Entrance for Studies in Finance

ギリシャ問題の再燃(2015年1月以降)

2015年1月22日 ECB欧州中央銀行は量的緩和政策の導入を決定 月600億ユーロ(8兆円)規模

   国債を中心とするユーロ建て債を月額600億ユーロ購入。問題は財政ファイナンスの議論そして南欧の国の国債の扱い。それでも踏み込むのはデフレ懸念(南欧の失業率 ロシアの景気悪化)。南方に傾斜は南欧救済批判+ECBの信用に悪影響。均等に配分。出資額に応じて配分では南欧に金が回らない。発行量に応じて購入。格付けの高い国債だけ購入 など

 期間は3月から来年2016年9月まで2%に近い物価上昇率の目標達成が見通せるまで 19ケ月合計は1兆ユーロ超える額
 ECBへの出資 比率に応じて各国国債を購入 重債務国国債は条件付き デフレ対策のための国債購入は1999年のユーロ誕生以降初めて
 ECB:迅速に動かないことに 国際的に批判があった 決定にはドイツや北欧の中央銀行総裁が抵抗したとされる。
 特にドイツ連銀はユーロの信用低下を懸念したとのこと  ヨーロッパではドイツは好況 しかし南欧は景気が下振れ 加えて
  ウクライナ問題での ロシア経済失速 はユーロ経済に重荷になっている
 他方でウクライナ経済も深刻 ウクライナ経済は破たん寸前とされる ウクライナ ロシアともインフレがひどくなっている。ロシアがクリミア半島の自国への編入を決めたのは2014年3月。以来 米国とEUによる経済制裁でロシア経済は落ち込み、ルーブルの低迷が続く。ロシアがロシアにとって、防波堤といえるウクライナにおける親欧米政権に警戒的であることをEUは理解してよかった。結果としてロシア EUともに引くことがむつかしくなっている。
  ロシアではルーブル価値が下がり 金利があがっている。中東イスラム問題も ユーロに近く懸念材料

2015年1月25日 ギリシャ総選挙で財政緊縮見直しを訴える急進左派圧勝 チプラス政権発足 ユーロ不安再燃

   失業率25%超え経済は長期低迷状態
  チプラス氏 急進左派連合党首 ユーロ圏 IMFに財政緊縮策撤回 債務削減求める が首相に
  バロファキス 英エセックス大学で学位 テキサス アテネで教鞭 知名度高い経済学者が財務相に就任

    急進左派は選挙公約で 解雇した公務員の復職、国有企業民営化計画の凍結、最低賃金の751ユーロへの回復(現在586ユーロから)、月700ユーロ以下の低額年金者へのクリスマス一時金支給の復活 固定資産税の廃止など を掲げていた。

2015年2月4日 ECB ギリシャ国債を担保とした資金供給の特例廃止 このあとギリシャで銀行からの預金流出進む
2015年2月20日 財務相会議 72億ユーロの支援融資実行は留保 2月末で期限切れとなる金融支援の4ケ月延長(6月末まで)で合意

            ギリシャ 課税強化案 民営化案+債務カット案 示す

           4月末までに詳細な財政改革案の提出+EUの承認を条件

  2015年2月 ユーロ圏消費者物価指数前年同月比0.3%下落(1月は0.6%下落 2014年12月は0.2%下落 マイナス転落は2009年10月以来5年2ケ月ぶり 2014年11月はプラス0.3%) デフレ懸念続く

2月4日 ECB ギリシャ国債を担保に資金を供給する特例措置の廃止を決定
2月6日 S&P ギリシャ国債の格付けを シングルBマイナスに引き下げ
2月9日ー10日 G20財務相中央銀行総裁会議(イスタンブール)
2月11日 ユーロ圏臨時財務相会議 ギリシャ支援で合意に至らず
2月19日 ギリシャ政府が2月末が期限になっている融資の延長を申請
2月20日 ユーロ圏財務相会議 ギリシャの構造改革を条件に2月期限の金融支援の4ケ月延長決める 改革リストの23日提出が条件

           ↓

ECB欧州中央銀行 量的緩和政策開始(2015年3月9日開始を発表)

