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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

チョコレートのミルフイユ グランマルニエ風味

2008年01月14日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

チョコレートのミルフイユ グランマルニエ風味です。

お菓子屋さんでは、ヴァニラ風味のクリームや苺を挟んだミルフイユを良く見ますが、今回は少しアレンジして、ココア入りのほろ苦いパイ生地に、グランマルニエ酒で香りを付けたチョコレートクリームを挟んだ、少し大人なミルフイユにしてみました。

あらかじめクリームを挟んで置くお菓子屋さんのミルフイユは、時間が経っても湿気にくいように、折り込みパイ生地を押さえて焼き上げる場合が多いのですが、グリンツィングでは、時間をかけてふっくらと焼き上げたパイ生地を使っています。

しかし、この方法ですと、時間が経つにつれてクリームの水分がパイ生地に染みこみ易く、美味しさの寿命が短いのが難点です。

だからこそ、このサクサクの食感は、作り立てを出せるレストランならではの美味しさなのです。

それから、試作の段階では、チョコレートの風味をストレートに感じてもらいたいと思い、風味の強いお酒を使いませんでしたが、どこか単調で食べ飽きてしまうので、チョコレートと相性の良いオレンジのお酒を加えたところ、グッと味わいが深まり一皿の完成度も上がりました。

最近は、デザートにも料理と同じく軽さを求める為に、お酒やクリームを控える傾向にありますが、フランス料理らしい余韻や印象深い一皿にする為には、お酒も大切な要素だとあらためて感じました。 

是非とも、食後酒と共に楽しんでいただきたい一皿です。

 

今後は、自分の料理をもっと簡単にしていきたいと思っています。

料理を簡単にしたいとは、どう言うつもりだと思われるかもしれませんが、決して楽をしたい訳ではありません。

今回の一皿もそうですが、お皿にはチョコレートクリームを挟んだミルフイユがのっているだけですので、一見簡単に思えますが、そこにたどり着くまでには、とても長い時間と沢山の手間がかかっています。

普通の折り込みパイ生地に比べて、技術的に難しいココア入りの生地を丸一日かけて折り込み、そして当日には、一時間以上かけてオーブンで焼いています。

そこで何故、簡単にしたいかと言いますと、そこまでして時間と手間をかけた物を、出来るだけ完璧な状態でお客様にお出ししたいからなのです。

意味も無く複雑な事をしても、失敗するリスクばかりが高くなり、逆に料理の完成度を維持する事が難しくなります。

危険なリスクや時間は、仕込みの段階でかければよい事で、仕上げの段階では、少しでも余裕を持って取り組みたいのがその理由です。

このミルフイユは、作りたてが命ですので、その単純な作業に気持ちを込めたいのです。

沢山の作業に追われて、気持ちの無い形だけの仕事にしたくありませんし、自分の料理を、見かけだけの中身が貧しい物にもしたくありません。

しかし実際は、簡単にしたいと思っても簡単には出来ません。

難しい事ですが、これからも頑張りたいと思います。 

 

 


牡蠣とポワロー葱のテリーヌ トリュフ風味

2008年01月06日 | 前菜

明けまして おめでとうございます

今年も、東京グリンツィングの沢山の料理をご紹介していきます。

本日は、前菜の一皿から 牡蠣とポワロー葱のテリーヌ トリュフ風味です。

旬の牡蠣を相性の良いポワロー葱と一緒に、冷製のテリーヌにしてみました。

最初は、フランスの家庭やビストロで食べる、茹でたポワロー葱にドレッシングをかけて食べる料理を作りたかったのですが、ポワロー葱だけでは物足りないので、牡蠣と黒トリュフを組み合わせてレストランらしい一皿にしました。

旨みの濃い牡蠣と柔らかくて甘いポワロー葱に、爽やかな柚子の酸味と高貴な黒トリュフの香り、そこに濃厚で滑らかなクリームソース、見た目は地味ですが、しみじみとした美味しさを感じていただけると思います。 

作り方は、柔らかく茹でたポワロー葱に、サッと湯がいて冷やした牡蠣を、柚子で香りと酸味を付けた水にゼラチンを加えた物と一緒に、テリーヌ型に詰めて冷やし固めます。

下に敷いたクリームソースは、牡蠣を塩味を付けた牛乳で火を通してから、ゼラチンを加えてミキサーにかけて漉した物に、同量の生クリームを合わせています。

皿にクリームソースをたっぷりと流してから、1㎝位にカットしたテリーヌをのせて、最後に黒トリュフの微塵切りと白ワインビネガー、オリーブオイル、トリュフオイル、塩を混ぜたドレッシングを上にかけて完成です。

