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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

鹿ロース肉のロースト フォワグラソース

2006年11月06日 | メインディッシュ

本日は、食べ応えの有るメインデッシュの一皿をご紹介します。

鹿ロース肉のロースト フォワグラソースです。

今回の鹿は、ニュージーランド産のロース肉の部位を使っていますが、グリンツィングでは毎年、北海道の蝦夷鹿や丹波産の物なども使っています。

今の時期はジビエの季節の始まりと言うことも有って、まずは飼育の鹿から味わっていただこうと思いました。

本当のジビエではありませんが、飼育された物ならではの食べやすさが有り、お客様には喜んでいただいています。

味わい的には、赤身の濃い牛肉に近いですが、より脂が少なく血の香りがします。

今回はわかりやすくシンプルに、たっぷりのバターでローストして、香り高く濃厚なフォワグラのソースをかけてみました。

ソースの作り方は、赤ポルト酒と赤ワインを煮詰めたところに、鹿の骨やスジ、香味野菜から取ったダシを加えてさらに煮詰めます。そして仕上げにフォワグラとバターを裏ごして合わせた物を加えて溶かし込み、生クリーム、塩、こしょう、コニャックで味を調えて完成です。

しっかりとした味の濃いソースですので、食べ応えも有りますし、赤ワインとの相性もバッチリです。

付け合せもオーソドックスに、ソテーした野菜と旬の茸を添えています。甘く香ばしい野菜と鹿肉を交互に食べていただくと、より美味しく最後まで楽しめると思います。

ジビエ料理では特に、古典的な調理法やソースの大切さや素晴らしさを感じます。

それと同時に、今と言う時代に生きる限りは、常に変化する嗜好や流行を感じながら料理も作らなければいけないと思っています。現に沢山の料理人がフランス、日本に限らず今を表現して、素晴らしい料理を生み出しています。

自分としても、勿論今の料理に満足はしていませんが。しかし、今出来る事として、古典的な料理や基本的な物事の先に、求めている美味しさや悦びが有るのではないかと信じています。

 

 

 

 

 

 


鮟鱇のブイヤベース仕立て

2006年11月02日 | メインディッシュ

本日は、これからの時期に食べたくなる、鍋仕立ての一皿をご紹介します。

鮟鱇のブイヤベース仕立てです。

ブイヤベースは、フランスのプロバンス地方の名物料理で、豊富な海の幸とトマト、オリーブオイル、ニンニク、野菜、香草などを豪快に煮込んだ漁師料理です。

正式には、まずスープを飲んでから煮込んだ魚介を食べるのですが、グリンツィングでは、鍋仕立てにして一緒に味わっていただきます。

今回は、鍋と言えば日本では鮟鱇が美味しいので、鮟鱇を使ってブイヤベースを作ってみました。

お店で鮟鱇を捌くのですが、独特な形で皮の表面もヌメヌメしているので、いつも下ろしている魚とは別の物です。

捌いてみると身の部分は本当に少なく、ほとんどが頭の部分になります。しかし、鮟鱇の七つ道具と言われる様に、色々な部位を食べる事が出来るのでとても調理し甲斐があり、料理人としても楽しい食材です。

今回も骨でダシを取り、身はポワレしてから、皮、肝、頬肉、胃袋、腸などは湯がいてからブイヤベースに加えています。とても濃いダシが取れ、具も色々な味や食感があって食べていて飽きさせません。

実際の味の方は、グロテスクな見た目とは違い、とても上品な美味しさです。

付け合わせには、茹でたジャガ芋を添えて、仕上げにルイユ(ニンニク風味のマヨネーズ)をかけ、ウイキョウの葉を飾っています。

通常は深皿に盛ってお出ししていますが、今回は特別にグラタン皿に盛り付けて、より鍋らしく仕立てて見ました。

皿の中に鮟鱇のすべてが詰まっている料理です。

身や骨、内臓など、一度バラバラになった部位が形を変えて皿の中に戻ってくる。とてもフランス料理らしい一皿になりました。

 

 

 

 

 

 

 


シャラン産鴨のコンフィ カスレ仕立て

2006年10月31日 | メインディッシュ

本日は、寒い時期に食べたい熱々の一皿をご紹介します。

シャラン産鴨のコンフィ カスレ仕立てです。

グリンツィングの定番 鴨のコンフィですが、秋から冬の寒い時期には、熱々のカスレにしてお出ししています。

カスレとはフランスの南部 ラングドック地方の郷土料理ですが、カステルノダリ、カルカッソンヌ、トゥールーズの3つのスタイルが有ります。それぞれに入る食材が違うのですが、基本的には白いんげん豆と豚肉または仔羊肉、そしてソーセージ、鴨のコンフィなどを使った煮込み料理です。

