時代が、人間が、「芳香」を求めていたのです。「アロマ」とはフランス語で「芳香」を意味します。逆に森に入った時に森林独特の香りを吸い込むと、爽快でいて穏やかな気分になります。まるで機械のシステムのように、そういう仕組みに人間はなっているのです。「テラピー」とは「療法」、「アロマテラピー」とは芳香療法のことです。身体が異変を起こせば精神も異変を起こし、精神に異変を起こせば身体もまた異変を起こすことは、既に臨床実験で確認されています。
エッセンシャルオイルとは花や葉、樹皮、根、樹脂など植物から抽出した素材で、100%天然成分からできています。アロマテラピーには精油と呼ばれるエッセンシャルオイルを使います。食生活が乱れている影響も大きいでしょう。アロマテラピーを応用させたエステティックサロンや美容法も普及し、アロマテラピーはヨーロッパから伝わりましたが、日本でもアロマテラピーはビジネスとしても成功しています。どんなに美味しい食事をいただいても、鼻に異常がある場合、おいしさを感じることができなくなります。「癒し」という言葉から今の時代のすべてが読み取れる、と言っても差し支えない程です。
現代社会のキーワードは「癒し」です。「癒し」を求めているのです。毎日完全に元気!という人はいません。ただ、良い香りを嗅ぐだけではなく、れっきとした療法なのです。視る、聴く、嗅ぐ、味わう、触る――人間の5感の中でも、嗅覚は非常に敏感な感覚です。現代社会では、誰もが少しだけ疲れているのです。
腐った食べ物を口に入れたわけでもないのに、腐臭など強烈な悪臭を嗅いだだけですぐに気分が悪くなります。食事は身体に直接影響を与えます。アロマは、そのアロマによって、身体と精神に及ぼす影響が異なります。アロマテラピーは香りで精神と肉体を癒すのです。過剰な情報、発展し過ぎたテクノロジー、離れすぎていたり近づき過ぎていたり、距離感覚のずれた人間関係、事実は小説奇なり、という言葉を突きつけられるような残虐な事件は相次いで起こり、私たちの感覚はゆっくりと麻痺し、まるでパニック映画のように現代社会がコマ送りで風景を進める中、感覚と身体のバランスは自分でも気づかない間に崩れています。時代にマッチしたアロマテラピーは日本でも急速に広まり、特に女性の間ではアロマテラピーを自宅で嗜むことは既に定着しています。