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Volkswagen and Deutsche Bank Scandal 2015-2017

フォルクスワーゲン問題は他の欧州自動車メーカーに波及

以下に見るように2015年9月にフォルクスワーゲンをめぐる排出ガス不正が発覚した。手口は試験のときだけソフトを使って試験を実態より下で通すというもの。2016年に問題はそのほかの欧州自動車に拡大。2017年に入ると、ルノー、ダイムラー、FCA(フィアットクライスラーオ-トモービル)についても不正の拡大が一層明らかになった(2016年に調査したところ、各社で不正が発覚した。2017年1月にフランスでルノーが摘発される。5月にはダイムラーが検察により家宅捜索受ける。また米司法省がFCAを連邦地裁に提訴。7月にはオランダの検察当局がFCA調査に乗り出す→大量の窒素酸化物を排出することが判明)。問題は欧州自動車業界全体に広がり始めた(なおFCAはスズキと提携。スズキのデイーゼル車にはFCAの問題のエンジンが搭載されている)。つまり欧州のデイゼル車は、排ガスの点では信用できないと見た方がよいのではないか。

トランプが地球温暖化対策を見直すこと(2017年3月28日温暖化規制の見直しの指示する大統領令に署名、2017年6月1日パリ協定からの離脱を表明)を批判する欧州の排出ガス規制が、この程度のものだったとなると拍子抜けだ。なおトランプの意見表明に関わらず、省エネや太陽光や風力など再生エネルギーへの転換の勢いはとまらず、当面はコスト的な理由で石炭からガスへの転換が進むとされる。

また市場として大きい中国が、今後技術的主導権を持つことになるとの予測もある。

VWは 長期間不正 米国で巨額の和解金支払い にも拘わらず世界販売台数首位

2016年の販売台数はデイーゼル車がなく不正の影響の少ない中国で大幅増(12.2%増の398万台あまり 中国のシェアは全体の39% 15年に始まった小型車減税がVWに有利に働く 中国でのトヨタはVWの3分の1)と欧州(4%増 420万台あまり)で販売台数増やす 

2016年世界全体では 3.8%増の1031万台あまりで世界販売台数首位 トヨタは1009万台 VWにとっては米国市場は全体の6% トヨタにとっては利益の4割前後 2017年1月11日 米政府に43億ドル(4960億円)支払いで和解(刑事上の罰金など)不正は2006年から15年まで続いた。一部の経営陣従業員は承知していた。

刑事上の罰金が28億ドル 民事上の制裁が14億5000万ドル 不正車をローンやリースで販売した金融関連法違反で5000万ドルの制裁金

民事上の和解150億ドル(車の保有者に約100億ドル 環境当局に環境関連費用やEV普及に47億ドル)

VWはEVへのシフト急ぐ 背景欧州連合の燃費規制強化 CO2排出量を大幅に減らす必要 ➡ 日本のトヨタ ホンダは燃料電池車FCVを次世代エコカーとしている。

ドイツ銀行をめぐる問題の重複  2015年から2017年

 このVolxwagenの問題と重なる形で ドイツ銀行の2015年決算で過去最大の68億ユーロ(9000億円)の赤字計上が話題になった、発行している偶発転換社債Contingent Convertibles=CoCo債に不安の声がでた。2016年9月15日には米国内で住宅ローン担保証券の販売でリスクの説明が不十分だったとして、米司法省から140億ドルの罰金支払いを求められていることが明らかになった。

2017年3月5日 ドイツ銀行は約80億ユ-ロ(9700億円)の大型増資と国内リテール重視への回帰を軸とした新たな経営計画を発表している。投資銀行に傾斜した経営が、世界各地で不正取引を生み、それを清算するための和解金が経営を圧迫する構図。リテール回帰の象徴は、中所得利用者の多い、グル0プ会社のポストバンク(旧郵貯)の売却を辞めて、本体に吸収するというもの。

フォルクスワーゲン スキャンダルの発覚 2015年9月

2015年9月18日EPA発表によれば、VWは不正ソフトを使い 走行性能を落として排出ガス規制の逃れていた(走行時の排出量は最大40倍)問題が発覚した(排気量2リットル 販売期間は2009年から2013年)。この事件がVW scandalと呼ばれるようになった。その後、VWでは10月以降世界レベルでの販売減少が始まった。問題は当初は窒素酸化物だけであったが、その後11月にはいると問題は拡大した。まず11月3日の自社調査の結果報告で、車両の型式認証での燃費 二酸化炭素についても不正が明らかになった(その前日11月2日EPA発表によればこれまでの2013年までの排気量2リットルクラスに加えて 排気量3リットル 14年以降の新型モデル含むでポルシェを含むなどに不正ソフト問題は大型車や新型車に拡大した)。また不正はディーゼルエンジンにとどまらずガソリンエンジンを積んだ車でも行われていた(VWは11月2日のEPAの発表内容をただちに否定)。しかしVWは11月4日には指摘を受けた全車種の米国での販売を停止した。

