時に携帯が鳴った。息子の学校からだ。

「たけるくん、熱があるようなんです。」

今は、早退をしにくい。

「後少し、預かってもらえませんか?」

「それはちょっと…、早めに病院に行かれた方が…」

「そうですよね…💦」


電話を切ると溜め息をついた。

…さぁ、悩んでいても仕方がない。
仕事の代わりはあっても、たけるには私しかいないんだ。

「あの…、今日、早退させていただけませんか?」

苦手な上司に目を伏せがちに、申し訳なさそうに申し出た。

「え?このタイミングで?」

…そう言われると思った…。

だけと、子供の事を理由として言いたくない…。

「彼女の件は、私が引き継ぎますから」

山口女史が上司に申し出てくれた。

…助かった…。


続ストーカー8

2023-01-10 10:10:29 | 日記
新しい部署へ配属となった。

おそらく今後変わることは無い配属先だろう…。

坂元先輩は時々顔を見せる。

やっと落ち着けそうだ。

部署には、同期の遥加が一緒だ。

また、お局様というほどではないが、40代(独身)の気難しそうな先輩、山口もいる。

そして、更に気難しそうな上司、田岡は細かくて苦手なタイプだ。

「あなたたち、いつまでも新人の気分でいたらダメだからね!」

山口女史からの熱い励ましの言葉に、身が引き締まる。


続ストーカー7

2023-01-08 09:00:53 | 日記
試練の日が過ぎ、営業の仕事から解放される日がやって来た。

「苦手な営業から解放されて良かったね。」

坂元先輩が肩をポンポンとたたいた。

「いろいろと、教えてくださりありがとうございました。」

「それじゃ、今日はお別れ会をしようか?」

「あ、はい…」

お別れ会と聞いて寂しい気持ちになった。


二人は、仕事終わりに駅に向かう道すがら、居酒屋へ立ちよった。

「お疲れさま~!」

乾杯をすると、七美は解放感からか、ジョッキのビールを一気に飲み干した。

「すごいね~!」

坂元先輩は、七美の飲みっぷりに、思わず笑った。

「本当にお世話になりました。」

「そんな挨拶いらないよ。同じ会社なんだし、七美ちゃんが内勤になっても、会えるんだし、また飲もう!」

「はい!」

七美ちゃん…と親しみを込めて呼ばれて、少し恥ずかしかった。


続ストーカー6

2023-01-05 09:46:52 | 日記
結局、同僚の遥加は食事をしただけで、進展も無いまま数日が過ぎた。

「今日は、まっすぐ帰るの?」

「あ、はい。」

「たまには、ご飯食べて帰らない?」

仕事で同行している坂元先輩が、七美を誘った。

最近では、同行も少なくなっているので、久しぶりだ。


静かなレストランに入った。

「慣れた?」

「はい。おかげさまで。」

「君は、本当は営業希望では無いんだって?」

「はい。私、営業は向いてないと思うんです。」

「…そうか…。だけど、頑張っていると思うよ」

「…そうですか?」

「得意先のS社のMさんが、君をほめていたよ。」

「そうなんですか…うれしいです」

自信のないことをほめてもらえると、力が湧いてくる。
 
「多分、ある程度営業を経験したら、次は内勤になると思うから、もう少し頑張って!」

早く内勤に就きたい…と、思ったが、このまま営業の坂元先輩と食事をすることも無くなるのかも…と、思うと、寂しさを感じた。