風通庵-直言

ヨモヤマ話

たまには社保庁の立場も考えて、ね。

2008-09-20 20:44:54 | Weblog
 昭和の30年前後の時代。まだ厚生年金も健康保険もさほどの理解のない時代に、地方県庁の保険課に勤務したH君とW君、いまだ労働省のない時代で、H君は厚生大臣の委嘱で社会保険の担当、W君は労働に関する主務大臣の委嘱で職業安定所に勤務した。W君の場合はさておいて、親しかったH君からは仕事の話をよく聞いた。H君の主たる仕事は健保と厚年の保険料の未納者の事業所への直接訪問しての徴収、いわば集金である。従業員からは給料の支払いの際さい従業員の負担分の保険料を控除しながら、納期に保険料を納めない。当然ながら事業主負担分も含めて納付するべきものを、だ。
 
 H君「未納の保険料の集金です」
 事業主「まあ、そのうちに、と思うていました」
 H君「給料日に従業員から差し引いている筈です」
 事業主「そう固いこと言わずに、魚心と水心で行きましょう」と、販売商品のポマードを差し出す。
 H君「そんなものはいりません。保険料を頂きます」

 こんな仕事で何年か過ごした、と聞いていた。当時としては、社会保険なんかに国民一般の認識がなく、保険料とても只とられるも同様な考えであった。従って、従業員も年金証書など事業所を変わるたびに新規に作って、いつどこの会社で何年勤めたか、記憶も定かでない。そんな時代があった。

 ところが、月日がたって平成の10年代ともなると、だ、ご存知の通り。多くは言わない。民主党の政局化のあふりを受けて社保庁性悪説が蔓延。各種疑念が生じたが、この疑念、もとより社保庁のいい加減な処理に起因することのそしりは免れないものの、所定の年数を一事業所で勤務した者に疑念の生ずる余地はない。ほとんどは、あぶく企業か、前出の「固いこと言わないで」の泡沫事業所を梯子同然に勤めた人種。時代が時代であったから、すべてが本人の責任とはいえないが、しかし思い出して見るといい。あまり大きなことは言えまい。それが時代の波に乗って、民主党の政局化のあふりで、さも社保庁の責任におういかぶせていい気な者、とはいい時代。
 これを事業主に転ずると、つい最近の話、58万幾らかの保険料が、社会保険事務所からの要請で、8万幾らにに減額されたと、イケ図々しくも、鬼の首でも取ったかのように、社会保険事務所の杜撰な仕事に輪をかけるつもりで、自らの体験を語っていた嘗ての事業主。またそれを言わせる政党。
 
 これ最初に問題とするべきは、事業主ですよ。事業主が保険料を納めないから、社会保険事務所が温情身を発揮して、保険料を下げたんだ。違うか。事業主は従業員から保険料を控除しながら納付しない。従って、納付できる金額に減額してくれたのではないか。それに準じて事業主は、従業員から控除した保険料を減額された分だけ従業員に戻すべきではないか。この事業主のやり方は「公然・横領」である。社会保険事務所を非難するどころか、保険料の納付義務を果たさないで、人並みに社保庁を非難するとは何事か。その原因を作った張本人は自分ではないか。社保庁はそれをフォロウアップしただけではないか。いわば恩人である。それを擁護してくれた社会保険事務所をともに批難するとは何と罰当たりな。そわ何事か。と言いたいんだが、時代が変わると、こうも変わるものか。
 
 可哀そうなのは社保庁である。

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