制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

消費税率の引き上げを含む議論、3月から開始か

2010年02月18日 09時42分45秒 | ベーシックインカム
菅副総理・財務大臣が、14日の記者会見および15日の衆院予算委員会で、「法人税、消費税、環境税などの税制全般の議論を本格的に始める」と述べ、2010年度予算案の衆議院通過後に議論を始めること、消費税率の引き上げなどの大きな税制改革となる場合には「国民に信を問う」と衆議院選挙の争点とすることを明らかにした。

菅財務相「消費税含めた税制議論、3月に開始」
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20100214-567-OYT1T00753.html

消費税上げ「国民に信を問う」=予算の衆院通過後に議論-菅財務相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-100215X813.html

このブログで何度か取り上げているが、税と社会保障の共通番号制度は、消費税率の引き上げと同時に実施することになると思われる低所得者層への給付に必要な仕組みである。この議論を先行させていることからも、周到な準備の上での発言と思われる。

消費税率4年間は上げず 首相、重ねて強調
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2010021501000501.html

在任中の消費税上げ、重ねて否定=議論は容認-鳩山首相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100215X851.html

並行して鳩山首相からは、4年間の在任期間中には消費税率を引き上げないこと、これから伸び続ける社会保障費を賄うために財政論は避けて通れず、いずれは消費税率の引き上げと低所得者への給付(所得の再分配)に踏み込まざるを得ないこと、そのための議論をすることは大いに結構、との意見が出されている。菅副総理・大臣の発言を打ち消すものではなく、どちらかといえばサポートする発言とも思われる。

消費税論議 菅財務相がやっと腰を上げた
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100215-567-OYT1T01449.html

上記の記事を、このブログで取り上げてきたことを合わせて読んでいただきたい。このシナリオどおりに進むとすれば、現在の社会保障論の至るところをアップデイトしなければならなくなる(果たして、研究者や教員は世の中の動きについていけるだろうか)。

「3月から税制論議」に閣僚相次ぎ同調
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20100216-567-OYT1T01094.html

消費税、参院選で堂々と議論を=与野党に注文-同友会代表幹事
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-100216X023.html

2013年度の衆議院選挙が近づくと、国民の負担増につながる検討はどうしても腰が引けてしまう。誰もが負担増になることを掲げるのは避けたいと思うものである。もし、民主党のマニフェストに「消費税率の引き上げ」が掲げられ、対する自民党のマニフェストに「消費税率の現状維持」が掲げられていたとすれば、いくら日本の将来を思ったとしても、目先の利益を考えて自民党に票を入れたくもなる。民主党が「これでは選挙に負ける」と思えば、マニフェストに掲げることへの反対論が出て、財政の健全化=税率の引き上げは先延ばしになってしまう(その結果、昨年の某党のようなバラマキばかりになる)。
選挙の争点とするならば、今から国民に対して、国の財政・地方の財政をどうするのかと具体的な数値を用いて問いかけていく必要があるだろう。国民はそれほど馬鹿ではない(バラマキには冷ややかな対応しかしない)。国の財政状況をきちんと説明し、これから先の社会保障費の伸びは避けられないこと、どこかで誰かが負担しないと国として破綻してしまうこと、消費税率の引き上げによって何が解決するのかを論理的に説明することから始めてはいかがだろうか。
おそらく、霞ヶ関の役人は、そのようなことは何度も説明していると反論したくなるだろうが、残念ながら国民には届いていない。国民が、それらを自分たちのことと受けとめ、自分たちや子どもの将来のことをしっかり考え、国全体を巻き込むような議論を巻き起こしていかないと、どうしても負担の重さにばかり目が行ってしまうだろう。

税と社会保障の共通番号制度の検討開始 5月までに複数案を整理

2010年02月10日 10時05分18秒 | 情報化・IT化
8日のことになるが、政府が「税と社会保障の共通番号制度の導入に向けた検討会」の初会合を開催し、検討を本格化した。
明らかになったスケジュールに関しては、菅副総理・大臣のインタビューから推測したものよりも、さらに前倒しの印象がある。試案の作成に2~3ヶ月、年内に方向性を出し、複数の試案作成が5月。来年度の通常国会での法案提出。導入と利用開始は早ければ2013年度から(前年度の1月からの利用開始)となっている。

政府、納税者番号制度の検討開始 5月めどに試案
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020801000880.html

「社会保障番号」議論を本格化…検討会が初会合
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20100208-567-OYT1T01109.html

共通番号制度、11年に法案 政府検討会、5月メドに複数案
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100209ATFS0803G08022010.html

