Entrance for Studies in Finance

資産運用型ネットバンクの急伸

2ケタの伸びを示す資産運用型ネット銀行に注目
 2010-03 2012-03 2013-032013/2012
住信SBIネット銀行 11,938(75) 22,827(137) 26,910(165)  18%
大和ネクスト 14,328( 49) 22,107( 72)  54%
ソニー 15,100(79) 17,622( 89) 18,527( 92)   5%
イオン  6,371(142) 11,167(137) 12,201(306)   9%
楽天  6,962(346)  7,583(398)  8,362(425)  10%
ジャパンネット  4,438(212)  4,944(234)  5,087(246)   3%
セブン  1,295( 77)  3,722( 97)  3,946(107)   6%

注:資金量単位:億円 括弧内は口座数単位:万 最後の%は2012から2013年の資金量の増加率

資金量急増の背景としての銀証連携サービスの利便性 スウイープ機能
 大和ネクスト銀行―大和証券 ツインアカウント
 住信SBIネット銀行ーSBI証券 SBIハイブリッド預金 口座の半分は銀証連動口座 銀証連携でも先鞭
 楽天銀行―楽天証券 マネーブリッジ 201104導入
 ソニー銀行ーソニーバンク証券 資金スイープサービス
 なお住信SBIネット銀行とジャパンネクスト銀行はFXの取引手数料を無料化している。ソニー銀行では外貨預金と外貨MMFとFX取引の口座間を手数料なしで資金移動できる。 
ネット銀行。資産運用型。決済型。とに分けられるが資産運用型が急速に残高を増やしている。

ネットバンキング 残高の急増の反面 不正送金被害が多発している まず金融機関名でメールを送付。ウイルスに感染させてニセサイトを表示。ニセサイトに誘導 パスワードを盗み取る手口(フィッシング)。不正防止策としてトークン(1分ごとにパスワードが変わる仕組み)と呼ばれる専用端末を配る企業(ジャパンネット銀行では2006年に導入 全利用者に配布 ソニー銀行では2012年7月に導入)もある。

ネット銀行はいわゆる新しい銀行(新形態銀行)の一角。コンビニATMのセブン銀行に続き、資産運用型ネット銀行の躍進が脚光を浴びる可能性は高い

2013/03資金量預貸率開業年月
住信SBIネット銀行26,91042%開業2007-09*
大和ネクスト銀行22,107 4%開業2011-04**
ソニー銀行18,57452%開業2001-06***
イオン銀行12,20158%開業2007-10****
楽天銀行 8,36224%開業2001-07*****
ジャパンネット銀行 5,087 5%開業2000-10******
セブン銀行 3,946 1%開業2001-05*******

 資料:金融財政事情2013-07-08, 46-47

*住信SBIネクスト 住宅ローン カードローン推進 社債増やし国債減らす ネット専業銀行 ATMの利便性の高さ 住宅ローン(団体信用保険を拡充 保険料は銀行が負担)を借りている顧客のカードローン金利を優遇 系列のSBI証券と連携(証券口座との資金移動が即座にできる)。FX取引でも。資金増加急速。外貨預金の為替手数料の安さ 金利で評価。
**大和ネクスト銀行  債券売買益(国債運用 リスク管理を強化)で稼ぐ 大和証券の対面営業を活用 大和証券の顧客に決済用口座として活用させる ネット銀行 預金業務に特化 金利を高く設定 MRFのシステム運用維持に多額の費用が掛かる点を解消 管理コストの削減につなげる。背景には三井住友銀行との法人分野での合弁解消(2009年9月決定)も影響か。2011年5月13日開業。急速な資金増加⇔大和証券の営業力 富裕層を獲得
***ソニー銀行  住宅ローン推進 外貨での運用調達比較的多い ネット専業銀行 外貨預金のシェア高い(品揃えがよい レートは市場と連動する価格を常に表示) 住宅ローン(低金利 来店不要 固定・変動の金利の切り替え容易 繰り上げ返済無料化)などの特色 家計簿機能。個人向け顧客満足度評価で高い評価 住宅ローン残高は上位地銀並みの1兆円弱。外貨預金4000億円弱はメガに次ぐ規模。
****イオン銀行  住宅ローン推進 イオンクレジット(カード)を統合 保証料↑ 2011年9月に経営破綻した日本新興銀行を預金保険機構から引き継いでいる。イオンとしては中小企業向け融資を展開する足がかりとする狙い。さらに2013年1月にイオン銀行とイオンクレジットサービスを持株会社方式で経営統合している(2013年1月にイオンクレが株式交換方式でイオン銀行を完全子会社化。その後4月にイオンクレを持株会社に改組。イオン銀行に個人ローンやカード発行業務を移管するとのこと)。セブンと異なりコンビニの店舗が限られたことが融資強化の背景。 
*****楽天銀行  国債500億円のほか売却 カードローン カード債権への投資増やす 楽天グループ 24時間海外送金を受け付けている ポイント制度にも特徴 2010-0504 イーバンクから楽天銀行に改称
******ジャパンネット銀行 決済業務が主軸 運用で社債増やす  ネット専業銀行 
*******セブン銀行  ATM手数料(決済業務)が主軸 コンビニATMの領域を開拓者 全国1万8000台 24時間稼働のATM。2001-2010年の間に既存の銀行ATMの引き出しは年2億5000万件が2億円に減少。セブン銀行の利用はゼロから5億円へ。銀行では来店客数が減少。