ギリシャ 2-3月歳出抑制  自治体の余剰金を中央銀行に移管 交渉延長に備えた模様
 
ユーロ安進む(ユーロに対する不安から 世界の外貨準備はユーロからドルへ 一部の国は人民元の比重を高めている)

3月IMFへ15億ユーロ返済

3月19日ー20日 EU首脳会議(ブリュッセル)
4月5日 バロファキスーラガルド ワシントンで会談 9日のIMFへの返済を確約
4月8日 14日に備えた入札実際
4月9日 IMFに対する4億5000万ユーロ返済期限 (支払われたとのこと)
 ギリシャの銀行の預金流出(1-2月で全体の1割は流出 背景:景気低迷による不良債権の増加 ユーロ圏からの離脱への不安) ギリシャ中央銀行が資金繰り支援
4月14日17日 短期国債の償還 欧州中央銀行などが保有 14日に償還10億ユーロ 利払い3億ユーロ

4月20日 地方政府資金の中央政府への強制移管命令出される

4月24日 EU財務相会議(ラトビアの首都リガ) ギリシャ バルファキス財務相 手持ち資金 公営企業民営化の手順など財政改革案の詳細示さず ギリシャへ批判集中  ギリシャ政府は 課税逃れ対策 テレビ電波使用権課税(テレビCMや電波使用権への課税)など 年金の一律カット 労働市場改革入れない対策まとめるが EU諸国はその効果を疑問視している。また債務削減には応じない方針
5月11日 IMF向け債務7億5000万ユーロ支払う(うち6億6000万ユーロはIMFに預けていた緊急準備金取り崩しによる)
5月11日 ユーロ圏財務相会議(ブリュッセル) ギリシャへの支援再開見送る
5月末 年金支給と公務員給与の支払いで25億ユーロ必要

6月1日夜 ギリシャ側が財政構造改革の新提案をEUなどに提出。EU側も改革案提示(低額年金受給者への補助金廃止 年金支出額をGDP比で1%減 現在はGDP比で約18% 年金削減の代替案としては軍事費削減 GDP比で2%上回る 医療費の国民負担引き上げ 付加価値税引き上げなど求める 現在の付加価値税制度が複雑で税収漏れを生んでいることも問題視 引上げ簡素化でGDP比で1%増収 電気代の税率を13%から23%へ引き上げなど…軍警察で尚50歳代で満額受給できる 死亡した軍OBの娘が未婚の場合 年金受給権の相続認めるなどの特権残る⇔過去5年で年金受給額は平均で4割近く減少) ベルリンに債権団側が集まり協議するが結論得られず(ギリシャ側は年金について0.04%減少しか応じなかった)

6月3日 チプラス首相とユンケル欧州委員長が会談

6月4日夜 チプラス首相はドイツ メルケルに EU側改革案を交渉のベースになりえないと伝言
6月 IMFへ資金返済 3億ユーロ(5日) 3億(12日) 6億(16日) 3億(19日) 1本化 月末(30日)に変更して先送り(6月4日IMFに通知 6月18日にラガルド専務理事は猶予期間はないと明言)

6月15日 ギリシャ国債利回り三年債で29%台後半(2014年10月には5%以下だった)まで上昇

6月18日 ユーロ財務相会議

6月19日 ECB ギリシャの銀行に対する緊急支援枠を859億ユーロに引き上げ(17億5000万上積み) 2月以降低利融資は打ち切り 緊急支援ガギリシャの銀行の生命線

6月24日 財務相会議 合意できず閉会

6月25日―26日 EU首脳会議

6月26日 メルケルとオランドが年金改革や税率引き上げなど財政再建案と引き換えに支援期間を6月末から11月まで延長+総額155億ユーロを4回にわけて融資する提案。ギリシャ国債3年物20%近辺

6月27日夜 チプラス首相 財政再建案を受け入れをめぐり国民投票の実施を表明

6月28日 ECB ギリシャに対する金融支援上限額(900億ユーロ)の現状維持決定

6月29日(月)より 銀行休業(7月6日まで) アテネ証券取引所は銀行休業中は取引停止へ。預金引き出しに上限規制(1日60ユーロ)など資本規制導入(28日夜発表)。フィッチはギリシャの4大銀行格付けをRD(一部不履行に引き下げ)