あくまで「目標」としているが、明らかになったスケジュールを整理すると、

2009年度
・「番号制度に関する検討会」などの検討体制を立ち上げ
・基本的な方向性を議論
2010年度
・5月までに、基本的な考え方(3類型、利用範囲など)を整理。年末までに絞り込み
・年内に基本的な方向性を出す(基本的な方針の策定)
・1月に関連法案の提出
2011年度
・関連法案の成立
・共通番号の付与やITシステムの改修などの準備
2012年度
・共通番号の付与やITシステムの改修などの準備(継続)
・制度の導入
・2013年1月から利用開始
2013年度
・制度の本格利用

となる。自民党政権下でも検討を続けてきたが、結論を出すに至っていない。現政権でも簡単に結論を出せるとは思えない。検討が長引いたり、共通番号の付与などに時間を要したりということなら、1年間の後倒しとすればよい(それでも当初の計画どおり)との計算だろう。
検討会は、国家戦略室を中心とした省庁横断型。メンバーは、平野官房長官、仙谷国家戦略大臣、原口総務大臣、長妻大臣と関係各省の副大臣らで、菅副総理・大臣が会長を務める。社会保障カードや電子私書箱のような「学識経験者(各省庁の御用学者)」を座長に据えて役人が仕切る検討会ではなく、「政治主導」といえるもの。これまでとは違う結論が出そうとの期待感が高まる一方で、この分野に知見のあるメンバーが入っていないことには不安を感じる。「障がい者制度改革推進本部」の下に「障がい者制度改革推進会議」があるように、この検討会の下か各省庁の下に、実務面の検討を担当する委員会を設置することになるだろう。そうしないと、新聞各紙が報じている「プライバシー面の不安(社会的なベネフィットとのバランス)」などの難問を整理できない。政治主導で大きな方針が固めておき、その方針に基づいて、プライバシーなどの難問の解決と制度運用などの詳細化・具体化を進める。このような「トップダウン」の進め方を描いているのではないだろうか。

初会合で、菅副総理・大臣は、「色々なサービスを公平に効率よく受けるための基礎的なインフラだ」と説明。所得が捕捉できれば、手当に所得制限を設けたり、所得ごとに給付額を変えることができる。給付つき税額控除や最低保障年金の実現には欠かせない社会インフラだとのメリットを前面に出していくことが明らかになった。この社会インフラがないと、消費税の引き上げができない。公にはあまり出ていないが、民主党はそのように考えているのではないだろうか。

このブログでも何度かに分けて、これらの考え方を取り上げている。合わせてご覧いただければ幸いである。

中医協、再診料の一本化で集中審議 結論出ずに持ち越し

2010年02月09日 09時36分46秒 | 予算・事業仕分け
基本的な方針として合意できていたと思われた「再診料」で、中央社会保険医療協議会(中医協)が緊迫している。
再診料は、200床未満の中小病院が600円であるのに対して、診療所は710円。再診料には様々な加算があることに加えて、医療機関で価格が違うことへのわかりづらさもあることから、基礎となる再診料を統一しようということで合意が得られていた。しかし、その合意ができたのは、診療所の再診料を引き下げて600円に統一する、中小病院の再診料を引き上げて710円にする、二者の間をとって650円程度で揃えるのいずれなのかについては曖昧なままになっていたため。
再診料を10円引き上げると、医療費は100億円ほど増えることになる。今回の診療報酬の引き上げ幅は、0.19%(約700億円)と小さく、再診料の引き上げに使える財源は限られている。確保できる財源を眺めつつ、600円と710円の間のどれぐらいで決着させるかというせめぎ合いになると思われる。

日経新聞が報じたのは、再診料を680~690円にするという方針。診療所の再診料は引き下げになるが、時間外対応などの加算により収入減を補うことができるようにするという。

中小病院の再診料680~690円 厚労省方針、診療所と同水準
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100207ATFS0601H06022010.html

診療所の再診料、原則引き下げを検討 厚労省
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100120ATFS1902N19012010.html

5日に厚生労働省が示した「外来に関する財源」の粗い試算によると、外来部分の改定率の引き上げによる400億円と検査実施料などの適正化による400億円。800億円から新規技術などの評価に650億円をまわすために、再診料の統一に使うことができる財源は150億円程度。これでは、再診料の引き上げにはとうてい足りない。かといって、他を引き下げて財源を持ってくるのも難しいだろう。

【中医協】再診料統一、診療側と支払側の溝埋まらず
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26243.html

これらを前提として、8日の中医協で集中審議がなされたが、双方とも譲ることなく結論を出すことができなかった。そのため、公益委員が裁定案を提出して10日に決着を図ることになった。しかし、開業医を代表する委員からは、「現在の再診料でも低い。裁定の内容によっては、大きく非難することもありうる」と述べるなど、簡単には合意することはできないだろう。開業医にとって、再診料の引き下げは経営=収入に直結する。開業医の月収は205万円、病院勤務医は123万円。このような情報が流されているので、世論は「診療所の再診料を引き下げるのは当然」だろう。

