高齢層向けビジネス
日本では高齢化が進む中で シニア層向けのビジネス(衣料 旅行 教育など)が課題になっている。
2010年65歳以上の人口2925万人 全体の23%
2013年10月時点の人口推計で前年比110万5000人増の3189万8000人。総人口に占める割合は25%を超えた。
他方で15歳から64歳のいわゆる生産年齢人口は前年比116万5000人減少7901万人。61.1%で1981年以来初めて8000万人を割り込んだ。
2025年には3658万人に。にもかかわらず、市場が若年層向けで高齢者のニーズに全く対応していない。
この高齢者のニーズに社会システム全体を対応させる必要もある。
(例えば 定年の70歳までのさらなる延長 65歳以上の高高齢者の再雇用制度 テレビの字幕放送化
高齢者の大学での再教育 など)
他方 中国でも高齢化が進む上に
一人っ子政策(1979年に正式に導入)のために 高齢者の介護問題が深刻化すると予想されている。
中国では2010年で1億1000万人 全体の8%
2025年に約2億人 14%
2050年に3億3000万人 25%
中国の介護市場の規模は2015年に6兆円(6兆4000億円)を超える見通し・・・これは日本の2010年度の市場規模約8兆に相当
医薬品市場 中国市場の伸びは毎年2割(22%)と驚異的。2015年に1250億ドル。その時点の日本の規模は1400億ドル(市場の伸び率は3%程度)
でやはり2015年に中国市場が日本市場を上回ることが予想されている。
人口高齢化率2010-2050国連人口推計ほか(日本経済新
聞2011年11月28日より)
日本 22.7-35.6%へ
韓国 11.1-32.8
臺灣 10.7-36.9
シンガ 9.0-31.8
タイ 8.9-25.1
中国 8.2-25.6
ベトナム 6.0-23.1
これまでの各国の経済発展のルールからすると
経済発展がある段階になると出生率が低下、生産年齢人口が拡大する「人口ボーナス」の時期に入り
社会福祉負担は低下し内需が拡大する。そのあと高齢化が進む「人口オーナス」の時期に入ると
社会福祉負担が増えて内需が縮小しやすい。
日本の介護業者の中国進出が始まっている
リエイ(千葉県浦安市)はすでに北京進出 2013年に上海でも。
ロングライフ すでに青島進出
メデイカルライフ 上海で訪問介護に参入方針
ウイズネット 大連でデイサービスに参入方針
介護大手の経営に関心が集まる
介護大手4社 ニチイ学館(認知症専門のGHを新設)
ベネッセHD(入居に必要な一時金を200万に下げたタイプを展開)
メッセージ(入居金の負担がない24hサ-ビス付き賃貸住宅)
ワタミ(首都圏を中心に展開 2011年秋に愛知に初めて進出)
2008年7月タクショクを買収 高齢者向け弁当宅配に参入
居酒屋→ 介護→ 食事宅配
介護大手4社 ニチイ学館(在宅系)
ツクイ(在宅系)
セントケア(在宅系)
メッセージ(施設系)
利用者の増加で業務効率向上 移動費用の減少を進めている
ベネッセは、子供の通信教育という国内事業がメインの企業だが一方で高齢者向けホームを展開。
海外向け通信教育の展開も進めている。大きな問題は児童数の減少から国内で通信講座の会員数減に直面。
生き残りのためには介護事業に事業シフトを大胆に進める必要があるのではないか。というのも少子高齢化で
ベネッセはそのマイナスの影響を最初に激しく受けることが想定できる。
事業セグメント
によると2013年3月期の構成比は、国内教育が56.4% 高齢者向けホームが16.4%
その後2014年3月期。本業の通信教育の不振はますます顕著になった。介護事業と海外教育事業は伸びているとのこと。
売上が4%増の4663億円。
純利益が前期比6%減の199億円。中国での通信講座授業が黒字化したとのこと。
ワタミも、本業の居酒屋で苦戦だが、本業の居酒屋より
介護事業や宅食(弁当宅配)に勢いがある。
介護事業生みの苦しみ 2009/04/152013年3月期の構成比率は52.4% 22.3% 25.2%である。
