「おれ、蘭が好きなんだ」
そう、と返して、自然に笑みが毀れる。やっとこの子も人を愛することを覚えたのだ。そこに、と言うと、少し躊躇った後、すとんと腰掛けた。それで、どうして私に?そう語りかけると、やはりすこし躊躇った後、表情を崩す。
「蘭は、ヅラが好きなんだって」
その言葉を聞いて思わず声を洩らす。もう一度聞きなおしてもやはり同じ問いが返ってきた。そんなわけは、ないからだ。蘭のフルネームは桂蘭、そしてその兄である桂小太郎、2人は兄妹であり、好き合うことは例外だ。そんなはずはない、そう返すと、怪訝な顔で返ってきた。どうして?
「2人は兄妹だからだ。蘭の言っている好きと、お前の言っている好きは異なるんだよ」
「・・どういうふうに?」
「ふむ・・お前は、好んで食べる食べ物などがあるだろう」
そう言えば肯定の返事が返ってくる。すかさず、それが蘭の言う"好き"だ。と続けた。あまり納得はしていないようだったが、とりあえず頷いている。まあ、兄妹愛、とも呼ぶがな。そう呟けば眉間に皺が寄ったが、口を開くことだけはしなかった。
「お前の言う好きは・・そう、だな・・・愛、と呼ぶべきか」
「あい?」
「そう、愛だ」
にこり、と笑いかければ、いよいよ首を捻った。難しかったか、そう考えて簡潔に話す。とりあえず、自身を持て。蘭は兄として小太郎を慕っているだけだ。そう言えば、目を見開いたあとで、先生ありがとう、と叫んで騒がしく出て行った。
自身を持っていい、何故なら、三時間前蘭が同じことを言って来たのだから。
さあ、あの子が笑顔で帰るまで、あと何秒。
(20×3+10秒、約一分となります)
―――
(笑顔一分前)
バビロンまで何マイル?
このガキ(ガキ言うな
・・・・・子供は多分高杉とか銀とかそのあたり。
まあ蘭は俗に言う愛され主人公かもしれない。
真撰組のある方には恨まれてるんですがね(待
マザーグースのナーサリーライム。
バビロンまで何マイル?
20×3+10マイルです
ロウソクの灯が消えないうちに着けますか?
ええ、行って戻って来られます
あなたが軽やかに走ったなら
灯が消えないうちに、たどり着けますよ
火が消えるまでには、どうか笑顔で帰れますように。