イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

GENE[ゲーン](6) すべては愛のために

2007年03月31日 22時53分43秒 | 小説
 《GENE[ゲーン]》シリーズ完結巻(第9巻)『天使はうまれる』裏表紙イリの人生のすべては、ヤンアーチェとの愛――。想いを確かめあい、共に生きていこうと誓った二人。だが、真・天空帝国の王太子ラカが、イリを実験材料にすべく拉致してしまう。ラカの野望は、両性具有イリを使った不老不死の体だった!!ヤンアーチェは国王の責務を捨て、一人の男として、イリの救出に向かうが…。衝撃のドラマチック・ファンタジー、ついに完結!!”とある、あらすじを読めば分かりますが、イリのすべてはヤンアーチェとの愛であるように、ヤンアーチェ国王の責務を捨て、1人の男として己のすべてを擲って愛するイリを救出すべく地下迷宮に向かいました

 ただ、二形(両性具有)だから、とか、物語のラストで子を産み“母”になるから、とかというのを除いても、《GENE[ゲーン]》BL(ボーイズラヴ)というジャンルには当て嵌まらないように思います。何故かというと、イリ数え切れない数の情交を複数の相手(♂)と繰り返しましたが、第1巻『天使は裂かれる』の「3 バルト」“前庭(女性器)は華やかなれど、後庭(秘孔)は未だ手付かず。誰の手も入らぬ秘密の園であるな”(P.114)とあるように、在りし日のレイダー公も含め、殆どが花唇(陰唇)=女性器で…蕾(秘孔)=男性器たま~にだったようなので

 完結巻『天使はうまれる』の「3 帝国の崩壊」“国家間の大戦にならず、チャンシャンが巻き込まれずに済んだのは、王としては当然のことで、愛する者を無理やりに奪われた個人としての憎悪や憤怒は、また別のところにある。”(P.126)“話を聞いて想像していた以上に、暗く生気の途絶えた地下は嫌な場所だった。こんなところにイリが拉致されているのかと思うと、ヤンアーチェは胸が潰れるような心地がした。花の都、あの美しいチャンシャンの王都にあってさえ、イリはいつも暗い顔をしていた。俺を憎いと言いつづけていたあのイリが、愛していると言った。心の扉を開き、そこにたった一人、ヤンアーチェへの愛があるのだと示してくれた。ヤンアーチェはこたえたかった。体をつなげ、言葉を交わすだけでは足りないなにかを、イリと分けあいたかった。もしも愛を形で示すことができるなら、どんな形でも示してやりたい。寂しく微笑むばかりだったあの不器用な愛妾に、ヤンアーチェは自分のすべてを与えたかった。王としての自分はやれない。乱世の時代に必要な王が自分だと、ヤンアーチェは知っている。タオホンをこの手にかけたとき、後戻りのできない孤独な王道に足を踏み入れたことは承知していた。だから男としての自分は、たとえ血の一滴までも、兄殺しの罪に濁った体液にすぎないとしても、いらぬというまで捧げてやりたかった。”(P.129~130)ヤンアーチェの愛のすべてイリに注がれています。底の浅い疼く程度“なけなしの良心”薄っぺらに漂うくらいで、元々、イリ欠片愛していなかったくせに愛しているフリをしていたロクデナシのバルトとは格が違う  格が段違いにね 人身売買組織〈自由同盟〉の頭であるバルトは、喜んで人身売買をしていたロクデナシですからね

 ヤンアーチェ“偉大なる賢王”だと思い込んで尊敬していた父王ユンヤミンの実態は、無能な中年オヤジだった。そのユンヤミン“朴念仁だぞ~と判を捺したのはホークァン(33歳『この世の果て』の時点です。それほどに歪んだ潔癖さを固持していた筈だったけれどイリと一夜を共にして豹変した過去を忘れたホークァンは間抜けとしか言いようがないわ 何故なら、第5巻『この世の果て』の「5 天使と夢の中で」“思い通りになることなど、ことがヤンアーチェの身の回りの事態であるとなると、そうそうありはしない。だが潔癖な王(ヤンアーチェ)イリと寝ることで、その淫蕩(いんとう)に嫌悪を抱けば、淡かった初恋が脆く崩れさる可能性は高かった。イリは本物の女ではない。男でさえない。その肉体の複雑さは、清童であるヤンアーチェには重過ぎるだろう。裸の肉を重ねてみて、は初めて気づくに違いない。その肉が薄皮一枚のものに過ぎず、執着していた二形に神秘性などなに一つないのだと。イリとの完全なる決別、それこそホークァンがヤンアーチェに望む成長である。しかし彼は誤算していた。かつて朴念仁とみずからが判を捺していたユンヤミンさえ、イリと寝室を共にしたあとで別人と化したのである。”(P.154~155)と、二形の肉体神秘などなく幻滅イリ・イン・ラーチョオ(24歳)との完全なる決別というヤンアーチェ(18歳)の成長を目論んだホークァンは、ユンヤミンが豹変した過去を忘れたがゆえに、自業自得の挫折を味わいました。

 一方のを盛られ夢現(ゆめうつつ)イリと結ばれたヤンアーチェ自分の代で廃止するつもりだった後宮を抱える事になり父王ユンヤミン(享年39歳)の腹上死により亡命時からの存在自体を抹殺されたイリ非公式ながら後宮第1位の妾妃として迎える羽目に陥りました。しかしヤンアーチェ“生来の色悪”らしく「天使と夢の中で」“女を抱いたこともないくせに、もしかしたら天性の色悪かもしれない。”(P.183)イリに思わせるくらいで、その唇も肌も…父を死に至らしめた淫売唾棄したイリのすべてに耽溺して、その股間の少女も少年も堪能する濃厚なセックス・ライフを展開し、ヤンアーチェ肌を重ねずに10日と離れてはおられぬ慢性の禁断症状後宮に仕える女官たちの間でイリへの耽溺ぶりが伝説化されるほどに… まだイリに愛されている真実  を知る前なので自分は淫奔な色情狂100%被害者だとヤンアーチェが思い込んでいましたが。

 画像は、篠原千絵先生の『天は赤い河のほとり』ヒッタイト帝国が滅亡する漫画の中での元凶である恥知らずな主人公カップルのユーリ・イシュタル(鈴木夕梨)&カイル・ムルシリⅡ世です。ユーリ&カイルは大嫌いだけれど、この絵のようにイリヤンアーチェ子宝に恵まれ、ファミリー・ドラマを繰り広げて欲しいから