2014年3月期。ワタミは上場来初の赤字となった。不採算店60店の閉鎖に踏み切り特別損失が26億円。さらに赤字化したことで繰延税金資産の取り崩しの22億円がさらに最終赤字を膨らませた。最終損益49億円の赤字(前期は35億円の黒字)。
しかし労務環境の改善のためには、安易な事業規模拡大を抑制することは重要。居酒屋については業態が古くなっている。開拓した宅配弁当でも、肝心の食事に特徴がない。そのため最初のお試しのあとのリピーターを捕まえきれていない。配送のパートの待遇が悪くそれがサービスの質の低下につながっている。といった指摘がある。いずれについても労働環境への批判からワタミのブランド価値が低下(労働環境の悪さが問題を連鎖させる)。それがほかのビジネスの拡大にマイナスに相互作用している。
ワタミの反転策の迷走 2014/12/30
介護事業者には異業種からの参入が目立っている
市進HD(市進ケアサービス デイサービス事業を2013年7月開始 順次拡大予定)
オリックス・リビング
セコム
ツクイ:在宅介護が主力
ニチイ学館:在宅介護が主力 売上の3割が訪問介護 介護最大手
ベネッセホールディングス(ベネッセスタイルケア 2012年9月 サービス付き高齢者住宅事業に参入)
メッセージ(介護事業専業)
ワタミ(介護事業が営業利益の6割)
学研ココファン
日本介護福祉グループ
業者団体 全国有料老人ホーム協会 高齢者住宅経営者連絡協議会
消費者機構日本 シニアライフ情報センター
訪問介護専業の利益率は5%程度で低い
施設経営を行わない事業の利益率は低く 経営の安定には課題がある。経営規模の拡大、施設経営の兼営が
事業の安定のためには必要。・・・小規模事業者の淘汰がすすむのではないか。
ジャパンケアサービス
やさしい手
セントケアホールディングス
ユニマットそよ風
介護職員の不足
介護の現場では仕事の厳しさの割に報酬がひくいことが問題になっている
しかし介護は人力に依存する側面があり雇用の場として今後も活用するべき
外国人を含む専任職員は資格制度である程度の収入を保証する一方
高齢者の活用(資格の不要な付添 掃除などに活用する)
介護ロボット 介護職員の負担軽減 が考えられる
国はなお不足している老人ホームを抑制する方向
老人ホーム(稼働率7割で黒字が出るとのこと 入居金を数年かけて売上に計上できる 利益率1割強)
2012年4月施行 改正老人福祉法 90日ルールの法制化 初期償却をめぐりなお議論あり。
この入居金で新規施設建設をしてきたので 新規建設を抑える側面・・・在宅介護の方が国の負担が小さい
との判断があるようだ。
国の介護保険費用は8兆円を超えており抑制が課題になっている
2012年度で8兆9000億円 前年度比7%増加
2012年4月 介護報酬見直し 引き下げ
(デイサービス、訪問介護などの単価引き下げられた)
見直しは3年に一度 利用者負担が1割 9割を自治体負担(税金+介護保険料)
訪問介護で2割 通所で1割減額
しかし業者側は利用時間の延長で売上確保しているとのこと
また新規開設施設を減らすことで運営費圧縮
介護報酬を使ったサービス 制度変更リスクがある
介護保険外サービスの充実強化が重要に
開始されたサービス付き高齢者向け住宅は規制が緩く問題
サービス付き高齢者向け住宅 2011年1月から登録始まる
介護度に関係なく入居できる
基準は日中の介護職員の配置 ハード面での配慮など サービス内容の格差 要介護度の重い人の入居が多いことが問題
同様の問題はグループホームについてもしばしば指摘されている。たとえば防火設備が小規模を理由に義務化されていないなど。
ここでは大規模施設(運営を効率化できる)の中に 小規模のメリット(ケアが行き届きやすい)を生かせないかを考える。たとえば
大規模施設の中を小規模に区割りするなどの工夫によって、両者の良いところを備えた施設が必要ではないか。
経済成長と高齢化 いずれでも伸びる ユニチャーム
紙おむつ市場 2011年 大人用と子供用 ほぼ1400億円ずつ 2012年に大人用が子供用上回る
なおユニチャームのおむつ市場での国内シェアは子供用で4割 大人用では5割。
ユニチャームは 人口の伸びが著しい アジア諸国での高いシェアで知られる。アジア諸国の
