Entrance for Studies in Finance

影の銀行shadow banking

Shadow Banking 影の銀行

Hiroshi Fukumitsu

 伝統的な銀行traditional banking(あるいは公式の銀行official banking、現実の銀行real banking)と同様に、短期の流動性を債務として受け入れ、より長期で非流動的な案件に投資を行っているものの、銀行同様には規制されていない、隠れたhidden金融システムのことをshadow banking sytemと呼んでいる。またshadow banks(or shadowbanking system)は、これまでは銀行のように取り付けを防止するための、預金保険の保護や中央銀行による最後の貸し手機能による保護を受けていなかった。
 では保護はどうか?2007年から2008年にかけてサブプライム問題が全世界的に問題になるなか、金融システムの崩壊を防ぐために、shadow bankingに公的支援が与えられるケースがでてきた。伝統的銀行が規制と引き換えに与えられているシェルター(待避壕)をshadow bankingにまで拡張するのなら、銀行同様に規制するべきとRoubiniはフィナンシャルタイムズへの記事で議論した(2008年9月21日)。Nouriel Roubini,"The shadow banking system is unravelling", FT.com, Sept 21, 2008.  from roubini.com
 では規制すべきなのか。
Paddy Hirsh shadow banking system(marketplacevideo) posted in April 13, 2009.このYoutube上の説明(by Paddy Hirsch)はclear cutである。shadow banking の例として住宅ローンの証券化を挙げている。銀行システムに比べて規制されておらずno regulation、安全網safety netがない。その代わり伸縮性flexibilityがあって、市場のニーズの多くを満たしている。だからそこを規制することは間違いだとしている。
 近着のFRBNY論文はshadow bankingは民間ベースで安全性と流動性を供給していたが、トリプルAの格付けや担保に裏付けられたレポ取引といったものが、金融恐慌のなかで機能しなくなったことを指摘している。
 Krugman(プリンストン大学の国際経済学教授)は、ニューヨークタイムズに掲載したコラムで、伝統的な銀行のように受けていない資産担保証券などshadow banking sysytemが、伝統的な銀行に比べてより有利な条件を示すことで伸びてきたとした。Paul Krugman, "Partying like it's 1929" in NYT Opnion, May 21, 2008.
 Gillan Tett and Paul J Davies, Out of the shadows:How banking secret system broke down, FT.com, Dec.16, 2007.
Bill Gross "Beware our shadow banking system"CNN Forutne, November 28, 2007

 金融規制というと銀行規制を思い浮かべがち。しかしベアスターンズ、リーマンブラザースなど、2007年以降の今回の金融危機の引きがねを引いたのは、投資銀行だった。ベアは多数多額のレポ取引の中心にいた。その破綻は市場全体に波及する恐れがあった。あるいはAIGは何をしていたのか。CDS契約を大量に引き受けていたが、その引受が伝統的な金融システムを支えていた。伝統的な預金を扱う銀行の背後で、さまざまな金融機関が、shadow banking systemを構成していた。
 日本語文献として河村健吉さんの『影の銀行』中公新書, 2010年8月はそのものずばりだ。ここで河村さんはアメリカの資産運用会社PIMCOのPaul McCulleyが2007年に作った造語だというMcCulley自身の主張を引用している。影の銀行は、銀行のセーフティ・ネット[中央銀行や預金保険などのことか]にアクセスできないかわりに、銀行に対する規制を受けないもので、現実の銀行から短期の資金を調達している。また格付け機関から格付けを受けて投資家から[CP、リバースレポ、ABCPなどの方法で]獲得した。従来型の銀行は、影の銀行を最大限の利益をあげるために利用した(pp.167-169)。
 なおマカリーのいう銀行に対する規制とは、レバレッジ比率、破たんした場合に必要な支払い準備、貸出や投資の種類などである(p.169)。
 どういうものが影の銀行なのだろうか、河村さんが引用するマカリーはノンバンク、投資銀行、コンデュイット、SIV(投資ビークル)、ヘッジファンドなどを挙げている(p.168)。それからページを改めたところで河村さんは、ガイトナー(Timothy F.Geithner)財務長官(2009/1-)が、NY連銀総裁(2003/11-2009/1)のとき、parallel systemと呼んだものと同じであるとして、商業銀行系列のノンバンクと投資銀行系列のヘッジファンドがそれにあたるとしている(p.170)。
 規制を受けている銀行と「影の銀行」とは対立しているというよりは補完的。互いに相手を利用する関係にあった。
 SIVと預金金融機関との関係については、倉橋透さん小林正宏さん共著(2008年4月刊)につぎのような適切で詳しい説明がある。「SIVはそもそも、投資銀行・商業銀行などの金融機関が設立したもので、金融機関は自分で民間MBSやCDOに投資すればよさそうなものだが、預金金融機関の場合は、投資資産を増やせばそれに見合った自己資本を積み増ししなければならず、このため、オフバランスのSIVを設立し、これらのSIVがいわば別動部隊として、民間MBSやCDOに投資し、金融機関はそれらのSIVのエクイティに投資する、あるいはSIVの資金繰りが詰まった時に融資する融資枠を敷いておく、といったかたちでSIVに関与して収益をあげてきた。」倉橋透・小林正宏『サブプライム問題の正しい考え方』中公新書, 2008年4月, p.103.
 そして2007年に表面化したアメリカのサブプライム問題では、サブプライムローンの拡大がローンの証券化を通じて拡大した。その証券化でリスクの高い部分に投資することでアンカーとして支えたのがヘッジファンドであった。銀行は再証券商品であるCDOに投資したり、SIVやコンディイットを通じた間接保有、そしてこれらの簿外投資主体への流動性補完契約で証券化を支えていたというのは松田岳さんの指摘である。松田岳「住宅バブルをもたらした金融メカニズム」山口義行編『バブルリレー』岩波書店, 2009年2月, pp.65-95, esp.76-77.つまりサブプライム問題の背景には、影の銀行の問題があったということである。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in May 27, 2010
corrected and reposted in May 4, 2014


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