とてもボリュームがあり、素朴な地方料理です。 

グリンツィングでは、フランス シャラン産の香りの良い鴨腿肉をコンフィにしてから、玉葱、トマト、豚足や仔羊肩肉と共に、鶏のブイヨンを加えてじっくりと煮込んだ白いんげん豆と組み合わせています。

カスレと言うには、少しこじんまりとしていますが、郷土料理の気取らない美味しさは感じていただけると思います。

綺麗なお皿の上に綺麗に盛り付けられた料理も、それはそれで良いと思いますが、見た目には地味ですが、お肉やソース、付け合わせの野菜が一体となり、鍋や陶器の中でグツグツと美味しそうな料理も、特別な良さが有ります。

美味しそうに見える料理には、本当に人を幸せな気持ちにする力が有ると思います。

寒い日に、少しでも温かくて美味しい料理を食べて喜んでいただきたい。そんな気持ちで作っている一皿です。

 


仔鳩のココット焼き ジロール茸添え

2006年10月24日 | メインディッシュ

本日は、撮影の為に作りましたメインデッシュをご紹介します。

仔鳩のココット焼き ジロール茸添えです。

毎年、秋になりますと仔鳩、鴨、鶉、ジビエなどの個性的な食材を調理する機会が多くなってきます。

仔鳩も大好きな食材ですので、季節限定の特別料理としてよく使います。

鳩と言いますと、日本では食材としてあまり一般的ではありませんが、フランスでは高級食材として大変人気が有ります。

今回はココット鍋を使い、しっとりと軟らかく蒸し焼きにしてみました。

見ていただけると分かりますが、一羽を丸ごと頭付きでお出ししています。頭を食べる事に抵抗が有る方も多いと思いますが、付いている脳みそがとても美味しいので、是非とも味わっていただきたいです。

いつもは焼き上がりましたら、一度お客様に見ていただいてからお皿に盛り付けています。

その時は、香ばしく焼かれた仔鳩と焦がしバター、ニンニク、タイム、そして蓋をする前に加えるコニャックの香りが客席に広がり、大変喜んで頂けます。

ソースは、仔鳩のガラとニンニク、ジロール茸を炒めて、コニャック、白ワイン、フォンドヴォーで煮出した後漉してから、少し煮詰めてバターを加えて仕上げています。

付け合わせには、フランス産のジロール茸をソテーした物と、別皿で内臓のカナッペを添えてみました。

とてもシンプルな組み合わせと調理法ですが、軟らかくて、穏やかな血の香りのする仔鳩の美味しさを、ストレートに味わうことが出来ると思います。

秋の香りのする一皿を、美味しいワインと共に楽しむ。一人でも多くの方に味わっていただきたい幸せです。

 

 

 

 

 

 


仔羊背肉の香草パン粉焼き

2006年10月21日 | メインディッシュ

本日は、大好きな仔羊を使った一皿をご紹介します。

仔羊背肉の香草パン粉焼きです。

仔羊料理の定番ですが、パセリとニンニクの香り、マスタードの酸味、パン粉のカリッとした食感が本当に仔羊に良く合い、とても美味しい一皿です。

ソースは、シンプルな仔羊の肉汁に良質のオリーブオイルを加えた物で、付け合わせには、大振りにカットした野菜のソテーを添えています。

お肉の仔羊とソースの肉汁、付け合わせの季節野菜と、とても分かりやすい組み合わせになっています。

メニューを考える際、ついつい自分の都合で、変わった組み合わせの料理や、奇をてらった調理法の皿に行ってしまう時があります。

しかし、最近になって思うのは、この一皿は誰のために作っているのだろうか?と言う事です。単純な答えですが、お店を信用して来て下さるお客様の為なのです。

自分の自己満足のためでなく、お客様の「美味しかった」の一言が、一番大切ではないのでしょうか。

料理以外の分野でも、奇抜な物や新しいスタイルに注目が集まりますが、オリジナルをアレンジしただけの物は、結局はオリジナルを超えることは出来ないと思います。

昔から受け継がれている伝統料理や地方料理、決して古ければ良いと言うことでは有りませんが、本当の美味しさは、急に現れる物ではない気がします。

今回は初心に帰る意味も込めて、仔羊料理の基本的なこの一皿を、メニューに入れてみました。