経済成長が市場の拡大につながっている。生理用品で1000ドル オムツで3000ドルが普及拡大の目安
とされる一人当たりGDP(2010年)について、インドが1371、インドネシアが2974、中国が4382、それぞれの
2011年末時点の予想成長率(2012年実質 予想値)は、7.0、6.3、8.4各%であった。BOPビジネスの議論では
年間3000ドル未満で暮らす層をBOP(bottom of pyramid; base of pyramid)と定義している。40億人、世界人口の6割とも(47億人 7割とも)。現在の市場規模は5兆ドル400兆円。2011年以降BRICSに関して減速が目立ち成長率 株価上昇率で減速(2012夏インドで大停電 中国で大洪水 重慶で都市機能マヒ)、リスク分散の動きが広がった(BRICSの株は2002から2007にかけて伸びたが、その後停滞している 背景先進国資金の流出 資金は東南アジアへ)。
特に中国。賃金上昇。中国需要の長期停滞。尖閣に代表される政治リスク。→チャイナプラスワン(進出先ヲアジア全体に分散)。中国の輸出攻勢(人件費上昇で輸出競争力低下の指摘 中進国のワナ 一人当たり5000-10000ドル程度に到達した後停滞することをいう 保護主義に陥る 排他的になる 既得権益守るなどの悪循環に陥ることが原因とされる)⇒工業立国のため日本の投資を新興国が歓迎。
一つはASEAN諸国である(1967年にインドネシア(度重なるストやデモ 2012最低賃金引き上げ 成長率6%台)、マレーシア(国家歳入の3割を国営石油会社ペトロナスからの税収・配当金が支える)、フィリピン、シンガポール、タイ(2011大洪水で被害 カンボジア人の不法就労問題 2012最低賃金の引き上げ)の5ケ国で発足 本部ジャカルタ その後ブルネイ、ベトナム(中国による南シナ海での石油掘削で中国と対立)、ラオス、ミヤンマー、カンボジア(ベトナムと国境をめぐって対立)が加わり10ケ国 1986年フィリピンでマルkス政権 1998年インドネシアでスハルト政権崩壊、ミヤンマーは2010年以降民主化政策進める ASEAN全体では6億人 これに対して中国13億人(バブル懸念から金融引き締め) インド12億人(2050年に17億人で中国を抜く見込み)に ブラジル(物価上昇と内需不振に直面 2014サッカーワールドカップ開催 2016リオデジャネイロ五輪)1.8億人 ロシア(総輸出額の3分の2を石油と天然ガスに依存 2014年ソチ冬季五輪 2018年サッカーワールドカップ開催)1.4億人 なおインドネシアの人口は2.4億人で世界4位の人口大国(失業率6%台 2050年に2.9億人) フィリピンは9500万人(失業率7%) トルコ7300万人)
GrowthMarket(ブラジル 中国 インド、ロシア メキシコ 韓国 インドネシア トルコ)という言い方もある(ジムオニール 2011)。
ネクスト11(イラン エジプト ナイジェリア パキスタン バングラデシュ フィリピン ベトナム)(ジムオニール 2006)
VIP(新たな成長国 ベトナム8784万人 インドネシア フィリピン)
後発3ケ国CLM(カンボジア1340万人 ラオス639万人 ミヤンマー6062万人)とタイ、ベトナムを加えて大メコン経済圏⇒インドネシアとならぶ人口2億4000万の経済圏 大陸ASEAN(タイ ベトナム カンボジア ラオス ミヤンマー) 海洋組(シンガポール ブルネイ マレーシア フィリピン インドネシア) 海洋組が政情安定で先行⇒開発独裁 大陸の成長余地大きい
消費の担い手は中間層とされる
もう一つは人口10億のアフリカを加えてBRICAという言い方もあるがアフリカである(ジムオニール)。アフリカの人口は2050年までに2倍の20億人(22億人)になる。過去10年そしてこれからも5%強の成長率。サハラ砂漠以南:サブサハラ(北アフリカガアラブ系に対し黒人が多くブラックアフリカとも 人口でアフリカの8割以上 資源が豊富 現在は世界のGDPの2%程度 若年人口画多い 今後の消費市場として注目 ナイジェリア1億7000万人) (エジプト 人口8000万人 東芝ブランド浸透)。
