旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

片言のススメ

2014年04月04日 | 旅行一般
旅する事の魅力はいろいろあります。思いつくままに挙げてみると...。
1.行ったことのない人に自慢できる
2.行ったことがある人には行った国の数などで自慢できる
3.実際の風景や、そこでしか見れない物を見たり、その国の匂いを感じたりする体験。
4.食べもの。
5.旅そのものの非日常体験
6.人との出会いや交流
こんな感じでしょうか。1とか2は文字にするととても幼稚な印象ですが、実際にはこの目的が重きを人はかなり沢山いると思います。かくいう私も旅し始めた頃は行った国の数を指折り数えていましたし、入国スタンプを押してくれないヨーロッパの国などではわざわざ入国管理官にお願いして押してもらった事もあります。少し遠回りして1ヵ国多目に通るルートを考えたりもしました。若造でしたから。

このタイプにはバリエーションもあって、如何に安く海外に行ったかを自慢する事が旅の重要な目的になっている人は相当多く存在して、今の旅行市場の担い手になっているとも言えますね。この人達の存在なくしてはLCCは存在する事ができませんね。

3や4は少し下調べが必要な部類の楽しみで、本来、旅の情報収集はここに最大のエネルギーを注ぐべきだと思います。そこでしか見れない物の中にはその国の歴史や、あるいは過去の文学作品などが深くかかわっている事が多くあり、この部類の情報収集は自分が訪れる国への理解を大いに深めてくれるものです。その国独特の食文化というのも現場で実体験して初めて記憶に刻まれるものですし、その事と地理的条件や歴史的な経緯に思いを巡らしてみるのも旅先での良い頭の体操です。

5は旅すれば大なり小なり必ず体験できる事で、やはり旅の素晴らしい魅力だと思います。防備を緩めて現地で起こる事を受け入れる気持ちを持てばより楽しむことが出来ます。

最近、”何を持って行けばよいですか”に類する質問をとても多く受けるのですが、日本からいろいろな対策グッズを持っていく事は宇宙服を着て旅するようなもので、非日常体験を遠ざける事に他なりません。上手くバランスをとらないと、便利グッズの便利さを確認しに行っただけの旅になりかねません。

私にとっての旅の最大の魅力は6。現地での人との出会い。これには他の旅人との出会いもあれば、現地の人たちとの出会いもあります。これは実は全員が享受できる楽しみではなくて、少し高度な楽しみである事は間違いありません。何カ国も旅していてもこの楽しみに気づかない人も沢山います。

最大の壁はコミュニケーションの問題。

旅先で用件を済ませる作業だけなら日本語+身振り手振りだけで何とでもなるのですが、人との交流を考えた場合、相手の言う事を読み取る努力が必要となってきます。何と言っているのか空気を読んだり、お互いが判る可能性の高い言葉(自ずと英単語になりますが)を少しずつ組み合わせて言わんとする事を確認しあったりという作業を重ねてコミュニケーションをするうちに作業を越えて交流に至る事ができます。

言葉の壁というのは、こちら側にとっての壁であるだけでなく、相手にとっても大きな壁になります。偶然出会った外国人旅行者に興味を抱いて話しかけようとした自分を想像してみれば、旅行中の自分と現地の人たちの関係もイメージできると思います。

スーパーカブで旅するタイ北部でよくあるのは...
*屋台で商品を眺めている
*お店の人がタイ語で声をかけてくる
*こちらの反応でタイ語が通じていない事に気づいて少し表情が曇り、少し逃げ腰になる。
*こちらが片言のタイ語で値段を聞いたりしはじめると、表情が一気に和らいで安心した感じで答え始める。

こんな流れで、相手にとっても言葉が通じない客は面倒な客に違いありませんが、少し通じそうだとなると一気に距離が縮まるものでもあります。余談ですが、このあたりは不思議と女性の方が気づくのが早いようで、決まり文句の片言をメモ書きにしてポケットに忍ばせておくような知恵を発揮した人は全て女性の参加者でした。

人との出会いや交流が旅の大きな楽しみだと気がついて、帰国後英会話学校に通い始めた人を何人も知っていますし、長旅の人は現地で英会話学校に入ったり、スペイン語学校に入ったりする事も多く、旅人向けの会話学校がある町が色々な国に存在します。

どこかを訪れる時に毎回その国の言語の学校に通ってから行くというのは理想的ですが現実的とは言えません。そこで妥協して英語という事になるのですが、英語圏以外の国では英語は用件を済ませる作業にしか使えない場合も多いです。それよりも現地の言葉が片言でもできた方が一気に周囲の人との距離が縮まります。

片言で覚えておいて得な言葉をいくつか挙げてみると。
*こんにちは
*ありがとう
*○○へ行きたい
*○○はありますか
*いくらですか
*水
*◎◎語はできません
*わかりません
*おいしい
*名前

このあたり。これに日常よく使う金額の数字を覚え、料理の名前を食べるたびに教えてもらって増やしていけば意外と旅先での用件を現地の言葉でこなすことが出来ますし、これで一気に距離が縮まった後のコミュニケーションは"身振り手振り+英語+上記の現地の言葉の組み合わせで+空気を読む"事で進める事ができます。その頃には自分の事は”少し言葉が出来る面白い外人”として現地の人たちの警戒は緩んでいるので熱心につき合ってくれるものです。

沢山の人たちとコミュニケーションをとるようになったら、是非もう一つの言葉を覚えましょう。それは”また会いましょう”という言葉。

何ヵ国行ったかとか、世界遺産を何か所訪れたとかよりも、何人の”また会いたい人”と出会えたかをあなたの旅の評価基準にしては如何でしょうか。


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