6月30日 EUなど債権団による第2次金融支援(72億ユーロ)の終了 ギリシャはIMFに対する15億ユーロあまりを返済せず、月末の年金を支払った。ギリシャは返済期限の延長を申し入れた、IMFは、新規融資を含め同国への追加金融支援を全面的に停止した。先進国で返済延滞の初めてノケース。 6月30日 EUなどによる金融支援プログラム72億ユーロが受け取れないまま失効。(ECBがELA緊急流動性支援を打ち切ると大混乱になるおそれ あるいはギリシャ国債の担保価値引き下げ) ギリシャ国債3年物37%台

7月1日 ECB理事会 ギリシャ向け緊急流動性支援ELA 1日あたり約900億ユーロに据え置く決定。

7月2日 IMFの報告書はギリシャは債務免除が必要な状態とする報告書まとめる

7月5日 EUが示した財政改革案受け入れの是非を問う国民投票 6割超が財政緊縮策に反対。

7月10日 ギリシャの預金保険基金残高30億ユーロ程度 預金残高の2-3%しか保護できない状態。四大銀行の不良債権比率h38-39%。 

7月10日 短期国債20億ユーロの償還

7月11日 ギリシャ議会が財政改革案(VATの引き上げや年金給付抑制など)を承認

7月11日夜 ユーロ圏財務相会議(サパン仏財務相が債務削減は応じられないと述べる。返済期限の延長や金利の減免など)

7月13日 ユーロ圏首脳会議 財政改革法制化を条件に3年で820億ユーロの金融支援 最短で7月末にESM発動し金融支援開始 公営企業資産(500億ユーロ相当)を欧州連合管理下の投資基金に移管する(1990年東西統一後 旧東ドイツの国営企業の資産を信託公社と呼ばれる基金に集約して売り払った) これを債務返済や銀行への資本注入に活用する ESMの活用についてドイツなどでは議会の承認手続き必要 債務の削減はせず返済期間の延長などを検討

7月14日円建て債券117億円が償還期限()管理事務 みずほ銀行 

7月16日 ECBはギリシャの銀行への資金供給の増額を決める。ギリシャ政府は銀行の店舗営業の20日からの(3週間ぶりの再開・・・6月29日から休業)再開を発表。各国の国債を担保とする金融流動性支援を900億ユーロから909億ユーロに。

7月16日未明 ギリシャ議会 EUが金融支援の条件とした財政改革法案(付加価値税の引き上げ13⇒26% 離島の軽減税率廃止 年金の支給年齢引き上げなど)を可決。229賛成 反対64 白票6 欠席1

7月20日 ECBなどが保有するギリシャ国債35億ユーロの償還(ECB保有) ⇒ECBによる支援打ち切りに発展か

8月20日 同32億ユーロの償還

以下は2014年11月から12月の展開

ギリシャでは次期大統領の選出を巡って急進左派連合が勢いを増している(緊縮財政が高失業率と景気後退を招いたとして緊縮政策の継続には高い不満)。金利減免を求めて来年7月の償還財源を確保するほか最低賃金引き上げ、貧困層支援計画、債務者の負担軽減などをか掲げる。背景には2013年末からアイルランド、スペイン、ポルトガルが相次ぎ支援から脱却して国債を発行して独力で資金調達を始めたことがある。そしてギリシャも2014年4月に国債再発行にこぎつけた。しかし大統領選で急進左派連合が勝利すると、ギリシャは再び国際的な波乱要因となりそうだ(9月)。一時5%台まで下がっていたギリシャ国債金利は急上昇し8%台へ(12月)。