中医協、再診料一本化の結論出ず 公益委員が裁定案提出へ
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020801000776.html

児童扶養手当改正法案のURL

2010年02月08日 09時14分02秒 | ベーシックインカム
2つめは、「児童扶養手当法の一部を改正する法律案」である。こちらは、母子家庭に支給されてきた児童扶養手当を父子家庭にも支給しようというもので、母子家庭・父子家庭の状況などを説明した資料が添付されている。平成18年度全国母子世帯等調査によると、父子家庭の「困っていること」の1位が「家事(平成15年 34.6%→27.4%)」から「家計(平成15年 31.5%→40.0%)」へと入れ替わっている。また、それを裏付けるように、相対的貧困率においても、一人親世帯が 58.7%と、OECD加盟国30カ国中30位(最下位)となっていることが示されている。

児童扶養手当法の一部を改正する法律案の概要
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/02/k0202-1.html

児童扶養手当法の一部を改正する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/02/dl/s0202-1e.pdf

国民健康保険法等の改正法案のURL

2010年02月08日 09時11分15秒 | 高齢者医療・介護
国会に提出された2つの法案の概要と要綱が掲載された。
いずれも、このブログで取り上げてきたもので、そちらも合わせて読んでいただきたい。

1つめは、「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険等の一部を改正する法律案(仮称)」である。
国民健康保険法の改正は、
・財政支援措置を4年間延長する
・市町村国保の財政安定化のため、都道府県単位による広域化を推進する
・保険料滞納世帯であっても医療を現物給付で受けられる子どもの対象を拡大する(中学生以下→高校生世代以下)

健康保険法等の改正は、
協会けんぽの逼迫した財政状況に鑑み、保険料の大幅な引上げを抑制するための3年間の特別措置で、
・国庫補助割合を13%から16.4%に引き上げる
・単年度収支均衡の特例として、21年度末以降の赤字額について、24年度までの償還を可能とする
・後期高齢者支援金について、被用者保険グループでの負担能力に応じた分担方法を導入する(高齢者医療確保法)

高齢者医療確保法の改正は、
・財政安定化基金を、保険料の引上げの抑制に活用できるようにする
・サラリーマンに扶養されていた方の保険料の軽減措置を延長する

となっている。多くは、これまで報じられてきたことで、後期高齢者医療制度の「廃止」につながる「市町村国保の都道府県単位による広域化推進」には注目していきたい。要綱では、

二 広域化等支援方針等に関する事項
1 都道府県は、国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険の財政の安定化を推進するための当該都道府県内の市町村に対する支援の方針(以下「広域化等支援方針)という。)を定めることができるものとすること。(国民健康保険法第六十八条の二第一項関係)
2 広域化等支援方針においては、国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険財政の安定化の推進を図るため、都道府県が果たすべき役割、事務の共同実施や医療費の適正化等その推進のための具体的な施策等について定めるものとすること。(国民健康保険法第六十八条の二第二項関係)

となっている。概要にある「市町村国保における高額医療費共同事業・保険財政共同安定化事業」の拡大で留まるのか、地域保険化に向けて、広域連合に移行する道筋を示すのかでは、大きな違いがある。要綱にある「事務の共同実施や医療費の適正化等その推進」を、国保連合会の役割を大きくすると読むのか、それとも広域連合を立ち上げると読むのかによって、将来像はまったく違ったものとなるからである。

医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険等の一部を改正する法律案(仮称)の概要
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/02/dl/s0202-1b.pdf

医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険等の一部を改正する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/02/dl/s0202-1c.pdf

(カテゴリーを分けるため、2つに分けて投稿する)

ハーグ条約の加盟圧力が高まる 子どもの「奪取」と「拉致」

2010年02月07日 09時49分44秒 | 子ども手当・子育て
子どもの奪取に関する「ハーグ条約」があり、先進国のなかで締結していない国は日本だけということは、多くの国民にとって初めて聞くことだろう。ハーグ条約とは、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」のことで、国際結婚の破綻などに伴い、一方の親が他方の親(親権あり)に無断で子どもを自国に連れ去った場合、それを「子の奪取」とし、子どもを親権のある国に戻すことを義務付けるもの。1980年に署名、1983年に発効した多国間条約で、欧米を中心に81カ国が締結している。

国際結婚の増加に伴い、日本人の親が子どもを日本に連れ帰るケースが増えている。親権を侵害されたもう一方の親の国で「親権が侵害された」と訴えることになるが、国をまたがっているために何もできない。そのため、先月末にアメリカのジョン・ルース駐日大使など8カ国の大使らが岡田外相を訪れ、ハーグ条約への早期加盟を要請している。

「子の奪取に関する条約」日本の早期加盟要請
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100130-OYT1T00726.htm

