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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

フォワグラのポワレとホワイトアスパラガスの温かいサラダ

2007年04月06日 | 前菜

本日は、旬の食材を使った前菜の一皿をご紹介します。

フォワグラのポワレとホワイトアスパラガスの温かいサラダです。

春と言えば、ホワイトアスパラガスの季節です。

グリーンアスパラガスに比べて流通する時期が限られていますので、この時期だけの楽しみです。

今は外国産の物を探せば、1年中手にする事が出来るかも知れませんが、春のこの時期に食べてこそ本当に美味しいのだと思います。

グリンツィングでは主に、北海道産のホワイトアスパラガスを使っています。

他にもフランス等の産地の物もいくつか有りますが、鮮度や品質、味わい、価格等を考えますと、北海道産の物がバランスが良くて気に入っています。

味わいは穏やかで癖もなく、とても食べやすい印象ですが、太いのでホワイトアスパラガスらしい食べ応えは十分に有ります。

下処理としては茹でて置いて、注文が入りましたら香ばしくグリルにしています。

今回は鴨のフォワグラのポワレ(フライパン焼き)と組み合わせて、サッパリと食べる事の出来るサラダ仕立てにしてみました。

通常ですとポワレしたフォワグラには、甘くて濃厚なソースをかけることが多いのですが、この一皿ではフォワグラとホワイトアスパラガスをそれぞれ対等に味わう事が出来たらと思いましたので、フォワグラだけ引き立つ濃厚なソースでは無く、全体をまとめるための軽いドレッシングにしています。

そのドレッシングは、バルサミコ酢を軽く煮詰めた所に、オリーブオイルとクルミオイルを加えた甘酸っぱい味わいです。

そして仕上げには、沢山の種類のハーブと葉野菜をクルミオイルのドレッシングで味付けしたサラダをたっぷりと乗せて完成です。

画像ではサラダに隠れてフォワグラが見えていませんが、瑞々しく香り高い緑を掻き分けると、そこには香ばしく焼かれた熱々のフォワグラが出てくる仕掛けです。

たまにはこの様に、軽い味わいのフォワグラ料理も面白いのではないでしょうか。

今回のホワイトアスパラガスのように、貴重で良質の旬の食材を使えることは、とても幸せな事だと思います。

秋のキノコ、冬のジビエ、春のホワイトアスパラガス、夏のメロン 他にも沢山の美味しい食材があります。

その季節に食材を通して色々な事を考え、そしてまた次の季節に移る

これからも、沢山の素晴らしい出会いがあると思います。

 

 

 

 

 

 


海の幸と春野菜のムース 温泉卵 コンソメゼリーと共に

2007年03月29日 | 前菜

本日は、サッパリとした前菜の一皿をご紹介します。

海の幸と春野菜のムース 温泉卵 コンソメゼリーと共に です。

春らしく優しい味わいで、喉越しのよい食感の前菜をと思い今回のメニューに考えてみました。

食べられたお客様の反応も良く、大変喜ばれています。

海の幸は定番としてウニとホタテ、スモークサーモンを使っています。

その他にもその日の仕入れによってミル貝、ホタルイカ、真鯛のマリネ等を入れています。

春野菜のムースは今ですと、人参のピューレにホイップクリームを合わせて作っています。

今後は空豆やアスパラガス、または数種類の野菜を合わせた物にしていく予定です。

野菜の甘く優しい味わいと生クリームの相性が良く、デザートとしても成り立つのではないかと思っています。

魚介に野菜のムース、そしてコンソメゼリーだけでも十分に一皿として美味しいのですが、今回は温泉卵をプラスして、よりボリューム感を出しています。

上にかけるコンソメゼリーには鶏の腿肉を使っていますので、通常の牛肉のコンソメに比べてあっさりとしていますので、魚介や野菜との相性も良いと思います。

勿論、温泉卵とは親子なので、その組み合わせに間違いはありません。

コンソメ自体は正統派のフランス料理の一品ですが、緩やかなゼリーにすると何処か醤油に近い味わいがするので不思議です。

この一皿の食べやすさも、その様な所から来ているのかも知れません。

ウニ等の新鮮な魚介を楽しめる贅沢な前菜ですので、きっと沢山の方に喜んで頂けると思います。

 

