2019/12/2
・アンネ・フランクの一家を支援したことで知られる、ミープ・ヒースが最後まで信念を貫こうとする話。
・戯曲が北海道戯曲賞の最終選考に残っているのは知っていたものの、『アンネの日記』の関連作品はすでに沢山あるので、最初は半信半疑。
・序盤は晩年の彼女が当時を回想する形式。
・少なくとも自分の知っている範囲で大きなアレンジはなく後半に繋がる種を巻きつつ史実の確認。
・竹江維子さんと小沼なつきさんがミープを演じる。
・誰かを救うことが別の誰かを見捨てることに繋がる。その正義感ゆえに彼女は疲弊していく。
・彼女は正義の人だけど、後年の自分たちはその結果を知っている。彼女はアンネの一家を守れない。
・それでも、彼女の人生は続く。お話の凄みを感じたのはそこから。
・平和にするのも難しいし平和を維持するのも難しい。
・彼女は正義を貫こうとしても、親友の危険思想を止めることすらできない。
・やっと終戦になったのに、早くも「戦前」とシンクロしている。そういう意味で、彼女の戦いは敗北続き。
・彼女の戦いは100歳で亡くなるまで続く。
・そして、同じ戦いは、同じ信念を持つ人たちによって、現在も世界中で続いている。もちろん日本でも。
・ただ、ミープさんがそうであったように、世の中から差別や戦争をなくすことはできない。いつもどこかで平和が破られている。
・できるのはあきらめないことを続けるだけ。
・本作がすごいのは、浅はかな「こうすればいい」ではなく、「私はいったい何と戦っているんだ」と何度も何度も「私」とやりとりしながら、その逡巡をそのまま舞台に上げているところ。わかりやすい解決策なんてない。
・だからアンネは沈黙している。
・映画の『主戦場』に近いテーマ。平和を維持する戦いは、いま平和な場所すべてが主戦場になる。
・本作を見てのんきに「ミープさんは偉いね」と言うだけなら、あのレイシスト夫婦でもやっていると気付いてゾッとする。弱さは言い訳にならない。
・物言わぬアンネは、自分たちのすぐ隣にもいる。
・それはともかく、ツイッターを見ていたら、打ち上げで、ゆるんだ感じのアンネ(役の鈴山あおいさん)の画像がアップされててなごむ。なんか、よかった。
(2019/11/30 18:00の回)
※パンフ行方不明のため、座・れら公式HPからの転載です。申し訳ありません…。
■出演
竹江維子
小沼なつき
工藤康司
西村知津子(劇団にれ)
町田誠也(劇団words of hearts)
信山E紘希
鈴山あおい(Studio MAZUL)
つくね
杉浦朋子
みきと
松永ヒサ子
齊藤雅彰(超級市場)
青坂章子(ゆうの会)
■脚本・演出:戸塚直人
■スタッフ
装置:高田久男(セットアップ)
照明:鈴木静悟
音響:西野輝明
衣装:佐々木青
制作:佐藤紫穂(ex.fiction)、竹内麻希子(CAPSULE)
小道具:中島朋子
ちらし:佐藤みきと
演出助手:神しのぶ
舞台監督:寺沢英幸
手話通訳:舞夢サポーターズ
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