もちろんウクライナ情勢も影響している。ロシアのプーチン大統領は東欧経由で欧州にロシア産原油を輸出するサウスストリーム計画(ウクライナを迂回ブルガリアを経由して東欧にガスを供給するパイプライン)の中止を表明(12月1日)。EUとの緊張を反映したもの。同時にトルコとのエネルギー関係強化方針を示した。EUとしてはロシアへの対応そして中東欧へのガス供給が課題となる緊張が続いている。このような緊張のなかでシェールガス革命もあって国際的にエネルギー価格の低下(原油生産が世界的に過剰)が生じている。南欧を中心に失業が深刻で、企業の設備投資は抑制され、原油安も加わって、インフレ率は低い。欧州の債券市場では金融緩和圧力から長期金利が低下している(2014年1月から12月まで低下傾向)。急激な原油安が物価の下落をもたらしている(消費者物価上昇率は2011年頃3%近くをpeakに2012年から2014年にかけて下方トレンド続く)。12月にもユーロ圏のインフレ率がマイナスに転じるおそれがある(8月から9月前年同月比0.3%まで縮小)。ユーロ周辺諸国でも物価低迷が続く。失業率は2013年のユーロ圏全体では12%近くまで上昇。そこからは改善されたが依然として11.5%前後の高い水準にある(11%台 スペインギリシャでは20%超 また若年層は20%超)。
産油国通貨の中でもロシアルーブルが大きく減価。11月7日一時48ルーブル台まで下落(年初32ルーブル台から50%下落)。11月10日ドルとユーロからなるバスケット制廃止し動相場制への移行。45ルーブルまで買戻し。カナダ、ノルウェーについては買戻しの動き。しかし国内問題抱えるロシアルーブル、メキシコペソは買戻しの動きに乏しい。12月1日一時1ルーブル53ドル台前半。資源価格の低下に経済制裁の影響も加わったロシアは大きく値下がりした。これらの国では通貨下落により輸入商品の価格が上昇、インフレ圧力が高まるリスクがある(ロシア ブラジル 南アフリカなど)。また通貨下落が債務負担(海外からの投融資でインフラ整備進める)を重くするリスクもある。12月16日中銀政策金利を10.5%から17%に引き上げ。一時1㌦80ルーブルに暴落。
欧州では財政に負担を与えることを嫌うことから、銀行の破たんに際して公的資金に慎重である。だからこそ債権者にも負担を求めるベイルインの議論が欧州で行われたといえる。しかし公的資金への慎重さは不良債権処理に遅れとなり、銀行の正常化に遅れている(金融システムが正常化しない 銀行が不良債権を抱えた状態 不良債権比率の上昇)。それが欧州の景気回復を妨げている、遅らせているという議論がある。ECBは2014年6月 マイナス金利 ターゲット型資金供給TLTROを決定した。2014年9月には、追加的利下げを発表するとともに企業向け融資拡大を公約した銀行に低利の資金供給を始めた(あまり銀行側が応募しなかったとされる)。10月には資産担保証券など民間資産買い入れからなる追加緩和策を発表している。日米で行われたような量的緩和策にはドイツが強力に抵抗しているとのこと。
要するにユーロ圏では景気の停滞感が強まっている。失業率は11%台で高止まり。インフレ率が極めて低く、デフレ入りが懸念されている。障害がユーロ圏が自らに課している金融、財政ルールにとらわれて機動的な政策をとれないことにあることは外から見ていると明らかだ。なかでも量的緩和を逡巡する欧州中央銀行の対応は鈍い。政策金利は0.05%で下限、ECBに預金する際の金利をマイナス0.2%にしたこと、9月からのTLTROの導入。10月からの金融機関に融資を促すための資産担保証券やカバードボンド買い入れ。白川総裁時代の日本銀行をみているようだ。景気テコ入れが望まれるが、ドイツは財政規律を優先する。欧州経済の失速よりも自国を優先する姿勢が鮮明だ。問題はユーロ圏からの離脱を掲げる政党が各国で力をましていることだ。
2014年12月29日 Samaras首相によるDimas氏(元EC委員)を次期大統領とする提案は300票中180票が必要なところ168票の賛成票しか得られず、ギリシャ議会により拒否された。この結果、1月25日の総選挙が決まった。この選挙で急進左派連合が勝利した場合、ギリシャ問題が再び紛糾することが見込まれる。

ユーロ 1999年決済通貨として導入。2002年に紙幣が発行される。EU加盟28ケ国の中でユーロ圏19ケ国。ユーロ圏内 為替リスクなくお金が移動。利回りが高いギリシャ、イタリアに資金が移動。ドイツは輸出を伸ばしたが、債権国債務国の色分けが強まった。ひとたび資本流出が起きると不均衡が増幅される。


2015年1月25日ギリシャで議会選挙
Greece head to election
分類:Area Studies 

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