ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

親切なお医者さん(5)

2008-10-13 | 親切なお医者さん/ 5つの指摘
それからだいぶたった、ある日のことです。次郎医院の次郎先生のところに、患者さんがやってきました。

最初、その患者さんを見たとき、次郎先生は、その人のことを思い出すことができませんでした。

この患者さんは、かつて次郎医院で健康診断を受けていることが記録に残っています。次郎先生は、その健康診断の結果に目を通したとき、その人が誰だか思い出しました。

次郎先生 「健康診断の後、お目にかかっていませんね。その後、いかがですか?」

患者さん 「ええ、健康診断のときには、お世話になりました。あれから仕事を少し減らすようにしたので、体調がよかったんです」

次郎先生 「そうでしたか。ビタミン剤は、合いませんでしたか」

患者さん 「それが、初めは飲んでいたんですが、しばらく体調がよかったので、すっかり飲まなくなってしまって、それで、再診にも来なかったんです。ところが、このところ、前にも増して、ひどく体調が優れないんです。やっぱり、どこか悪いんじゃないでしょうか」

次郎先生は、あぁやっぱり、と思いましたが、そんなことは顔に出さず、言いました。

次郎先生 「そうですか。それはお困りですね。じゃ、また健康診断をしましょう」

それから、次郎先生は、その患者さんから、もっと詳しく話を聞いて、最適の健康診断のプログラムを作りました。次郎先生は、前の結果から、問題のありそうなところはだいたいめぼしがついていましたので、その辺りは詳しい検査を入れました。

次郎先生 「じゃあ、一週間後に、結果が出ていますので。そのときに、診断結果を見ながら、健康状態についてお話しましょう。では、お大事に」


一週間後です。

次郎先生 「健康診断の結果、出てますよ。これが、その数値表です」

次郎先生は、いっぱい数字の書いてある紙を見せました。それは専門家が見れば、一目瞭然で、とても普通の状態ではないことがわかるものでした。

でも次郎先生は思いました。俺は患者さんを怒らせるような、不親切な医者じゃないって。

それで、こう言いいました。

次郎先生 「これらの数値は、平均値から見ると、かなり異常なんですよ。ただ、個人差がありますので、これだけで、なんとかの病気だとか、そういう断定はできません。体調が悪いのは、過労が原因じゃないかと思うんですが・・・・」

(週末は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)