きりっと冷えたテリーヌに、トリュフドレッシングのツンとした酸味、牡蠣クリームの塩味が、上質の白ワインにピッタリの前菜だと思います。

 

毎年の事ですが、去年は色々な事がありました。

そして、今年も色々な事があるでしょう。

去年は、沢山のお客様にグリンツィングに来ていただき、沢山の料理を食べていただきました。

調理場にいますので、実際に会ってお礼を言う事は出来ませんが、お客様にはいつも感謝しています。

同じく、読みにくい自分のブログをいつも読んでいただいている方にも感謝しています。

お店の外でいつも自分を見守ってくれている家族や先輩、友達、後輩にも感謝しています。

毎日、新鮮で良質な食材やワインを届けてくれる業者さんにも感謝しています。

料理人としての経験とチャンスをいただいた熱田オーナーにも感謝しています。

そして、一緒に頑張ってくれるキッチンスタッフに感謝しています。

今の自分の仕事は、一人では出来ません。

 

本当にありがとうございます。

そして、今年もよろしくお願いいたします。

皆さんにとって良い年でありますように。 

 


ランド産フォワグラのテリーヌ アルマニャック風味 

2007年12月24日 | 前菜

本日は、前菜の一皿をご紹介します。

ランド産フォワグラのテリーヌ アルマニャック風味です。

フランス料理で最も定番の食材のフォワグラを、香り高く濃厚で滑らかなテリーヌにしています。

テリーヌと言いますと、上品に四角にカットした形が一般的ですが、今回は豪快に、ざっくりとスプーンですくって盛り付けてみました。

今回使っていますフォワグラは、良質で有名なフランス ランド地方の鴨の物で、とても鮮度の良い状態で届いています。

他の産地のフォワグラも使う事が出来ますが、上等なアルマニャックをたっぷりと使ったこのテリーヌには、どうしてもランド産のフォワグラが使いたかったのです。

この一皿のイメージは、フランス南西部がテーマとしてありますので、ランド産のフォワグラにアルマニャックの香りを付け、写真では見えませんが、カオールの赤ワインで煮たプルーンのコンポートを添えています。

そして別皿で、こんがりとトーストしたブリオッシュをお出ししています。

今の時期には、特別に黒トリュフのスライスをのせていますが、こちらは残念ながらフランス産ではなくヒマラヤ産になります。

とても簡素な一皿ですが、気取り無く、旨い物をたっぷりと味わっていただきたい思いで作っています。

皿の上が明確なだけに逆にワインは、お客様の気分で自由な楽しみ方が出来ると思います。

しっかりとした個性を持ちながらも、余計な物が無く、余裕の有るおおらかな料理にこそ、ワインは惚れる気がします。

 

自分自身、この様にシンプルな料理をきちんと作りたい思いが、今とても強くなっています。

しかし反面、本当に素材を理解し、その調理法を自分の物にする事が、すごく大変な作業だと改めて痛感しています。

程々に美味しい料理に比べて、本当に美味しい料理を作る難しさは、歳を重ねるごとに感じてます。

「難しい」だからこそ、挑戦したいのです。

以前は、自分にも特別な才能が有れば、どんなに楽だろうと考えた時期も有りましたが、今は必要ないと思っています。

そんな限界の有る物に頼る事の愚かさを、フランス料理の仕事から学びました。

「コツコツと努力する」それ以外に、この難しい壁を乗り越える方法は有りません。

そこに限界は無いと信じています。

 

 

 


蝦夷鹿腿肉のロースト ポワヴラードソース

2007年12月17日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

蝦夷鹿腿肉のロースト ポワヴラードソースです。

毎年この時期には、北海道から上質の蝦夷鹿が届きますので、煮込みやロースト、グリル、パテ等にしています。

そして今年は、柔らかく味わいも豊かな内腿肉をシンプルにローストして、滋味深い旬の根菜等を添えた一皿にしてみました。

通常ですとローストには、ロース肉やフィレ肉を使うお店が多いのですが、グリンツィングでは、腿肉を使いよりジビエらしい野生の風味を味わっていただきたいと思っています。

