イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

氷のレクイエム

2014年11月05日 12時00分01秒 | 講談社

松本洋子

なかよしデラックス2月号掲載 単行本「だれかが見つめてる」収録

評判の母親っ子だった少年アンジー。病弱な母マデイラは湖で亡くなったらしいが、遺体は見つからず、湖畔にショールだけが残されていた。マデイラのお葬式から3ヶ月がたった。アンジーの父ウォーレンは秘書のクレアと再婚することをアンジーに話す。アンジーは父に反対するが、やがて父の再婚を受け入れる気になる。しかし、パーティーでアンジーはおかしな噂を耳にする。母が生きていた頃から父とクレアは愛し合っていて、クレアの連れ子の5歳になるニーナは、実は二人の娘だと。それが事実ならば、2人がマデイラを殺したのではないか?嘘にきまっていると飛び出すアンジー。いつの間にか、気がつくと母の亡くなった湖に来ていた。そこでアンジーは、凍りついた湖に母の遺体を見つける。そして、母の胸にはナイフが突き刺さっていた!普段は深い湖底に沈んだ死体だが、凍てついて透明度が増すとその姿を現すらしい。

アンジーは母の仇を討とうと復讐を決意する。居間からピアノの音がするので、クレアは弾いていたのはアンジーだと思い褒める。しかし、「この家でピアノを弾けるのは死んだママだけ」と、アンジーは言う。クレアはその発言に寒気を覚える。更には、ウォーレンと二人で撮った写真の入った写真たてをアンジーに壊されたクレアは自身はアンジーから嫌われているとウォーレンに訴える。何よりアンジーの容貌がマデイラに似ていることが、クレアを不気味がらせた。

ある日、アンジーの学校の担任からクレアは呼び出され、アンジーの描いた絵を見せられる。その絵には湖上に浮かぶアンジーの母マデイラの遺体が描かれ、胸にはナイフが刺さっていた。学校からクレアが戻って来ると娘のニーナが庭のブランコで遊んでいたが、ブランコの綱が切れ、ニーナはクレアの目の前で転落死する。クレアは「ブランコに細工をしてニーナを殺した」とアンジーを責めるが、ただの事故死とみなされた。ニーナのお葬式の後、クレアが疲れて眠っていると、夢の中でマデイラが目の前に現れる。恐怖で目を覚ますと、ベッドの横にはアンジーが立っていた。父に部屋に戻るよう言われたアンジーだが部屋には戻らず、廊下に潜む。そこで、クレアと父の会話を盗み聞きする。「あの子は知っているのよ。あたしたちがマデイラを殺したことを!」湖にマデイラを呼び出したクレアは、ウォーレンはお金目当てでマデイラと結婚し自分達の間に子供もいる、マデイラの病死を待っていたのだと告げる。しかし、いつまでも死なないマデイラに苛立ち、もう待つのは嫌になったとクレアは言い放つ。木陰からウォーレンが現れ、ナイフでマデイラを刺し殺す。

アンジーが復讐しようとしているとクレアは恐怖を感じ、自分達も殺されてしまうとウォーレンに訴える。アンジーを殺すか、そうでなければ遠い地の寄宿学校に送るように懇願する。ウォーレンはクレアの要求を聞き入れ、自分の三日間の出張の後、アンジーを寄宿学校に入れる手続きをすると約束する。

ウォーレンの出張中、クレアとアンジーは二人っきりになる。アンジーは自身で手を下さない。強盗が玄関のドアの前にいるとクレアに思い込ませ、父ウォーレンだと知りながら彼女に撃たせ、まず父親に対する復讐を果たす。自身が騙されたことを知りアンジーを詰るクレアに対し、母マデイラを殺した罪を突きつけ死ねと冷たく言い放つ。罪に塗れても幸福になりたかったウォーレンと愛娘ニーナを失い、生きる希望を失ったクレアは自殺した。アンジーの計画通りに。