ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

母の手(3)

2008-05-14 | 続どろんこハリィ/ 母の手 /復活の朝
年月が流れました。
戦争は終わりました。

駅にひとり取り残されたミンも、なんとか生きるすべを得て、おとなになっていました。頭の良かったミンは、小さな商売から始めて、だんだん成功し、立派な商人になっていました。


ある日、ミンは、仕事で旅をするために、あの駅に行きました。

駅の周りには、露天で小さな店を出している人たちがたくさんいました。食べ物もあれば、着る物、生活雑貨、何でも売っています。

ミンは、列車の中で食べるものを買おうと、あれこれ見ながら、ゆっくり歩いていました。

すると、不意に、後ろから声がかかりました。

「あの、もしや、ミン・・じゃないかい・・・」

ミンが振り返ると、わずかの野菜を地面に広げて売っている、くたびれた姿の初老の婦人がいました。

「ミン・・だね。やっと会えた。かあさんだよ。ここにいれば、いつか、きっと会えると思っていた・・」

(つづく)