話は変わりますが、今日は改めて初心の大切さを痛感しました。

料理人にとって包丁で少しの怪我をする事自体は珍しく無いのですが、今回はあまりの自分の不注意と横着さに本当にがっかりしました。

それほど大きな怪我ではありませんでしたが、この仕事を始めてからもう13年以上経っているにもかかわらずに、包丁の使い方すらまともに出来ないのかと、怪我の大きさ以上に気持ちの方がショックでした。

人に注意されるのならまだよいのですが、今まで何をして来たのだろうと自分自身が嫌になるときは、とても辛いです。

技術的な事ではなく気持ちの弱さの問題ですので、もう一度初心に戻り同じ過ちを繰り返さないように、明日から仕事に取り組んで行きたいと思います。

料理を作る上で、慣れる事など無いのだと本当に思いました。

 

 


海の幸と春野菜のゼリー寄せ 香草風味 トマトソースと共に

2007年03月21日 | 前菜

本日は、彩りも鮮やかな春の前菜をご紹介します。

海の幸と春野菜のゼリー寄せ 香草風味 トマトソースと共にです。

軽くマリネにした帆立貝やサーモン、真鯛、車海老等の魚介と、歯ごたえを残し、香りをとじこめるように湯がいたチリメンキャベツやインゲン、京人参、ヤングコーン、椎茸、アスパラガス、ホワイトアスパラガス、黄カブ、赤ピーマン、菜の花等の野菜を、地鶏の腿肉で作ったコンソメを使いゼリー寄せにしています。

ソースは生のトマトをミキサーでピューレにした物に、赤ワインビネガー、シェリービネガー、オリーブオイル、タバスコ、塩を加えています。

付け合せは、グリーンカール、チコリ、トレビス、水菜、セルバチコ、マーシュ、アマランス、デトロイト等の葉野菜に、セルフィーユ、イタリアンパセリ、エストラゴン、シブレット、アネット、等のハーブを合わせたサラダです。

この一皿の中には今書いた様に、とても沢山の食材が使われていますので、同時に色々な味を楽しんでいただけると思います。

色鮮やかな魚介と野菜のモザイク模様と、春の自然を思わせる香草の緑を見ながら、一口ごとに違う食感や香り、味わいを感じることの出来るとても華やかな前菜になりました。

今回はお皿もガラスの物を使い、より春らしい見た目も意識してみました。

いつも、良い料理とは何かを考えています。

シンプルに考えれば、「美味しい」が答えになる様に思います。

では美味しいとは何かを考えると、単純に舌で感じる味わいだけでもなく、空いたお腹を満たす事だけでもなく、希少で高価な物と頭で考えながら満足する事だけでも無い気がします。

きっと、舌、腹、頭以外にも、良い香りを鼻で感じ、鮮やかな色を目で感じ、その温度を皮膚で感じ、その食感を歯や喉で感じながら等、結局はすべての感覚で美味しさを感じているのではないのでしょうか。

見た目だけ綺麗なら良い、味だけ良ければ、高級食材なら良い、と言う料理では、本当の美味しさをお客様に感じていただけないと思います。

とても難しい事ですし、自分自身にもいたらない部分は沢山有りますが、今は少しでも良い物を作りたい気持ちを忘れない様に、毎日を頑張りたいと思っています。

 

 

 


