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◇ERP◇ 中堅企業向けERPパッケージ市場に統合・再編の波は押し寄せるのか

2006-06-11 12:31:41 | IT・視点


 今、中堅企業向けERPパッケージ市場に注目が集まっている。中堅企業といっても各社が想定している規模はバラバラであるが、まあ、年商50億―500億円が妥当なところではなかろうか。今後ERPパッケージ市場全体では年率7%程度の伸びが見込まれているが、中堅企業向けERPパッケージ市場は、これを上回ることが予想されている。これは、大手企業向け市場がそろそろ飽和し始めているのに対し、中堅企業向け市場はまだ飽和点に達していないことに加え、オフコンのリプレース、内部統制など新たな法体系への対応、これまで押さえ気味だったIT予算の復活、さらに、SOAや経営の可視化などの新技術の開発などの要因が絡み合って伸びが見込まれているため。ERPパッケージベンダー各社は、中堅市場向けの絶好の好機ととらえ、新製品の発売や販売体制の強化などに力を入れ始めている。ワールドワイドでシェア№1のSAPもSMB市場攻略躍起になっているが、日本市場では苦戦を免れない。これは、日本の市場には何十年と続いてきたオフコンの伝統があり、これを国産ベンダーがERPパッケージへの移行を図り、外資系の参入を防いでいる。マイクロソフトもERPパッケージ市場への参入を明らかにしているが、さすがに日本市場だけはマイクロソフトといえども成功の保証はない。新しい動きとして注目されるのが「GRANDITコンソーシアム」に代表されるERPパッケージの協業化だ。もし、この方式が成功するとERPパッケージ業界に統合・再編の嵐が巻き起こる可能性が出てくる。自民党の後継者選びではないが、第2位以下の何社かが団結して1位の座を危うくすることだってありうる。ここではERPパッケージ各社の最近の動向を紹介する。

 富士通は中堅企業向けERPパッケージ「GLOVIA smart」の販売を開始した。これは新技術「GLOVIA smart SOA」により、①相互接続可能な会計や人事・給与などの共通業務ソリューション②製造業・流通業などの業種特化ソリューション③ポータル・CRM構築ERPなどのフロント業務ソリューションを提供し、体系化したもの。これにより、ERPシステムを短期間・低コストで導入することが可能となる。さらに、システムの増改築が容易となるほか、経営の可視化も可能になる。同社の中堅企業向けERPパッケージ「GROVIA-C」は現在業界でトップシェアを誇っているが、同社では今後3年間で1000億円の売上げを見込んでいる。

 NECおよびNECソフトは、中堅企業向けERPパッケージ「EXPLANNERシリーズ」の新製品として「EXPLANNER/Ai」を開発し、販売を開始した。これはNECのシステム構築統合開発環境「SystemDirector Enterprise」を活用して、機能の追加・改変が容易にしたもの。NECでは今後3年間で800億円の売上げを目指している。開発・サポート面ではNECソフトに300人規模の「EXPLANNER事業部」を設立したほか、販売面ではNECグループで800人規模の営業体制を確立するなど、今後中堅企業向けERPパッケージ市場の本格的取り組みを開始している。なお「EXPLANNERシリーズ」は既に2万社以上の顧客をもっており、NECでは今後市場の成長率を上回る20%成長を目指し、中堅企業向けERPパッケージ事業を強化する方針。

 インフォベックおよび「GRANDITコンソーシアム」は、中堅企業向けERPパッケージ「GRANDIT」の導入顧客数が06年5月末時点で103社になったと発表した。03年10月に設立された「GRANDITコンソーシアム」は、ユーザー系SIヤー(インフォコムなど)に蓄積されたノウハウを持ち寄り日本企業に最適なERPパッケージを開発し、それをコンソーシアム会員10社が協力し販売、保守などに当るというユニークなビジネスモデルをベースに運営されている。事業の中核となっているインフォコムは、旧日商岩井システムと旧帝人システムテクノロジーが合併して設立されたSI企業であり、ユーザーの実態を熟知しているところに強みがある。06年10月には「GRANDIT」に内部統制機能をサポートし販売を開始することになっており、今後ともコンソーシアム会員の拡大を図りシェア向上を目指すことにしている。

 東芝情報機器は、自社のERPパッケージ「CAMPUSシリーズ」販売管理システムと、オービックビジネスコンサルタント(OBC)製ERPパッケージ「勘定奉行21シリーズ」との連携を強化するのをはじめ、NJKの表計算ソフト「DataNature/E ver.2」の標準装備、また、京葉システム(KSC)から「就業管理システム」を追加OEM導入を図るなど、3社と業務提携して中堅・中小企業向けERPパッケージ市場でのシェア拡大に取り組むことになった。「CAMPUSシリーズ」は中堅企業向け、一方「勘定奉行21シリーズ」は中小企業向けと、市場での棲み分けができるので業務提携が実現したのであろう。もし、この業務提携のビジネスモデルが成功を収めると、競合他社も同様な動きを見せる可能性があり、今後の展開が注目される。東芝情報機器では、今回の業務提携を含め年間450セットの販売を見込んでいる。 (erpdata)