ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

アクションRPG。敗北の原因は?(4)

2008-09-18 | アクションRPG。敗北の原因は?
「だから。」

タロウは、そう言いながら、かなりイラつく自分がわかった。でもすぐ、ゲームに向かった。今まで見た画面は、見てはいるがもう目に入らない。手が勝手に、次々とクリアしていく感じだ。あっという間に、ファイナル・ステージに来た。

「さあ、いこか。」

と言いながら、実は、けっこう緊張していた。そこからは、画面に目をやりながら、慎重になって、でも、ガンガン進んで行く。今度は、宮殿に入った。少し薄気味悪い。ロウソクの明かりがチラチラして、部屋の様子が見えたり消えたりする。効果音だとはわかっているが、静かな中に、たまに物音がすると、ビクッとする。タロウは、ディズニーランドのシンデレラ城を思い出した。ゲームの展開は、ホラー系のアクションみたいだ。敵が襲ってきたり、部屋のあちこちにしかけがしてあったりする。壁に掛けてある絵だと思っていた男の手がいきなり出て、後ろから首を絞められたときには、コントローラーを両手でおもいっきり握り締めてしまった。それでも、ポイントを稼ぎながら、タロウは宮殿の中を先へ先へと進み続けた。

タロウは、ついに宮殿の王の広間に着いた。ここでは、ナルニアのケアパラベル城を思い出した。いろいろ探し回ったが、たいしたものは見つからず、それほどポイントは稼げなかった。でも・・・やっぱり、なんかありそうだ。
試しに、王座に座ってみた。すると、穏やかだった王の広間に、いきなり、敵があらわれた。

「まあ、少しは楽しませてもらわんと。」

タロウは、次々と出てくる敵をどんどん倒していく。それほどの数ではないが、少しずづ増えてくる。反対に、だんだんライフ・レベルが減ってきた。

「やばいな、この展開。」

タロウは、戦いながら、一つのことに気がついた。自分が王座に遠いポジションで戦うと敵が増えてくる。ポジションを王座に近くとると、敵の攻撃が弱まる。

「はー。ほんまかいや。こんなんあったか?」

タロウは、半信半疑だったが、おもいきって、王座のすぐ近くにポジションを移した。すると、どうだ。敵は、攻撃を止めただけではなく、しだいに融けてなくなってしまった。

「・・で、どうする?」

ゲーマーの直感で、ここには、まだ何かありそうな気がする。だが、どうすればいいのか、アイデアがまったくうかばななかった。

「ここで降参か。いややな・・。はっ、ここで降参か!そうや、王座やん!」

タロウは、王座の前にひざまずいた。すると、その王座に王様が現れた。

タロウはアイテムを獲得した。そのアイテムは「勝利の王」だ。


アイテムを獲得したと思ったら、音を立てて、宮殿が崩れ始めた。そこに敵が現れた。ついにボスキャラ登場だ。崩れていく宮殿の中で、タロウは、最強の敵と戦うことになった。

「これをまっとってんやん。」

タロウはいつものように攻撃を仕掛ようとした。ところが、足場は崩れてどんどん少なくなる。もちろん、落ちたらそれで終わりだ。天井や壁は、ロケットのように、タロウの上に降ってくる。敵は、そんなことはおかまいなしだ。今までの敵の何倍ものパワーで、ガンガン攻めてくる。

「あっかん。死んだ。」

タロウは、まったく攻撃ができないまま、敵の全体重が乗ったハンマーパンチを顔面にまともに食らってしまった。

「うーん。やられた。くっそー。」

崩れていく宮殿をバックに、一番見たくない文字が浮かび上がった。

GAME OVER



さて、タロウの敗北の原因は?

答えは簡単。そう、獲得したアイテム「勝利の王」を使わなかったからだ。

(週末は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)