VWは11月20日 2リットル車についてリコール計画届け出

カリフォルニア州大気資源局CARBは11月25日 3リットルのデイーゼル車についてリコールを命令

不正は2005年に米国でデイーゼル車拡販を決めてから10年不正続く(販売開始は2009年 排気ガス基準クリアのため意図的に不正ソフトを搭載)。発覚でブランドイメージは日米で低下。失望広がる。技術的ミスではなく、top指示による意図的不正であることが問題

ドイツの企業に詳しい多くの人が社内ぐるみの不正でtopが知らなかったとは考えにくい(ヴィンターコーン社長を含む経営Top上層部主導による全社をあげた不正の可能性 オーナー一族による支配続く)と証言しているが、VWはそれを否定している(topが知っていて主導した可能性が大きいが 米国議会では技術者だけが関与と証言。次期社長としてVW子会社ポルシェ社長のマテイアス・ミュラー氏が就任。なおヴィンターコーンはなおVW内の要職を維持。自身の不正への関与、なんらかの罪を認めない姿勢を貫いている)。

内部昇格のミュラー氏に改革できるかは疑問。

しかし2007年にボッシュは問題のソフトをVWに提供するに際して内部のテスト用であり、規制対策に用いるのは違法であると文書で警告。2011年には社内の技術者が違法性を指摘したがこれを社内で無視した疑い。さらに2013年にEUも試験に対応した違法ソフトの存在を指摘(調査で不正ソフトを発見しながら追及せず:EUは不正を把握しながらディーゼル車を普及させるため長期間不正を放置ししてきた EUの環境規制は厳格に行われていない疑いがでてきた)。以上からマルテイン・ヴィンターコーンが主導しかつ極めて多数の幹部が共謀した全社ぐるみの詐欺事件の疑いは極めて濃厚だがVWはそれを否定している。同社がこうした態度を続けたばあい、真相が明らかにならない可能性も高い。確実に残るのはVWについてブランドイメージの低下だろう。

リコールの対象車はVWの発表で1100万台(2009年以降販売のゴルフ、ビートル、旧型パサートなど。うち欧州販売分が800万台)。EPAの制裁金は最大180億ドル。対策費用は総額で300億ドルを上回るとされる(9月22日)。リコールや訴訟で多額の費用が必要。

9月末時点で株価は4割減少株価で最大330億ドルをすでに失った。このほかブランド価値の減損も100億ドルを超える(2015年9月末)。欧州ではエコカーとしてディーゼル車が普及していた。欧州販売新車の5割(BMW プジョーシトロエンPSA、ルノーなども力を入れていた)。ディーゼル車は燃費性能は高いが窒素酸化物が多いことが改めて明らかになった。

2015年10月の日本での販売は前年比48.0%減と半減した。
 
 VWと傘下のアウデイが2008年以降の販売していたゴルフ、パサートなど5車種で不正。VW(アウデイ、ポルシェが主たる収益源)は2015年にトヨタを抜いて世界首位となる観測もあったが不正ソフト問題で失速が確実になった(2015年前半期世界販売台数 トヨタG:ダイハツ、日野含む 509万7000台前年同期比3.8%増 VW497万台5.9%増 GM492万台1.4%増 ルノー日産427万台。トヨタは3年連続首位 VWの販売台数の4割弱は中国でのもので181万台 GMの中国での販売台数は173万台 2015年半ばの時点ではトヨタとVWの年間販売台数1000万台超えが見えていた)。この問題以前から、中国やブラジルなど同社が強かった市場で、市場低迷の影響を受けていたが(新興国に食い込んでいる分 新興国リスクを受けやすい VW BMW ダイムラーともに)、不正ソフトでブランドイメージが悪化し世界的に販売の減速が見込まれている。問題は、不正がどこまで広がっているのか、終着点がまだ見えないことである。
 