付録 流通業界による銀行業への進出について(2009年4月の旧稿)
1.小売業界を取り巻く国内市場環境
 人口の減少もあり国内の小売市場は、売上高の縮小傾向という環境の中で収益力を改善する困難な課題に直面している。加えて2008年9月のリーマンショック以降、消費者の買い控え傾向が小売り市場を直撃している。
 1990年代初頭に10兆円(91年に9兆7000億円)近くあった国内百貨店売上高は2006年に約7兆8000億円、2007年には約7兆7000億円まで2兆円程度減少している。2008年通年では7兆3813億円で20年前の1987年(7兆4910億円)並み。1997年から11年連続の前年割れ。2008年にコンビニの売上高は7兆8000億円台なので百貨店売上高はコンビニに抜かれたことになる。
 他方スーパーの売上高も1996年度の17兆円近くをピークに減少。2006年度の売上は14兆円余りで3兆円の減少。これはほぼ1989年度の水準である。この間、店舗面積は増え続け、販売効率(面積あたり売上高)は低下した。コンビニはわずかに売上高が上昇しているとされるがその伸び率は次第に低下している(成長の鈍化)。
なおコンビニの店舗数は全国で2003年度末4万店(41,339)を超えているとされ(全国で5万店が限界とされ飽和状態ともいわれる)、市場規模は2003年度で7兆3202億円。しかし主要11社ベースの統計で2007年(既存店 主要11社ベース)の売り上げをみると、6兆8130億円でこれは8年連続減である。
 2007年3月にイオンがダイエー、丸紅と資本業務提携をすることが正式に決まった。これは年間売上で6兆1000億円を超える巨大流通Gの誕生である。総合スーパー業界は、セブンアイHD(セブンイレブン、イトーヨーカ堂、ミレニアムリテイリングなど売上は4兆8000億円を超える…三井物産と親密)とイオンG(イオン、マイカル、ミニストップ、ダイエー、グルメシシィなど)の2大グループ時代に入った。メーカーにとって価格交渉力(バイイングパワーbuying power)の強い巨大スーパーの出現は脅威。対抗上、メーカー側の再編が進むとの見方もある。
 ところでイオンのダイエーの再建への参加は、これまでダイエー 再建を主導してきた丸紅が、リストラ推進後も回復が遅い総合スーパー業の丸抱えリスクを回避した結果である。また丸紅としては三菱商事と親密なイオンを販売先として確保する戦略的意図もあった。他方、イオンはダイエーのほかダイエー傘下の食品スーパーマルエツやダイエー系ファッションビルOPAの取り込みなど販売ルートの拡大が狙いであった。このイオンの意向もあり2007年に入るとそれまで予定されていたOPAの株売却が見送られた。
その後、イオンは2008年4月に発表した経営3ヵ年計画において、国内事業については大規模な店舗閉鎖・転換。海外事業への投資拡大を打ち出した。主力の総合スーパーの4分の1にあたる約100店を閉鎖もしくは業態転換。SCの出店もペースを半減して選別を強化すると国内投資を抑制する一方で、アジア各国への進出を強化する(50店あまり→190店体制)。SCの出店もペース(現在は年10ヶ所)を半減して選別を強化するとした。
 ほぼ同時にイオンの好敵手であるセブン&アイ(傘下の子会社には2003年6月にそごうと西武百貨店の経営統合で生まれたミレニアムリテイリングを含む)も3ヵ年の中期経営計画を発表した。ここでも主力のコンビニ(全国で1万2000店)で600店、また外食(デニーズなどで680店)で140店の不採算店の閉鎖が謳われた。これは外食が赤字に転落、コンビニも二期連続営業減益になるなどの落ち込みがみられるため。また利益率の高い自主企画品の強化を打ち出した。
 この両社の違いは、イオンの営業利益率の低下が18%減だったのに、セブン&アイの低下は2%減と微減だったことが反映している。イオンは海外事業の急拡大に復活をかけいる。イオンについては以下も参照。ファーストリテイリング、イオン、オンワード、良品計画

