本朝徒然噺

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すずめ二人会

2007年08月24日 | 落語随談
谷中(やなか)の全生庵さんへ、ブログご縁のagmaさまと一緒に「すずめ二人会」を聴きに行ってきました。

「すずめ二人会」は、落語家の林家正雀師匠と歌舞伎役者の中村芝雀丈のコラボ公演。
お二人が一つの噺を演じる「掛け合い噺」がメインとなっています。

今年の春に初めて開催され、今回が二度目なる「すずめ二人会」。
春はホールで行われましたが、今回は、三遊亭圓朝ゆかりのお寺、全生庵で開催されました。

全生庵さんは、これまでにもさまざまな落語会を開催されています。
あまりにも落語会が多いので、とうとう「高座」までこしらえてしまったそうです……(笑)。

■三遊亭圓朝ゆかりのお寺・全生庵

全生庵さんには、「落語中興の祖」と呼ばれる三遊亭圓朝師匠のご墓所があります。

そのため、三遊亭圓朝師匠のご命日には毎年法要が営まれ、一般の人には非公開で「奉納落語」が行われていました。
それが数年前から、法要を「圓朝師匠のご命日(8月11日)に近い日曜日」にし、法要の後で一般向けに落語会を開催する形に変わりました(法要は一般非公開)。
それに伴い、境内では「圓朝まつり」が開催され、噺家さんたちが屋台を開いてファンサービスをしてくださるようになったのです。
その圓朝まつり(今年から名称が「感謝祭・圓朝記念」と変わりました)も毎年大盛況で、すっかりおなじみのイベントになっています。興味のある方は、ぜひお出ましになってみてください(といっても、今年はもう終わってしまったので、来年ぜひ……)。

今回の「すずめ二人会」では、圓朝師匠作「真景累ヶ淵」の「豊志賀の死」が披露されたので、圓朝師匠のお墓にももちろんお参りしました

■幽霊画

全生庵さんには、幽霊画のコレクションがあることでも有名です。
そのなかには、円山応挙の筆といわれるものもあります。

全生庵さんでは、毎年8月の1か月間、虫干しをかねて幽霊画を公開してくださっています。
なので、「すずめ二人会」の開演前に幽霊画も拝見し、怪談気分を盛り上げました(笑)。

展示されていた幽霊画には、構図が素晴らしいものやモチーフがおもしろいものも多く、こわいというよりも、思わずじっと見入ってしまった感じです。
蚊帳の中に女性の幽霊が立っている絵があったのですが、美人画の要素もあわせ持った美しい一幅で、目をひきました。

■ろうそくの灯りの中での怪談噺

今回の「すずめ二人会」は、午前・午後・夜の3部制でした。
当初は午後・夜の2回公演の予定だったのですが、好評につき午前の部を追加されたそうです。

私たちは、夜の部に行きました。
夜の部が始まる前には、全生庵さんの境内にろうそくで灯りがともされ、きれいでした(冒頭写真)。

メインの「掛け合い噺」の前に、前座さん、二つ目の林家彦丸さん、林家正雀師匠の落語がそれぞれ一席ずつと、全生庵のご住職・正雀師匠・芝雀丈の鼎談がありました。

二つ目の彦丸さんは正雀師匠のお弟子さんで、正雀師匠と一緒に「鹿芝居」(噺家さんによる芝居)の一座にも参加されています。
彦丸さんは、「鮑のし」という噺を披露してくださいました。
色白の彦丸さんが、ベージュの小千谷縮に黒の紗羽織を着て登場すると、なんとも涼しげでした

正雀師匠はあらかじめネタ出し(やる噺をあらかじめ発表しておくこと)をされていて、午前の部は「質屋庫(しちやぐら)」、午後の部は「肝つぶし」、夜の部は「七段目」となっていました。

「七段目」は、芝居好きを通り越して芝居キチガイの域に達している若旦那が、店の小僧相手に忠臣蔵の七段目の真似事をする「滑稽芝居噺」です。
普段の寄席でもよくかかる噺ですが、お芝居の心得のある正雀師匠がなさると、やはり聴きごたえがありました。

鼎談の後、お仲入り(休憩)をはさんで、いよいよ掛け合い噺「真景累ヶ淵 豊志賀の死」の始まりです。
高座の両端に燭台がおかれてろうそくに灯りがともされ、場内の電気が消され、怪談噺を聴くにはもってこいの雰囲気がつくられました。

新吉がお久と一緒に池之端「蓮見寿司」の二階座敷にあがる場面では、本堂の障子に豊志賀の幽霊の影が映し出されました。
午前の部や午後の部だと、表が明るいのでいまいちはっきり映らなかったんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう……。

