近くの公園を早歩きする習慣が、1か月続いています。この酷暑でいつまで続くだろうと思っていたのですが。
毎日歩いていると、ひまわりの茎が日々たくましくなっていくのに気付きます。ひまわりは太陽に憧れるように伸びて、その憧れを成長の糧にしているかのようです。
俵万智さんの近著『生きる言葉』のなかに、こんなコラムが載っていました。
ある自閉症の男性が、「僕は賢くなる」と言い続けていたのだそうです。母親が、賢い人ってどういう人、と聞くと、彼はこう答えたと言います。
「笑顔である事。幸せである事。正直である事。誇りを持つ事。」と。
俵さんは、どれも「物知り」とか「判断力がある」とかの、外から当てたモノサシで測るのではなく、自分が立ち止まって点検したくなるような基準で、賢い人を描いていることを指摘します。笑顔は表情、幸せは感情、正直は人のありよう、誇りは自分自身を見つめる眼差し、に他なりません。
彼は身近な人のなかに賢さを感じており、それが母親だったのだろうと、俵さんは想像します。母親のように賢くなりたいと思って、みずからのうちに明確な基準を持ったのだろうと。
人はだれかの笑顔に癒され、正直なまなざしに背中を伸ばされ、誇り高く生きる姿に憧れながら、いつか、あの人のように生きようと思うようになります。そのとき、あの人だったらどうするだろうと、常に思い続けるのではないでしょうか。あの人が、みずからの基準になって、内側から自分を動かすのです。けっして、外側からなぞるのではなく。
生きるということは、いろいろなひとに憧れることでもあると思います。いろいろなひとの笑顔、幸せ、正直、誇りを自分のものにすることで、ひとはその人格の厚みを増すのだと思います。
太陽に憧れ、たくましく伸びるひまわりを見て、そんなことを考えました。