2.流通と金融 イオン銀行の開業
 イオンの今一つの戦略は銀行だ。2007年10月末にイオン銀行が開業した。4店舗から始め次第に増やす。5年以内に60店舗。原則無休で朝9時から夜9時まで営業。有人店舗で世界的にもめずらすい流通と金融の融合。また独自の電子マネーWAONの機能をイオン銀行のキャッシュカードに搭載した。2001年開業の後述するセブン銀行に続く動き。セブンがATMの出し入れを主体とするのに、イオン銀行はインストアで幅広い金融商品を扱うのが特色。背景にはコンビニ店舗数の差がある。セブン&アイは全国に1万2000店舗。これに対してイオン系はミニストップ1800店。コンビニATMではイオンに競争力ない。しかし中大型店ではイオンは1500店とセブン&アイのほぼ倍。これを活かそうとの戦略だ。
 他方セブンイレブンは2006年9月にまず独自飲料で98円飲料投入。2006年10月しょうゆなど調味料など30品目で値下げ。他社も追随。価格を下げる新たな戦略開始でコンビニ業界は体力勝負に入る。2007年4月から独自電子nanaco取扱い開始。入金処理のスピードアップが可能。加えて入会時の情報を利用して顧客の購買分析に使える。当面は導入に伴うコスト、情報システム投資が利益を圧迫。なおローソンも2008年以降7年ぶりに情報システム更新。投資額450-500億円。

イオン(大型SC・量販店・スーパー)(ーダイエー・マルエツ)-三菱商事-ローソン-日本郵政
セブン&アイ(コンビニ中心)(-ミレニアムリテイリング)-三井物産

 なおコンビニは収納代行ですでに銀行の機能を上回ろうとしている。1987年にセブンイレブンが東京電力の電力料金を受けたのが始め。2005年 セブンイレブンだけで330社。予想扱い額2兆円以上、取扱い件数2億3千万。ローソンが1兆1000億円、1億3000万件。毎年2割前後伸びている。
 セブン銀行(01/04設立。ATM手数料を収益源とする独自のビジネスモデル。リスク資産を取り扱わないことで規模の拡大とともに安定した収益の伸びなど有利性発揮。04/03期に単年度黒字達成。05アイワイバンク銀行から社名変更。2008年2月末 ジャスダック取引所に上場)全国に1万2500台(07・10 2005/3に1万台超)。ATMの自社保有化。セブンはほとんどの店舗にATMを設置(他のコンビには5-7割)。独自のネットワークに強み(提携金融機関のネットワークに依存すると設置の自由度下がる)。2008年1月ジャスダックに上場。
 イーネット(ファミリーーマート、サンクスなど)、ローソンATMなどは既存銀行間ATMネットワークに依存。ファミリーマートは全国に7700台。このほかローソン、サークルKサンクスなど。コンビニATMは全国で2万4000台(06/6末)。ATM利用は無料化増える。ゆうちょ銀行。全国に2万6000台。セブンがゆうちょ銀行の最大のライバル。セブン銀行と提携して自行ATMを削減する地銀増える。1台の維持費。年間400-500万円。
 なお郵政とのコンビニのもう一つの対抗軸は、宅急便の扱い。ヤマト運輸とセブンイレブン、ファミリーマート(05/06)が組んだ他方では、ローソン(04/11 ヤマトとの提携を解消)やデイリーヤマザキなどは郵政公社と組んだ。コンビニ側の本音は両方扱いたいところであるが、それは郵政の側が認めなかった。
 店舗数の限られた銀行や地方銀行だけでなく、リストラを迫られている大手銀行の側でもコンビ二ATMを戦略的に活用する動きが広がっている。
 コンビニ業界ではこのほか店舗の差別化も課題。健康志向のナチュラルローソン。女性・中高年ねらい。セブンイレブンはドミナント戦略(一地域に集中出店 地域占有)。独自商品で差別化など。またファミリーマートは海外シフト。2008年度には店舗数で海外が多くなる予定。そして隠れた優良コンビニとしてJR東日本が展開するニューデイズが注目される。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in April 11, 2009.
Revised in August 19, 2013
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Financial Management」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事