正雀師匠と芝雀丈が、新吉、豊志賀、お久、豊志賀の弟子、新吉のおじさんなど、いろいろな役を見事に演じ分けながら「掛け合い噺」を披露してくださいました。

とりわけ芝雀丈は、豊志賀とお久を一瞬にして演じ分けたり、新吉(おじさんとの掛け合いの部分)も演じたりと大活躍で、役者さんの本領発揮といった感じでした。
豊志賀のお弟子の一人の「与太郎」まで演じていたんですよ! 芝雀さんの与太郎なんて……貴重です……。

芝雀さんの豊志賀は、凄みと色気と新吉への深い思いが絶妙のバランスで表現されていて、とてもよかったと思います。思わず息をのんで見てしまうような、なんともいえない迫力がありました。
鼎談で芝雀さんが、歌舞伎ではこういう「恨むほうの役」が回ってきたことがないとおっしゃっていたのですが(その逆の役が回ってきちゃうそうです……笑)、芝雀さんの「かさね」を見てみたいなあ……と思いました。
お父様の雀右衛門丈も、ずいぶん前に播磨屋さんと「かさね」をなさったことがありますから、芝雀さんと播磨屋さんのコンビでも見てみたい気がします。催促するわけではありませんが(笑)。

いろいろな人物を描き分けるというのは普通の落語でも同じことですが、「掛け合い噺」だと、噺家さんが一人で演じるときとは違った独特のテンポがあって、噺の世界もさらに広がる感じがしました。
これからもぜひ続けていただきたい企画だなあ……と思います。

落語会自体もとても楽しかったですし、開演前にagmaさんと楽しいおしゃべがたくさんできて、充実した週末になりました
agmaさま、ありがとうございました! またぜひご一緒させてくださいまし

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6 コメント

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秋もあるかしら? (agma)
2007-08-25 21:29:54
昨日は有難うございました!!
本当に楽しかったですね。

貴女と いつもよりも長い時間お話し出来たのが 
とても嬉しかった反面、私のあわてんぼう&おっちょこちょいがバレてしまい お恥ずかしい限りです~。 

帯締め、あれから うっとり眺めております~。
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agmaさま (藤娘)
2007-08-26 00:39:05
こちらこそ、本当にありがとうございました!
agmaさまと久々にお会いしてゆっくりお話ができて、本当に楽しゅうございました

私のほうこそ、粗忽&酒飲みだということがバレて、お恥ずかしい限りでございます……。
こんな私ですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします

帯締め、本当に良いお買い物でしたね!
お締めになった時のお写真、今から楽しみにしております!

すずめ二人会、これからもぜひ続けていただきたいですよね
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機会があれば・・・ (sachiko)
2007-09-01 12:22:23
藤娘さま お2人の楽しそうなご様子拝見し
新幹線お出かけ機会があれば
ご一緒させていただきたいと思いました~

まずは落語から・・・ 何時の日か 歌舞伎デビュー
みなさまのお話伺っていると
すこしづつ古典も楽しめるようになりたいと
思うようになってまいりました。
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素敵なひととき (神奈川絵美)
2007-09-01 13:44:29
こんにちは! agmaさんとこからとんできました!
素敵なひとときを過ごされたようですね。掛け合い噺・・・落語ともお芝居とも違う楽しさを想像します。

それにしても藤娘さんは精力的にお着物でお出かけ、すばらしいですね! 私なぞ8月はまったくといいほど。。。涼しくなってきたので、また積極的に着たいなあ。
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sachikoさま (藤娘)
2007-09-02 13:57:27
ぜひぜひ、ご一緒させていただきとうございます!

落語は、親しみやすくて、それでいて奥が深くて、素晴らしいですよね
私も、歌舞伎よりも先に落語にハマったのですが、落語にハマってから歌舞伎も楽しめるようになりました

落語のなかには芝居を題材にした噺も多く、歌舞伎のなかにも落語をもとに作られた演目があって、楽しいですヨ
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神奈川絵美さま (藤娘)
2007-09-02 14:23:23
ありがとうございます!

もともと縁の深い歌舞伎と落語の世界ですが、最近は噺家さんと役者さんの「文化交流」も進んでいるようで、喜ばしい限りです

冬生まれの私は、昔は暑さが大の苦手だったのですが(寒いのも苦手なのですけれど……笑)、夏キモノにハマってから一転して夏好きになってしまいました(笑)。
夏物の洋服を新調していないので、出かける時はついついキモノに頼るようになり……

これから秋に向けて、着物でのお出かけに絶好の季節になるので、楽しみですね!
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