旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

不味い物を食べてみよ。

2007年06月29日 | 旅行一般
はじめての海外旅行の時の事でした。ある日、私はイングランド南部の町、ブライトンからのバスツアーに乗っかって、夜行バスでスコットランドのエジンバラへ向かいました。これは現地で申し込んだツアーではありましたが、あくまでツアーであって、とにかくバスに乗り込めばエジンバラのホテルまで連れていってくれて、その後もグラスゴーなどを観光させてくれるものでありました。

エジンバラに到着して、自由行動。ホテルに荷物を投げ出してあてもなく町へ出かけたわけですが、その頃のウブな私は夜行バスではあまり眠る事もできず、しかもけっこう強行軍のこのツアーでは腹ペコでもありました。朝まだ早い時間であったのでレストランで食事をするという時間でもありません。そんな私の前に現れたのは橋のたもとでハンバーガーを販売する露天でありました。

言葉のほとんど話せなかった頃の私にとって、これは願ってもない出会い。何と言ってもメニューは1個しかありません。ただ単にハンバーガーを古新聞に包んで売っているだけで、チーズバーガーとかそういった種類も存在していない様子なのです。もちろん1個購入し、橋を渡りながら食べ始めました。

ところが、これが"異様な味付け"。甘いメロンパンにレトルトのハンバーグが挟んであると思っていただければかなり近いかもしれません。昨夜バスに乗ってから何も食べておらず飢えた私にも、どうしても喉を通っていかないのです。橋を渡りながら、空腹と、そして両親から厳しくしつけられた"食べ物を粗末にしてはいけません"という教えに押しつぶされそうになりながらも、どうしても2口目に進めません。

私は心の中で"お父さん、お母さん、ごめんなさい"と詫びながら、そのハンバーガーを河に放り込んだのでした。

この事は今でもハンバーガーを目にすると、時々思い出されます。そして、その時にひもじい思いをして歩いたエジンバラの町の風景や橋の風景が共に思い出されます。そう考えると、エジンバラにおける自分にとっての一番の思い出であると言えます。

ガイドブックに記されているオススメのレストランなどで食事をしていたら、こんなに印象に残る思い出は残らなかったでしょう。たまにはマズい物を食べてみるのも良いものです。


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