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子どもの本の会

子どもたちにはありったけのお話をきかせよう。やがて、どんな運命もドッヂボールのように受け止められるように。(茨木のり子)

『ひまわりの おか (いのちのえほん)』葉方 丹/松成真理子

2012年09月12日 | 日記
74人もの児童と10人の先生,大きな津波によって大切な命が奪われてしまった小学校。

言いようのない悲しみの底にありながら、なんとか前向きに生きていかねばと、小学校そばにあった避難所に,ひまわりの種を植えはじめた,我が子を亡くした8人のお母さんたち。

家族だけではなく,町のひとたち,捜索を終えたおまわりさんたちも,帰り道に水やりをし,育てました。


中には,最愛の子供3人を,一度に失った方もいらっしゃるのです。

なかなか,子供が見つからないお母さんの気持ち。

想像を絶する深い深い悲しみ。

切ない…。本当に切ない。



それでも,必死に前に進もうとしているお母さんたちの我が子への優しい語りかけに,胸が熱くなります。


「ママ,うちゅういち 大すき!」と言ってくれた。

妹想いの優しいお姉さんだった。

スポーツがっ大好きだった。

あと一週間で卒業式を迎えるはずだった六年生。

きっと,どの子もそっくりに描かれているのでしょうね,どの子どもたちのイラストも素敵な笑顔いっぱい。



あしたは,たなばたです。

空には きれいな天の川。

家も町のあかりも みんな 流されて

まっくらだから

星が きれいに見えます。

大川小学校に,線を一本ひいてあげると,

天の川小学校。

みんな 見てるね。

先生もいっしょだね。

わらってるね。

(本文より)



お母さんたちは,そっと,ひまわりと やくそくしました。

「もう,泣かないからね」

やくそくできない やくそくだけど。

ひとつぶの小さな種が,

千つぶもの種になりました。

そのひとつぶひとつぶが,

ひとりひとりの子どもたちの,

思い出のように思えました。

また 夏がきたら 会おうね。

ずっと ずっと いっしょだよ。
(本文より)



巻末には,絵本のもとになったお母さんたちの手紙が全文載っています。

日々の忙しさから,我が子がいかに尊い宝物であるか忘れがちになっています。
今ここにこうして一緒に生きて,笑っていられる,それだけで充分幸せなのに。
早く立派な大人になれと何をそんなに急かすのか。

子供の成績や将来が心配…,そういうことも,なんと幸せで贅沢な悩みなのかと。