個人的には、柔らかく繊細なフィレ肉やロース肉よりも、ある程度肉としての噛み応えが有り香りも濃厚な腿肉の方が、よりワインを楽しめる気がします。

火を通すとパサつき硬くなり易い肉質ですが、ローストする時にはたっぷりのバターと共に低温のオーブンでじっくりと焼いていますので、その心配もありません。

その他にも、ローストした後に黒胡椒を挽きかける所もポイントの一つです。

今回の鹿肉だけでなく他の肉を焼く時にも、最初に胡椒をせずに焼き上がりにする事で、肉の余熱によって胡椒の繊細な香りが立ち上がります。

そしてこだわりのソースは、黒胡椒の香りと鹿肉の風味が詰まったポワヴラードソースです。

完成するまでにとても手間がかかるソースですが、鹿肉との相性は本当に素晴らしいです。

作り方は、最初に鹿のフォン(ダシ)を作りますが、鹿の骨とスジ肉、香味野菜を香ばしく焼き、赤ワイン、フォンドヴォー、スパイス、ブーケガルニを加えて3時間程煮出して漉します。

そして、ソースのベースですが、鹿の屑肉やスジ肉とニンニク、エシャロットを炒めた所に、赤ワインビネガー、赤ワインの順に加えて煮詰めてから、先ほどの鹿のフォンとスパイス、ブーケガルニを入れて1時間程煮込み、味が出た事を確認して漉します。

漉した物を軽く煮詰めたら、仕上げにカシスのジャムとディジョン産マスタード、生クリーム、黒胡椒を加えてから塩で味を調えて完成です。

読んでいただければわかると思いますが、工程も細かく、作る時間も材料の費用もかかります。

もっと簡単に、時間も手間もかけずにソースを作る方法も他にありますが、自分には簡単なそれだけの味でしかない気がします。 

訳も無く、赤ワインとフォンドヴォーを煮詰めただけの物をソースとは言いたくありません。

頻繁に、このブログの中でもソースの重要性やこだわりを書いていますが、決してソースが主役の料理や、究極の旨みを持ったソースを作りたい訳では有りません。

メインの素材を引き立て、一皿の中で自然に調和する完成度の高いソースを作りたいのです。

 

今回ご紹介した鹿肉のローストにポワヴラードソースの組み合わせは、沢山の料理人が作る定番の一皿ですが、こういった王道の一皿を自信を持って作れるようになった事は、最近の自分にとって本当に嬉しい成長です。

以前でしたら、無理にでも人と違う方法や形で表現しなければ評価してもらえない気がして、本当に良いのか悪いのか自分自身にも分かっていない事があったと思います。

大切なのは変わった事をする事ではなく、いかに完成度の高い本物の味を表現するかだと学びました。

見た目には普通の当たり前の一皿を、自信を持って自分の料理だと言える勇気を、これからも大切にしていきたいと思います。 

 


フランス産栗のモンブラン コニャック風味

2007年11月27日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

フランス産栗のモンブラン コニャック風味です。

モンブランは、この時期に必ずメニューに入れる定番の一皿ですが、今年も去年からヴァージョンアップして登場です。

今回も色々なお店のモンブランを食べて研究しましたが、色々なヒントは見つかっても、最終的には自分の味覚で表現しなければいけない事を改めて感じました。

あくまでも自分の完璧を目指すのであって、他人との単純な違いは本当のオリジナリティとは違う気がします。

そんな中で、今年のモンブランは生まれました。

見た目は去年にご紹介したモンブランと同じ様に見えますが、一つ一つのパーツはすべて変わっています。

一番上のマロンクリームは、フランス産マロンペーストを牛乳とラム酒でのばした物でしたが、より軽い味わいと食感のマロンクリームとホイップクリーム、コニャックを合わせた物に変え、以前は中にヴァニラアイスクリームを入れていたのを、コニャック風味の栗のアイスクリームにしています。

そのアイスクリームの上には、甘さ控えめのホイップクリームをのせてからマロンクリームを絞っています。

一番下の焼きメレンゲも、プレーンな物からアーモンドパウダー入りに変えました。

今回の焼きメレンゲは、最後にグラニュー糖を生地に加えていますので、キャラメル化したシャリッとした食感と香ばしい味わいが加わり、とても美味しくなりました。

全体的には、以前の濃厚でしっかりした味わいから優しく繊細な一皿に変化していますが、香りや食感のコントラストは強くなっていますので、食べた後の満足感は高くなっています。

盛り付けもシンプルに、飾りらしい物は付けずに最後に粉糖を振るのみですが、静かな冬の山に粉雪が舞っているようで幻想的な雰囲気になりました。

 

故郷が新潟ですので、寒い冬や雪には沢山の思い出があります。

自分が小学生の頃に、父親がスキー場によく連れていってくれた事を憶えています。

自分にとってこのモンブランは、ヨーロッパの山ではなくて、あの時の新潟の雪山なのかもしれません・・・

 

これからの季節にピッタリの自信作です。