エテポンゲの独り言

残したい瑣末な話し

内向き社会(コクーニング)

2007年03月05日 | 社会

日興コーディアル証券の名前が消えるようです。かつて野村や大和と並んで四大証券と言われた名門が退場します。時代の急流をつくづく感じます。その原因が粉飾決算なのが悲しいですね。

この十年ほどは日本の戦後を支えた企業に凄まじい変化を与えました。最近では不二家の事件が耳新しいです。さらにサンヨー電気も粉飾を噂されています。また名古屋では大手ゼネコンの大林組が談合疑惑で揺れています。近々には自動車の名門、日産も経営不安の噂に上るかもしれません。

それにしても何十年前から指摘されている談合体質を改革できない土木業界は世間はもう見放すでしょう。またいずれは隠し切れない粉飾でその場を糊塗しようとする姿勢も見飽きました。

企業コンプライアンスが言われ始めてすでに十年以上は立ちます。地元の富山県でも運輸業界の談合を摘発した社員に対する不当な扱いがニュースになりました。その人も漸く定年を迎えたそうです。彼も企業内の常識と外の規範つまり法律との間で苦しんだ人でした。

つくづく思うのは組織の中と外の規範にズレがあることです。民間企業なら営利を求めるのは当然です。しかしその方法には制約があるのも当たり前です。それはその企業が社会の一員であり社会に所属する事で利潤を得ているのだから。

地方公務員の裏金問題にしてもその根本は同じです。全体に奉仕する事を旨とする公務員が自分たちや中央の役人の為に税金をくすめるのはやはり社会全体の利益に反します。しかしそれを告発する事は組織内に対する不利益になります。自分たちが美味い汁を吸えなくする人は組織内では反逆者の烙印を押されます。

ぬくぬくとした微温で包まれた集団の中にいる事は確かに心地よい事です。外でどれだけ寒風が吹いていても他所の出来事だから。光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」にもパラダイスを夢想させるシステムに未来人が依拠する姿が描かれています。外の現実を無視したコクーニングですね。

色々書いてきましたがこんな事はあくまで他人事と言える人は幸せです。私自身も外での嫌な事もPCの前で座ってると幾分和らぎますから、自分の内なる世界を持つ事は生きるうえでの一つの方便と思っています。けれどもそれが他人を傷つける事はやはり本意ではありません。

内の規範と外の規範の間の違いが大きくなりその差がドンドン開いて行くことがよくあります。カルトな宗教団体によく見られます。反社会的団体の殆どの特徴と言えるでしょう。暴力団や一部の政治結社などもそうですね。最近では朝鮮総連が有名です。その大元の隣国も当然ながら内向きの筆頭国でしょう。

相変らず日本のネット界に目を向けます。ネット右翼と言われる若者を中心とした書き込みを見ているとそれは内向きの代表と感じます。彼らの意見には日本国民が懐く不満を先鋭化させたものでしょう。しかしそのまま言い放っても外には伝わりません。

韓国や中国にもネット界の国粋主義者はいます。まあそんなレベルで遣り合ってるんなら問題は無いのですが。何処の国の若者も自分たちどうしには通じ合う理屈を言い合ってるわけです。その中の住人たちには耳障りの良い言葉が並んでいます。しかし外への発信にはならず、ましてやお互いの意思の疎通は永遠に不可能ですね。

自分の考えや意見を持つのは立派な事で素晴らしいと思います。けれどそれが独りよがりででは意味ありません。少なくとも他者に伝えようとする努力をするべきなんで、その為には接点の模索が必要になります。

他者と付合うと言う事は自分を主張する事ではない。全く反対で相手を理解する姿勢からじゃないと関係は結べません。案外な気もしますが自己主張の本家みたいな欧米の若者はこの事を良く知っています。私の知る外国の若者を見ているとつくづく感じます。そして彼らを私は尊敬します。