ASEANのなかでも主要国ASEAN5(インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム)のGDP規模は2014年にNIES(韓国 台湾 シンガポール、香港)の規模を抜いたとされる。
高いシェアが、高い利益率につながっている。ユニチャームは1990年台半ばに中国トインドネシアに進出。2011年にはベトナム、2013年にはミヤンマーで同業を買収。市場シェアは中国ではP&Gが30%以上でユニチャームが20%以下。インドネシアでは8割以上、ミヤンマーで5割超など、アジアを中心に浸透。2013年3月期には海外売上高がほぼ半分を占めるまでになったが、その比率を早期に8割程度にまで高める野心的目標を掲げている(2014年4-6月期で海外売上高は7割を超えた その多くはアジア)。インドネシアとタイで6割、ベトナムで4割 臺灣で3割。インドや中国でも1割以上のシェアがありシェア拡大中である(インドや中国では現地法人に商品開発やマーケテイング機能を移管するとのこと2014年)。競合は米P&Gや米キンバリーとのこと。中国では1位はP&G 2位がユチャーム 3位にキンバリー。都市部を中心にキンバリーが高級品で拡大中。内陸部は低価格帯が中心。インドでは2014年に入ってから1位のキンバリー(ブランドハギーズ)抜いたとされる。ところでユニチャームは、株主への配分が厚い企業として知られていたが(2001年頃より純利益の2割を配当 3割を自社株買い)、こうしたアジア市場の成長を前に自社株買いの部分を設備投資に優先して振り向けるように判断を変えたとされる(2014年3月期から)。2014年3月期まで8期連続の過去最高益更新。
かさばるため輸送費の高いオムツは各地に生産工場を設けて早期に供給体制を構築することが不可欠。
やや機械的な判断で厚すぎたともいえる株主配分を成長投資に向ける転換を経営判断として歓迎したい。
このように人口の年齢構成の違ういずれの地域でも成功した商品(生理用品 オムツさらにペット用品)をもつユニチャームという企業は、強いといえよう。国内の大人用紙おむつ市場は2012年で1400億円近いがそこでユニチャームのシェアは5割をこえている(主力ブランドライフリー)とのこと(2012年11月)。ベビー用(主力ブランドムーニー、マミーポコなど ムーニーは高価格帯とのこと。標準品から高機能品に移ることで利益率も高まる。高価格へのシフトは利益率の改善にも有利に働く。なお競合の花王のブランドは「メリーズ」)に比べてシェア率が高い。大人用は尿モレパッドなど軽失禁向け商品が好調とのこと。
これまでの各国の経済発展のルールからすると
経済発展がある段階になると出生率が低下、生産年齢人口が拡大する「人口ボーナス」の時期に入り
社会福祉負担は低下し内需が拡大する。そのあと高齢化が進む「人口オーナス」の時期に入ると
社会福祉負担が増えて内需が縮小しやすい(高齢化したペットのためのおむつが次の注目事業とのこと)。
ユニチャームは、いずれの時期にも適応した商品をもっている。別の言い方でまとめると新興国で期待される経済成長、先進国で不可避な高齢化。
ユニチャームはいずれの要因でも、成長が期待される。2013年1月18日現在の時価総額は1兆26億円で花王との差を3000億円弱まで
詰めている。PERは31倍で、ファナック(26倍)やファーストリテイリング(29倍)といった高収益企業と肩を並べている(東証1部全体は18倍)。(日本経済新聞2013年1月19日による)
ユニチャームのほかにもう一社 大人用おむつの重要性に気付いていたのは大王製紙である。大王は2007年にP&Gから日本国内の大人用おむつ事業を買収した。大人用おむつは乳幼児用に比べて価格が約2.5倍で利益率も高いとのこと。大人用おむつはすでに売上高で乳幼児用を上回っているほか(2012年度推定は1200-1300億円)、今後も年6-10%の高成長が見込まれている。
中国への進出の成功例としてピジョンがある。中国の景気減速の中でも育児用品が堅調であることに支えられた。中国の哺乳瓶市場でシェア5割。
高齢化とボーモル効果そしてオーナス効果
original in May 6, 2013