Entrance for Studies in Finance

トランプによる「関税引き上げ」宣言と全人代開幕

トランプ大統領は3月1日(木)。安全保障を理由にした輸入制限を認めている通商拡大法第232条に基づき、米国の安全保障を理由として 鉄鋼25%とアルミニウム10%の関税を引き上げ輸入制限を課すと明言。大きな国際的反響を呼び起こした。これはもともと米商務省が、2018年2月、鉄鋼とアルミの輸入増で国内産業が弱り、安全保障上の脅威になっているとするレポートを公表。3つの対策を示したことに端を発している。興味深いのは、鉄鋼、アルミのメーカーや労働組合が、トランプの方針を支持したこと。逆に共和党内から報復関税や、物価上昇による消費者の負担増を懸念する声が上がったことだ。トランプ政権側は、ただちにコストへの跳ね返りはわずかにすぎないと反論している。なおこのほか 高品質の鋼材を輸入に頼っている自動車メーカーの価格競争力を落とす可能性も指摘されている。

ただ統計の中で、最大の標的 中国の影は意外に希薄である。2017年の輸入シェアで鉄鋼はカナダ16.6% EU14.3%  ブラジル13.5% 韓国9.8% キシコ9.3%  ロシア8.3% トルコ5.7%  日本5.0%  台湾3.3% 中国2.2%(すでに中国には反ダンピング関税が課せられている) インド2.0%  

他方アルミでは カナダ42.3%  ロシア10.6%  UAE9.4% 中国9.1% EU4.2%・・・となっている。

安全保障上の理由であれば安全保障上の同盟国は対象ではないのではと思いつつ、各国は心穏やかではない。トランプの頭にあるのは11月の中間選挙のことだけという言い方もあるが 翌日のアジアの株式市場では 鉄鋼・自動車株を中心に全面安となった。もともと中国は政治局員二人を渡米させて、米中経済対話の再開をはかろうとしていたが、関税引き上げに向かう米政府の姿勢は頑なだった。

米国による一方的な引き上げ宣言に対して、各国が、WTOへの提訴だけでなく、報復関税(中国は米国から大豆を大量に輸入している)などに進み貿易戦争に陥る懸念がある。

こうしたなか 13期全国人民代表大会(全人代 代表は2980人)の第1回会議が3月5日に北京の人民大会堂で始まった。会期中で国家主席の任期撤廃を柱とする憲法改正案(現行憲法では45歳以上の中国国民で有権者が条件 連続3選を認めていない)の採決が見込まれており、これは習近平(2013年から国家主席 前任は胡錦濤 2017年10月の党大会で2期入り)への権力集中を加速するものとみられている。2020年までに小康社会を実現する。経済成長率目標は昨年と同じ6.5%前後。GDP対比の財政赤字を2017年の3%から2.6%に引き下げる。国防支出は8.1%増(2017年は7.0% 2017年1兆元超える)。1兆1069億元(約18兆4500億円)。これには最新兵器の研究開発費は含まれていない。日本の2018年度予算案における防衛関係費は5兆1911億円。

共産党19回大会では、習近平体制が確認されたが、政治局常務委員会の構成ではこれまでのような、若手を引き上げるメカニズムが働いていない。常務委員は60歳から67歳の7人。そのうち習近平氏が64歳 李克強氏が62歳。で要するに同世代の人々で構成されてしまった。

共産党19回大会では一帯一路構想(習近平が2013年に提唱 2015年アジアインフラ投資銀行AIIB設立 2015年11月IMFのSDR構成通貨に人民元採用される 2018年1月には「北極政策白書」を発表)の重要性の強調。

2017年の実質経済成長率6.9% 政府目標の6.5% 2016年実績の6.'7%をうわまわる。名目では11%増の82兆7132億元(80兆円の大台超え 約1430兆円)で米国に次ぐ世界第二位(三位の日本の2.6倍)。インフラ投資が大きく伸びた(インフラ比率22%は過去最高 成長の官依存 民間投資は60% 企業や個人の債務依存は変わらず 金融を除く総債務のGDP比率は255%    2008年の141%から上昇)。2016年時点で中国の名目GDPは米国の60%(2014年に米国のGDPは世界の23%にまで低下。2000年頭には30%超えていた 当時日本は10%超え。)。今後の米国の成長率4% 中国の成長率7%とすると2035年までに世界最大の経済大国に。この成長を実現するうえで、外需は大事であり、中国としては、米国との貿易戦争は、困った事態だといえる。

ここで一帯一路が、対米依存を下げる道として 中国にとり重要であることが分かる。

2016年ふたりっ子政策開始(2015年秋に決定 2016年から認める)で出生数大幅に増える 2016年は前年比131万増の1786万人。しかし2017年前年より63万減少1723万人 幼稚園の不足 都市部で進む晩婚化・非婚化 60歳以上の高齢者は2017年に前年より1000万人多い2億4090万人 人口比は前年より0.6ポイント高い17.3% 生産年齢人口は減少 社会保障財政は悪化へ 90後 親は文化革命混乱期に生まれた70後は貧しさの記憶抱える 00後

2012年の党大会で2020年の国内総生産を2010年比で2倍にする目標掲げたが、2017年の党大会では2020年以降の長期目標を見送った。

2013-2020年の第13字5ケ年計画では最低でも6.5%の成長率維持が示されている。他方で資本流出を防ぎ人民元の急落防ぐために 海外送金などの規制強めている。

2015年11月国際通貨危機なSDRの構成通貨に元を加えると決めた・・・満足したかのように習指導部による元の国際化への取り組みは鈍った。

中国政府は米利上げに伴う急激な元安や資金流出を防ごう(背景 国内の経済成長率減速するなか 人民元を外貨に換えて資金を海外に動かす動きが加速 人民元の下落進む)と、2016年半ばから資本規制の強化に動き 500万ドルを超す海外M&Aなどに事実上 待ったをかけた(2016年11月から 500万ドル超の海外M&A 海外送金 両替は当局の事前審査を義務付け 以前は5000万ドル超だった。また不動産、ホテル、映画館、娯楽業、スポーツクラブなどで非理性的投資がみられるとし、高い技術を持つ製造業以外の買収を事実上規制。2017年6月 不動産大手の大連万達集団、投資の海航集団など5グループの海外買収向け融資の点検を、銀行監督当局が銀行に要請したことが判明。もともとこれらの企業は党幹部の親族の関与が指摘されており、海外買収を装った資産の海外移転だったともされる。中国からの対外投資は激減し、」2017年上期は中国は対外直接投資より対内直接投資が多い、資本純輸入国に逆転した。この結果マネーが国内にあふれた。不動産、シャドーバンク P2P金融。企業が銀行を通じて余剰資金を貸し出す委託融資。理財商品。国有企業等企業債務。

2017-2018年 北京・上海など大都市で人口抑制 違法建築の取り壊し 撤去などを進めている。

2017-2018年 北京で大気汚染対策進む。北風による拡散効果も働く。重点地域で基準超えの工場は閉鎖又は生産停止。熱源の石炭から天然ガスへの切り替え。

2017年12月 電力業界に排出量取引を全国レベルで導入 今後 他の業種にも拡大を予定

2017年6月 インターネット安全法 顧客情報の国内保存義務 日本に持ち出すには当局の許可必要

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Area Studies」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事