林の中でピンクの花が目立つタニウツギ。外側のほうが紅色が濃く、花の先端では白に近くなる。林が燃えるようにみえるのでカジバナ(火事花)、シビトバナ(死人花)、ソウシキバナ(葬式花)と呼ばれたという。花にしてはいい迷惑の名付けである。
(2020-06 神奈川県 箱根)
タニウツギ(谷空木、学名:Weigela hortensis)はスイカズラ科タニウツギ属の落葉小高木で、田植えの時期に花が咲くので「田植え花」としても知られる。梅雨の時期に山道を通ると新緑の中で咲くピンクの花はひときわ映えて見えるので見つけやすい。
樹高は2-5mになる。樹皮は縦に裂け、新しい枝は赤みを帯び、無毛か2毛条がある。葉は長さ3-10mmの葉柄をもって対生し、葉身は長さ4-10cm、幅2-6cmになり、徒長枝につく葉はさらに大きくなる。形は卵形、長楕円形または倒卵形、先端は鋭先頭で尾状となり、基部は円形またはくさび形で、縁には鋸歯がある。
花期は5-6月。今年枝の先端か葉腋に散房花序をつけ、多数の花をつける。5裂する萼裂片は長さ4-7mm。花冠は淡紅色の漏斗状で、長さ2.5-3.5cm、径2cmになり、先端は放射相称に5裂する。花冠の内側より外側が色が濃く、開花しているものより蕾のほうが濃い。雄蕊は5本あり、花柱はそれより長い。蒴果は長さ1.2-1.8cm、径2.5-3mmの細い筒状になり、種子は長さ1mmの楕円形になる。
分布と生育環境
日本特産。北海道の西側、本州の東北地方、北陸地方、山陰地方に分布し、日本海型気候の山地の谷沿いや斜面に多く見られる。雪崩が多発する急傾斜地ではブナ林などの高木林は成立しにく、本種などのしなやかな低木類の群落となることが多い。
利用等
花色が美しいため、古くから庭園などに鑑賞目的で植栽されることも多い。また、若芽を食料にしたり、タウエバナなどの農作の目安にされる異名がある一方、材木を葬儀の際に骨を拾う箸に利用したことや、花が燃えるように美しく、花の時季には辺り一面が山火事になったように見えることからかカジバナ(火事花)、シビトバナ(死人花)、ソウシキバナ(葬式花)などの異名があり、忌み嫌われている地方もある。