2016年4月21日 司法省との間で対応策の大筋合意。一部車の買取り(買取りはめずらしい):排気量2リットルの不正車48万2000台についての買取り、リース契約の途中介助に応じる。和解金の支払いにも応じるなど。これによる引当金が162億ユーロ(約2兆円)。リストラとして、投資額の圧縮のほか、役員報酬や配当の削減。刑事訴追リスクはまだ残る。欧州の不正車対応との違い(欧州ではリコールのみ)も残る。主力のデーゼルエンジンへの信頼が低下するなか、次世代車対策を電気自動車EVに切り替えることを推進するものの(ダイムラーとともにEVの開発もすすめてきた また他社同様に自動運転車の開発も進めている)、ブランドイメージの低下は隠せない。
 
2015年にメルセデス・ベンツに抜かれるまで15年連続輸入車首位。それが一時半減へ。2016年5月17日大幅値下げ発表(日本では不正対象車種は売っていないがブランドイメージ傷つく)。

中国政府が今回のVW(第一汽車集団と提携)の排ガスでの不正にどのように対応するかは注目点。厳しく対応するか、国内自動車メーカーへの配慮から甘く対応するか。VWは中国シフト強める。大幅値引きで中国ノシェア首位守る。2位gはGM 3位は現代、

11月3日にはガソリン車含むCO2排出でも同様の不正。排ガス性能を高めると走行性能は落ちるとされる。実走時と試験時との差は従来から関係者の間ではしられていたとされる。

⇒その後 リコール開始は2016年1月からとされた

⇒VW ドイツの技術イメージは低下(ドイツの国内生産の43% 自動車産業雇用の34%がVWグループ 欧州最大手) ダイムラー BMW ともに欧州ではデイーゼル車に傾斜 ダイムラー BMWに対しても不正行為を疑う報道(両社は否定) ⇒ ドイツ経済は失速へ

⇒VWは電気自動車開発EV PHV開発にシフト 欧米向けでは 高機能排ガス装置を全面採用 不正によるイメージ悪化は致命的なレベル

⇒日本ではマツダがディーゼル車主力(マツダはVWとは構造が違うと主張)

 デイーゼル車触媒の白金(プラチナ)の価格下落。ガソリン車の触媒につかうパラジウムの価格上昇等の影響もでている。

2015年11月 韓国環境保全省はVWと傘下のアウディが韓国で販売下12万台超のリコールと課徴金141億ウオン(約14億円)の支払いを求めた。

2015年11月25日 独連邦自動車局KBAはVWのデイーゼル車のリコール計画を認可した。ソフト更新で走行時のNOx排出量を抑制。走行性能や燃費の悪化可能性を回避できるかをVWは明言せず。保護政策のため、KBAが 走行性能や燃費の悪化を容認した可能性がある。()

2016年1月4日 米司法省はVWを民事提訴した。アウデイを含む約60万台のデイーゼル車が対象で1台当たり最大で3万7500$(約450万円)の制裁金支払いを求める。

2016年1月10日 ミュラー社長 訪問先の米デトロイトで謝罪。われわれは犯罪集団ではなく顧客や規制当局を欺く意図はなかったと強調。→この発言は反省していないことを事実上表明したとして批判あびる。1月11日に再度の記者会見でようやく法令違反を認める。

2016年1月11日 ミュラー社長 金銭補償1000ドル(プリペイドカード2枚 1枚は汎用 1枚はVWデイラー専用)の対象を11月段階の2リットル車から3リットル(米当局はここでも違法があったとするがVWは否定している)に広げる。対象は56万7000台 負担額は680億円程度。

2016年1月12日 米カリフォルニア州大気資源局CARBは VWが提出した2015年11月に提出したリコール計画を法的基準を満たしていないとして却下。CARBは性能を落とさず排ガス値を正すことを求めている。EPAの関係者はCARBの見方に同意を表明。⇔ 欧州では850万台をリコールするがソフトウエアを更新するだけのもの(欧州での失速回避の狙いか。同様の問題は中国でも。中国の自動車産業の発展にVWを深く関与。VW失速回避に強いバイアスが中国ではかかるとのこと。これらの結果、欧州と中国では排ガス不正発覚後 販売量が伸びているとのこと。結果としてVWは極めて深刻なコンプラ違反を犯しながら存続を続ける可能性が高い)。
2016年1月19日 韓国環境省はVW社韓国法人社長を大気環境保全法違反で刑事告発。同社提出のリコール計画書が不誠実で、大気環境保全法に違反すると指摘。欠陥の発生理由を説明せず、改善方法も記述せず。
2016年1月21日 欧州委員会産業政策担当委員がミュラー社長に対して 米国並みの金銭補償求める。米国についてVWは1台あたり1000$の金銭補償を表明しているとのこと。対象は850万台。
2016年2月25日 米国で集団訴訟手続き始まる。原告は全米で約50万人。

分類:Business Focus 

2017年6月2日更新(2016年10月28日)

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