みぃちゃんの頭の中はおもちゃ箱

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川面の白い玉

2014年01月31日 22時27分00秒 | いのち
川の水面に丸い玉がいくつも浮いていた。都会を流れる、緑色と茶色と少し青が混ざった、できるだけ近寄らずに済ませたい液体の表面に、白っぽい丸い玉が20個ほども浮いていた。玉は、こちらに3個、あちらに5個と緩やかに群れているものもあれば、その群れと群れの間をつなぐように点々と連なるものもあり、全体が何となく一群となって、水面にしわが寄るほどの強い西風に吹かれて東に押され、川の流れにも運ばれて、なされるがままにゆっくりとゆっくりと下流へ漂っていた。

突然、その玉のひとつが玉の形を捨て、バタバタと音を立てた。2枚の翼が勢いよく散らした水滴は、元の玉の形の記憶をとどめたまま丸く膨らみ、緑色の水面の上に脱ぎ捨てられて消えた。

玉だと思っていたものは、鳥であった。しかし、鳥の姿を見せたのもその数秒だけで、翼をたたんでしまえば元の不思議な白い玉でしかなく、再びなされるがままに水面を漂うのであった。

やがて白い玉が3つ、くるりと反転した。周囲の水をまったく乱すことのない、なめらかな回転であった。白い玉は、山吹色の水かきを広げて2本の足を宙に突き出し、自身の身代わりとして丸い波紋を3つ4つ震わせて、緑色の液体の中に姿を消した。やはり彼らは鳥であった。水鳥であった。潜ると魚でも捕れるのだろうか。こんな汚い水の中に潜って平気なのだろうか。そもそも、生活廃水しか流れていないようなこの川に魚なんかいるのだろうか。

ほどなく浮上してきた彼らはたちまち白い玉に戻り、何ごともなかったかのように、強い西風が吹きすさぶ水面で漂流を再開した。相変わらず川がどちらに流れているかを気にするそぶりは見せず、ただただ流されているだけであった。

風に押され、川の流れに押されるままに、ゆっくりと漂い続ける白い玉たち。どこに行き着くか分からない川に乗っているが、この川がどこに行き着くかなんて考えてはいない。今その水面に浮かんでいたいから浮かんでいる。終着点まで行くつもりはないし、終着点まで行かないつもりもない。潜りたくなったら潜ればいい。飛びたくなったら飛べばいい。

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