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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

キングサーモンの瞬間燻製 季節野菜のマリネ添え

2007年01月28日 | 前菜

本日は、自慢の前菜の一皿をご紹介します。

キングサーモンの瞬間燻製 季節野菜のマリネ添えです。

たっぷりと脂ののったノルウェー産キングサーモンに、桜のチップとザラメ砂糖を使い自家製の燻製にしています。

通常のスモークサーモンは低温でじっくりと時間をかけて作りますが、グリンツィングでは高温でごく短時間で香りを付けています。

低温での物に比べ、サーモンの身はほとんど生ですので、マリネに近いフレッシュな味わいになります。

燻製の香りもしっかりと付きますので、ワインとの組み合わせでも色々と楽しんでいただけると思います。

付け合わせには、数日経って味の馴染んだ季節野菜のギリシャ風マリネを添えています。

脂のコクと個性的な香りのサーモンに、穏やかで滋味深い味わいの野菜のマリネは、それぞれを支え合うとても良い組み合わせだと思います。

ソースは、サワークリームにアネットとレモンの酸味を加えた定番です。

クリームのコクと酸味が、サーモンを更に引き立ててくれます。

自分としては、沢山の方に安心して食べていただける料理だと思っています。

話は少し変わりますが、最近とても大切な事に気が付きました。

きっかけは、一緒に働いているスタッフとの会話の中での、ほんの些細な一言でした。

「普段のありのままの自分を見てほしい。」

その時には、そこまで意味のある言葉だとは思いませんでした。

しかしここ最近、知人のお客様や特別な方の為に料理を作る機会が続き、その方の為に何か特別な物をと意気込むあまりに、自分自身の料理が見えなくなり、何が良いのか分からなくなる状態でした。

結果として出来た料理も、作った本人が見ても自分らしさなど何もない、恥ずかしい物でした。

今思うと、今までもいつもそうでした。

料理の取材があった時、大切な人が来てくれた時、いつも普段はしていない事をして自分を特別に見せかけたり、飾ってきた様に思います。

そして、いつも結果は苦い物でした。

その時の料理は、本当に中身の無い薄っぺらい料理だったと思います。

今回、あるお客様に料理をお出しした時も同じでした。

自分自身が本当に情けなかったです。

そんな時、先ほど書いた一言の本当の意味が分かりました。

普段の仕事や料理の大切さや、人としての姿勢を。

毎日作っている沢山の自分の料理を、自分自身がどうして信じてあげられなかったのでしょう。

長い時間をかけて考え、試行錯誤してきた普段の料理をどうして隠そうとしたのでしょう。

恥ずかしいです。

これからは今までの自分とその料理を信じて、そして毎日の普段のありのままの姿こそが特別になる様に、少しずつ努力していきたいと思っています。

余計な話が長くなりましたが、今回ご紹介しました料理は、そんな気持ちの詰まった一皿なのです。

 

 

 

 

 

 

 


フォワグラのポワレ ぺリゴール風 ポーチドエッグ添え

2007年01月23日 | 前菜

本日は、とても贅沢な前菜の一皿をご紹介します。

フォワグラのポワレ ぺリゴール風 ポーチドエッグ添えです。

フォワグラはフランス産の鴨の物を使っています。

香ばしくフライパンで焼いたフォワグラに、黒トリュフと沢山の洋酒を使って作ったリッチなソースをかけて、付け合わせにはパルメザンチーズのリゾットと作りたてのポーチドエッグを添えています。

フォワグラと相性の良いトリュフ、トリュフと相性の良い卵、卵と相性の良いパルメザンチーズとお米、すべてが相性の良い物ばかりの一皿です。

黒トリュフを使ったソースペリグーをかけている事から、ぺリゴール風としています。

本来はフランス産を使いたいのですが、値段の関係でグリンツィングではヒマラヤ産のトリュフを使っています。

香りや味わいを比べるとフランス産には及びませんが、良心的な価格でお出し出来ますし、トリュフオイルやトリュフジュース、コニャックやマデラ酒、ポルト酒等を使うことで十分に風味を補う事が出来ます。

洋酒の芳醇な香りと甘さに黒トリュフの妖艶な香りが絡まり、本当に素晴らしい味わいになります。

フランス料理ならではの陶酔するような美味しさが、ソースペリグーにはあります。

フランス料理ではワインとの組み合わせ等で、マリアージュ(結婚)と言う表現をよく使いますが、まさにフランス料理の本質がそこにあると思います。

同質な物、異質な物、組み合わせには無限の可能性があります。本当に良いマリアージュをする料理やワインは、単純に1+1ではない何倍にも素晴らしい味わいになります。

そんな時は、自分の美味しさの想像を超えた感動があります。

今までにも何回かそういう幸せな経験がありましたが、そのたびにフランス料理の奥深さや凄さを感じました。

料理には沢山の理屈や考え方がありますが、最後には美味しいか美味しくないかと言う、とても単純で感覚的な所になると思います。

経験を重ねるほどに頭に贅肉が付き、素直に感じることが難しくなってきます。

もう一度、本能として素直に感じる美味しさを、大切にしていきたいと思いました。

 

 

 


