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シェアハウスの住人達

2020-09-12 16:25:12 | 日記

 台風一過後、朝外に出ると色々な家の部品が落ちている。
それは何時も自宅の物もあれば他所の物もある。
「あんた所のがうちに飛んで来てたよ」と、
近所の人が持って来てくれても例えば明らかに、
貧相な拙宅のとは違う立派な外壁の一部という事もある。
 致命的な住居の破損は修理の必要があるが、
そうでない場合、経済的理由の他に兎に角、
先が見えつつある、
私の寿命を考慮して軽微な部品の欠損は放置している。

さて例によって?昨夜見た夢の話・・・。

 私は何処かの町のシェアハウスに住んでいた。

 共用のリビングダイニングで大学生のS藤君が、
唐突に誰にともなく言った。

「幸子さん、遅いですね」

「S藤君は幸子さんの事が気になるのね」

 それを聞いて、
恵子さんがニヤニヤ顔でS藤君に言った。

 幸子さんは二十、五六歳で、
恵子さんは四十歳前後風に見え、
二人とも夫婦でここに住んでいる。
 幸子さんの夫は営業マンで何時も帰りが遅い。
恵子さんは夫と同じ役場に勤める共働きで、
何時もは二人とも略定時に帰宅するが、
この日、夫君の雪雄さんはまだ帰っていない様だった。

「ちょとそこまで見て来ます」

 恵子さんはS藤君をからかいながらも、
「少し心配だ」という風な顔をこちらに向けるので、
成り行き上、私はそう言って立ち上がった。

 専業主婦の幸子さんは夕方、
ここの住人の食事の準備が終わった後、
「その辺りを少し歩いてくる」と言って、
10分足らずの時間出掛ける事が時々ある。
幸子さんは近々おめでたで、
大きなお腹を抱え、ゆっくりと動くけれど、
何時も何事もてきぱきとこなす人だ。

 玄関前の路地を曲がり通りに出た所で、
私は芽依に出会った。
 芽依ともう一人香音という女子高生は、
大家のK谷さんの孫で三人はシェアハウス隣の
敷地二百坪ほどの屋敷に住んでいた。

 芽依と香音は従姉妹同士と聞いた。
聞くところによると、
香音の両親は海外赴任で彼女を大家宅に預けた。
それを親族の集まりの際、
同じく海外赴任の結菜の両親が聞き、
「それじゃあうちの子も」
と、いう事になったと聞いている。
 香音はいかにも優等生といった風で、
挨拶も彼女の方から積極的にして来る。
 芽衣の方は、私には少し不良っぽく見えたが、
ある切っ掛けから彼女とよく話をする様になり、
「これが今時の普通の女の子なのかな」
と、思うようになった。

「遅いじゃあないか。
 香音さんはもう随分前に帰ってるぞ」

 私が芽依に声を掛けると、
芽依は少し睨んだ様な何時もの素振り見せ、
何か言い掛けたその時、

「あら、ごめんなさい。そこの公園で、
 芽衣さんと話し込んでたら遅くなっちゃった」

と、幸子さんの声がした。声の方へ振り向くと、
幸子さんは角の郵便ポスト脇をこちらに歩いて来ていた。

 夕食の食卓で、恵子さんが言った。

「S藤君が幸子さん遅いって、凄く心配してたわよ」
 
「すみません」

「おいおい、そんなに若者をからかうものじゃない」

雪雄さんが言った。

その場に加わることもなく、
黙って会話を聞いていたS藤君が立ち上がり、

「お先に失礼します」

と、そそくさと自室に引き上げた。
そんなS藤君の態度は何時もの事で、
自分も若い頃はそうだったと、私は思った。

「ところで、
 幸子さんは来月になると実家に帰るんでしょ。
 食事はどうしましょうか」

と、雪雄さんが切り出した。
 私はその件は各自、
自分で用意すれば良いと思っていた。
というのも
このシェアハウスは、
元々アパートだった建物を改装したもので、
各部屋には、
簡単な調理が出来るIH調理器が備わっているからだ。
 K谷さんの主人が生前、
「これからはシェアハウスだ」と、
若い独身女性や女子大学生の入居を当て込んで、
建物の一階部分を共用スペースにリフォームした。
そして、
時流に乗った積りだったがそう上手く行かなかったらしい。
今のところ、1LDKタイプの4部屋は我々で満室だが、
残りの1ルームタイプの3部屋は随分前から空き部屋状態だ。

「いいわ、私がやるから。
 今まで幸子さんに任せっぱなしだったから」

「あっ、すみません」

「いいのよ。
 幸子さんは育児とか大変になるから。
 これからは私も手伝う様にする。
 部屋(自室)だと出来るのは、
 精々インスタント食品冷食で、
 ちょっとした料理でもするとなると、
 やはりここでないと駄目だから。
 S藤君のお母さんだって、
 食事が出るから安心だって言ってたし」

 雪雄さんの如何にも「お前がやれよ」みたいな顔付に、
恵子さんはそう答えたのだろうか。
そこで、ふと私は二人が務める役場の何所かで、
『男女共同参加』の啓発ポスターを目にしたのを思い出し、
後でこの夫婦が喧嘩なんかしないかと、余計な心配をした。

 幸子さんが実家に帰って数日後、休日の朝、
私が玄関前の植木を剪定しようと準備を始めていたら、
「S木さん」と、声が掛かった。
(夢の中で私の名前はS木らしい)