シャラン産鴨のパテ オレンジ風味

2007年03月07日 | 前菜

本日は、人気の前菜の一皿をご紹介します。

シャラン産鴨のパテ オレンジ風味です。

グリンツィングでは定番として、お肉のパテをメニューに載せています。

今までですと、神奈川県産の高座豚を使った田舎風の物や、フランス産ホロホロ鶏、丹波産猪、北海道産の蝦夷鹿等、色々なバリエーションがあります。

そこで今回は、寒い時期に美味しい鴨のパテにしてみました。

使った鴨は、フランスでも有名なシャラン産の鴨の腿肉です。

選んだ理由は、他の産地の鴨に比べて味が良いことも勿論ありますが、一番はその香りの良さが決め手になりました。

窒息させて処理するために血の香りが多く、良質な餌で十分に育てられている事で、脂の香りも素晴らしいです。

グリンツィングでは前菜のパテの他にも、シャラン産の鴨腿肉を使ったコンフィをメインデッシュの定番としてお出ししています。

こちらも味わい深く、香りの良い一皿になっています。

今回は鴨のパテと言う事で、鴨と相性の良い定番のフルーツを組み合わせてみました。

古典的で有名な一皿に、鴨胸肉のロースト オレンジソースがありますが、この料理は少し目線を変えて、オレンジとの組み合わせはそのままにして、冷たい前菜にしています。

個性的で肉の味と香りの強い鴨肉と、甘く爽やかな柑橘類のオレンジの相性は、本当に美味しいです。

焼き上げる時にオレンジを乗せるだけでなく、鴨肉をマリネする時にもオレンジのお酒(グランマルニエ酒)を使うことで、より馴染んだ味になりました。

その他にも、鴨肉と相性の良いスパイスを多めに加えて、更に香り高い一皿を意識しています。

フランス料理の世界では、サラダとテリーヌを食べればその料理人の力量が分かると、どこかで聞いた事があります。

自分自身でもその両方は、基本的でごまかしの効かない物だと思っていますので、その言葉に納得する部分が有ります。

たぶん、サラダ、テリーヌ共にオーソドックスな料理なだけに、色々な解釈が有りますので、経験の違いが一番出やすいのかもしれません。

基本的な事ほどきちんと、シンプルな物こそ美味しく、これからも忘れない様にしていきたいです。

 

 

 

 


高座豚と冬野菜の冷製ポトフ テリーヌ仕立て オーベルニュ風

2007年02月06日 | 前菜

本日は、しみじみと美味しい前菜の一皿をご紹介します。

高座豚と冬野菜の冷製ポトフ テリーヌ仕立て オーベルニュ風です。

ポトフと言いますと普通は熱々の鍋料理を想像しますが、今回は少し目線を変えて冷製のゼリー寄せにしてみました。

通常のポトフは、牛肉等のお肉と人参、洋ねぎ、蕪等の野菜を水と共に、柔らかくなるまでじっくりと鍋で煮込んで作ります。

最初に煮汁をスープとして飲み、別の皿に煮込んだお肉と野菜を盛り付けて、マスタードや塩、胡椒を添える食べ方がフランス流です。

いかにも家庭的で、フランスのお袋の味といった料理の一つですが、何とかレストランの料理としてお出し出来ないかと思い、この一皿を考えました。

ゼラチン質が多く味わいの濃い、神奈川県産の高座豚の骨付きスネ肉を、たっぷりの冬野菜と煮込み、その滋味深い煮汁と共にテリーヌ型に入れて冷し固めます。

メニュー名のオーベルニュ風の意味は、具の一つとしてチリメンキャベツを入れる事と、オーベルニュ地方の特産物のレンズ豆をサラダとして添えている事からきています。

ソースは、シェリー酒酢と赤ワイン酢にオリーブ油と胡桃油、トリュフ油を合わせた物をかけています。

ボリュームのある一皿ですが、そのソースの酸味のおかげで、サッパリと食べていただけます。

話は少し変わりますが、フランス修行中に、パリの有名なポトフ屋さんに行く機会がありました。

けっして高級なお店や上品な料理ではありませんでしたが、冬の寒い日に友達と一緒に馬鹿な話をしながら食べたポトフは、本当に温かくてしみじみと美味しかった思い出があります。

過去の楽しかった事の記憶は、今の自分にとってとても大切な財産だと思っています。

今日もその日の事を思い出しながら、この一皿を作っています。