フランス産シャポンのガランティーヌ

2007年01月07日 | 前菜

本日は、冷たい前菜の一皿をご紹介します。

フランス産シャポンのガランティーヌです。

シャポンとは、去勢して肥育した若い雄鶏です。

味わいの濃い雄鶏を去勢すると、雌鶏の様に脂がのり柔らかい鶏肉になります。

主にクリスマスの時期に出回り、大きくて値段も高価な為に普段は扱う機会が少ない食材です。

フランス修行中にも、クリスマスや年越しなどの特別な日のメニューに数回載るくらいでした。

最初に見た時は、その大きさにびっくりしましたし、味見をしたら美味しくて「さすがフランス」と感激しました。

そんな素晴らしい食材を、古典的な調理法のガランティーヌにしてみました。

鶏やウサギ等の肉を開いて、フォワグラやトリュフ等の詰め物をしてからブイヨンや油で煮込み、冷やし固めた冷製の料理です。

今回はコニャックと白ポルト酒、塩、コショウで一晩マリネしたシャポンに、フォワグラのテリーヌと椎茸、里芋、豚の挽肉等を詰めて、低温の鴨の脂でじっくりと火を通しています。

完成まで3日間、使う材料も作業工程も多く、とても手間のかかる一皿です。

良質な食材ですので、薄く切ってサッとソテーしたりローストやグリルにしても美味しいのですが、これぞフランス料理と感じるものはやはりクラシックな調理法だと思います。

時代が新しくなるほど料理もシンプルになり、自分も気を抜くとついつい簡単な一皿やメニューにしてしまいがちです。

今の時代だからこそこの様な手間ひまかけて作る技術は、若い料理人にとってとても大切な気がします。

テリーヌや今回のガランティーヌなどは、手間も時間もかかり辛い事ばかりの様ですが、完成して最初の一枚目を切る時の楽しみは何回作っても変わらない大好きな料理です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


季節野菜のマリネ ギリシャ風

2007年01月04日 | 前菜

 あけまして おめでとうございます。

今年最初の記事は、とても思い入れのある一皿をご紹介します。

季節野菜のマリネ ギリシャ風です。

一般的には野菜を、オリーブオイルや白ワイン、レモン、ハーブ、スパイスと共に火を通してマリネした物を、ギリシャ風と言われています。

作り方や材料的に南仏的な料理でもありますが、使われるスパイスのコリアンダーの香りや、甘いドライフルーツのレーズンを加えるあたりが少し変わっています。

どの季節の料理と言うわけではありませんが、その時期に美味しい野菜を使い、色々な組み合わせで作っています。

この一皿と最初に出合った所は、専門学校を卒業して就職したホテルのキッチンでした。

初めて食べたときは、「野菜だけで作っているのに、どうしてこんなに美味しいんだろう」とびっくりしました。

フランス料理では野菜料理でも、鶏のブイヨンやベーコンなどを使う事が多いだけに、そのシンプルで素直な味わいに一口で大好きになりました。

その時から今までの12年間、本当に沢山作りました。

単純なだけに、タイミングや味付けなどとても難しく、失敗も沢山しました。

今でも作る時は緊張しますし、まだまだ完璧には出来ていないと思っています。

初めて作った12年前のあの頃から、少しは上手になったのでしょうか?

この料理は、いつもあの頃の素直で、フランス料理にまっすぐだった気持ちを思い出させてくれます。

これからもフランス料理を通じて、少しでも成長できる様に努力していきたいと思います。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


フォワグラのポワレ セップ茸のリゾット添え

2006年12月17日 | 前菜

本日は、ボリュームたっぷりの前菜をご紹介します。

フォワグラのポワレ セップ茸のリゾット添えです。

グリンツィングではフォワグラ料理として、冷製のテリーヌとしてお出しする事が多いのですが、カリッとフライパンで焼いたフォワグラもお客様に人気がありますので、季節によってはメニューに載せる時期がありますし、ご要望が有りましたらお出ししています。

フォワグラはフランス産の鴨の物を使っています。

鵞鳥のフォワグラに比べ脂の溶ける融点が低いため、周りはカリッと香ばしく焼けますが、中のほうはトロッととろける様になりますので、個人的には鴨の方が美味しいと思っています。

今回は付け合せに、香り高くボリュームもあるセップ茸のリゾットを添えています。

焼いたフォワグラに合わせる付け合せも色々有りますが、日本人の好みとしてお米を使いますと、とても喜ばれます。

ソースも甘い感じの物が多いですので、和食で言うとタレの様で、ご飯との組み合わせもどこかどんぶり仕立てといった所です。

その様な意味も有って日本人のお客様には、馴染みやすく分かりやすい味のため人気が有ると思います。

甘めのソースとして今回は、コニャックとポルト酒、マデラ酒にフォンドヴォーを加えたリッチな味わいの物にしてみました。

香ばしく濃厚なフォワグラとアルデンテの歯ごたえでセップ茸の食感も楽しいリゾット、たっぷりのお酒を使った香り高いソース、想像しただけで美味しさが伝わると思います。

シンプルですが、食べて単純に美味しい一皿をイメージして作っています。

個人的な考えですが、きっと沢山の方に喜んでいただける料理ではないでしょうか?

この一皿が本当に自分らしい物であるかは本人にも分かりませんが、今出来る事としてこの様な形になっていると思います。

この職業を選んだ最初の理由「沢山の人に喜んでもらいたい」という気持ちを持ち続けて、これからも頑張りたいです。