 振り返ると香音と芽衣が居た。
彼女たちの仲の良し悪しは知らないが、
二人一緒というのは珍しい。
朝は最寄り駅まで二人一緒に出かけているが、
通う学校が違うので、毎日基本殆ど別行動の様だ。
この日、二人はコンビニからの帰り道だった。

「S木さん、あの家の様子がおかしいと思います」

と言う香音の視線を追うと、
つい最近まで、M本さんという老人が独りで住んでいた家だ。
M本さんは歩行が困難になり施設に入所したと聞いている。
 通りに面したその家を路地から窺うと2トントラックが止まり、
家の中から運び出した家具や家電製品を積み込んでいた。
 今、積み込みを行っている男の一人が、
窓ガラスを割って家の中に入るのを芽衣が見たらしい。

「どうかしましたか」
と、雪雄さんと、

「幸子の実家に行くので明日から産休取っちゃいました」
と、幸子さんの夫君の拓也さんが一緒に出て来た。

 雪雄さんは、
「どうしましょうか」と言う風な顔を私に向けるので、
相当一生懸命、如何すれば良いかを私は考えた。

「M本さんの入所先に電話してM本さんに聞いてみましょう。
 多分、大家さんがM本さんの入所先を知ってると思うから。
 それと息子さんと娘さんの連絡先も分かるかも・・・」

 そして私は香音と芽衣に、

「お祖母さんに聞いて来て」

と言った。

 程無く香音がメモ書きを持って、小走りで戻って来た。
大家のK谷さんも芽衣と一緒に少し遅れてやって来て、

「M本さんはねえ。○○荘にいるよ」 

と言った。

「○○荘ですね。○○荘、電話番号、・・・」

 雪雄さんはスマホのAI検索、音声認識機能を使い、
素早くM本さんの入所先に電話をする。

「M本さん本人と話が出来るそうです。
 あっ、はい。そんな話は聞いてない・・・」

 雪雄さんが電話でやり取りする様子を見ながら、
私は「やはり公務員の仕事ぶりそのものだなあ」
と、思い眺めていると、
今度は拓也さんが、

「M本さんが知らないって言うのなら、
 俺、息子さんの方に電話してみる」

と、香音が差し出すメモ書きを覗き込みながら、
素早くスマホを操作し電話し始めた。
そして二人は、
「息子さんも知らないから、
 これはもう警察に通報」
という結論に達した様だった。
 そこで自分だけが、
この場に参加していないと気付いた私は、
自分も何か行動して見せないと体裁が悪いと感じた。

「ちょっと見て来ます」

 私はそう言って、
精一杯の速足で路地を抜けM本さん宅の前に行った。
そして、
丁度トラックの運転席に乗り込もうとした男に声を掛けた。
そして多分そういう風な結果になるだろうと思った通り、
「頼まれただけ」と軽くあしらわれた。
私は去っていく車のナンバーを覚えようと、相当な努力をした。

 直ぐに来ると思っていた警察は、
少し時間が経ってから来た。
車のナンバーや犯人たちの特徴は、
香音と芽衣の二人がしっかりと覚えていた。
私たちはやって来た警官に、
事の経緯を説明してその日は昼になった。

 後日、M本さんの息子さんが、
菓子折り持参でシェアハウスに来た。
 息子さんによるとあれから直ぐ、
雑に積み込んで積み荷が落ちそうなトラックを、
交通指導中のパトカーが発見。
注意を促そうと停車を命令して車のナンバーを照会したら、
「お前たち、ちょっと待て」と、いう事になったらしい。

 笑い顔で息子さんは話を続けた。

「ピッキングで玄関が開かなかったそうですが、
 実は玄関口は家が古くて立て付けが悪く、
 きちんとドアを閉めると容易に開かなくなってまして。
 だから親父は何時も戸締りをせず半開きにしてて、
 それを不用心だと私たちは言ってたんです。
 それがこの前は、逆に功を奏して・・・」

 さらに、
家財道具は処分するのも大変なので、
欲しい人が引き取ってくれるのは願ったりだが、
勝手に持ち出されるのは腹が立ち不愉快だ。
「今回そんな嫌な思いをせずに済んだのは、
皆さんのお陰です」と、息子さんは付け加えた。

 やがて半月程して、
Y田さん一家がシェアハウスに帰って来た。
幸子さんが何時もの明るい笑顔で、

「私がいない時、凄い事があった様ね」

と、抱き抱えた赤ちゃんの顔を、
こちらに向ける様にしながら言った。

「そうなんです。香音さんと芽衣さんが」
と、言い掛けながら私の目は覚めていった。

↑↑CG RailSim2 朝霧邸、作者:モッティ

・・・・・
先日地区の川ざらえ、休憩中に話の流れで私が、
「一軒家に独り暮らしは不経済非合理的で馬鹿らしい。
独りなら車上生活で十分だ」と言ったら、
「いくら何でもそれは、トイレとか風呂とか不便ですよ。
やはりワンルームのアパート辺りが良いですよ」

それから数日後、特売日のドラッグストアでレジを通り、
買い物袋に買った物を詰めていたら横で、
20代と40前後に見える年齢の女性が立ち話をしていた。
若い方の女性が、
「姉から電話が有るまで私も気が付かなかったのだけど、
実家に行って見ると家具や家電が無くなってました」
と言っていた。

またある人からは、
「GO TO トラベルから帰ってみると、
家財道具がきれいさっぱり持ち去られていた。
目撃者は白昼堂々と持ち出しているのでてっきり、
引っ越しだと思っていたという」と、そんな話を聞いた。

そんなところで見た夢なんだろうか。

コメント (10)
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