直後の報道では、政府として前向きに検討するものの、欧米と日本では結婚観に違いがあること、法制度に違いがあることなどから検討に時間を要していることへの理解を求め、8カ国の大使らも「前向きな対応に勇気づけられている」との声明を発表したことから、外交的なやりとりだったのかと思われた(発効したのは1983年。検討に時間を要していると理解を求めるのは難しい)。

対日関係に影響も=「子の奪取」で懸念表明-米次官補
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201002/2010020200850

米が日本にハーグ条約加盟迫る 「拉致問題支援に悪影響」
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020601000521.html

ハーグ条約 腰重い日本 米『普天間より深刻』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010020602000225.html


しかし、6日に明らかになったことは、「米議会でも懸案事項になっている。日米関係の大きな懸念になりかねない」ということ。来日したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、日本とアメリカの間で約70件が未解決のまま(日本とアメリカの二重国籍の子ども)だと明らかにした。外務省が把握している「日本人による子の奪取」は、アメリカとの間で77件、イギリスとカナダでそれぞれ37件、フランスで35件など。「普天間よりも深刻」や子どもの奪取は「拉致」であり「拉致問題の支援にも悪影響」とまで言われたら、政府としても動かざるを得なくなる。

政府は、これらの加盟圧力に先立って、外務省に「子の親権問題担当室」を昨年の12月1日に設置。外務省が把握しているケースの対応を一本化するとともに、ハーグ条約への加盟の是非についても検討を進めることになっている。
国際的な批判を避けるためにも批准に向けた検討を本格化する必要があるが、「外圧」に屈するようなことがあってはならない。欧米諸国とは、家族観(親子の関係性)が違うし、親権・監護権などの考え方も違う。これらの文化的・社会的な違いから、批准に慎重になっていることを明確に伝えるべきだろう。これらの違いが慎重論の根本にあることは、アジアやアフリカの諸国がほとんど批准していないことからも裏付けられる。

悪質な家賃取り立ては懲役、賃借人保護法案の概要が明らかに

2010年02月06日 09時45分17秒 | ベーシックインカム
敷金・礼金が不要のいわゆる「ゼロゼロ案件」で、少しでも滞納があると、暴力的に取り立てようとしたり、督促状を貼り付けたりする、合鍵を使って家のなかに入り込み家財道具を処分したり、鍵を交換して締め出したりするといった「追い出し屋」の被害が相次いでいる。
これらは、誰がみても違法行為と思うが、いわゆる「追い出し屋」は不動産会社や家主でないため、宅建業法や借地借家法などでは規制できない。そのため、どこも取り締まることができず、被害にあった入居者が裁判に訴えるしかなかった。国土交通省の民間賃貸住宅部会・不動産部会などでも「追い出し屋」の被害と法の不備が取り上げられており、業界団体の「自主規制」では被害が止まらないだろうとの判断から、「追い出し屋」をターゲットとする「賃借人保護法(仮称)」が整備されることになったのだろう。

賃借人保護法では、具体的には、大家や賃貸保証業者が、滞納を理由として、無断で鍵を交換したり、家具類を持ち出す、深夜や早朝に家賃を払えと訪問したり電話したりすることを禁止。これらの追い出し行為をすると告げることも禁止。違反した場合には、懲役2年または300万円以下の罰金。悪質なケースには両方を科すこともできるようになる。また、賃貸保証業者は登録制となり、悪質な業者は排除されることになる。
2月下旬に法案を閣議決定。今国会での成立を目指すとしている。

悪質な家賃取り立て行為は懲役 賃借人保護法案の全容
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2010020501000716.html


賃貸保証業者のここしばらくの動き方は、正直なところ適切とはいえなかった。業界としての「自主規制」では不十分で、法規制を強化すべきとの判断につながったのではないかと思う。このような検討がなされているなか、大きな批判を集めていた家賃滞納データベースの運用を開始したことは、注目に値する(さらに批判を集めるようなもの)。
家賃滞納データベースとは、連帯保証会社でつくる「全国賃貸保証業協会(LICC=リック)」が入居者の信用情報を登録し、一元管理しようとするもの。家賃の保証委託契約を結ぶ際に、生年月日や電話番号などの個人情報を収集。家賃の滞納があれば、その事実と金額、返済状況を登録していく。滞納があれば、データは消えない。このデータベースに滞納の履歴があるなどの理由から保証契約を拒まれたら、入居に必要な審査が通らなくなる。「ブラックリスト」として使おうとしているのは間違いないと日本弁護士連合会などが反対していたが、2月1日から加盟13社で運用を開始。1年後には約100万件の登録を見込んでいるとのこと。

家賃滞納データベース1日運用開始 日弁連など反対の中
http://www.asahi.com/national/update/0130/OSK201001300075.html?ref=goo

日本弁護士連合会
「民間賃貸住宅政策について(意見募集)」に対する意見書
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/100129.html

家賃滞納データベースが「ブラックリスト」として使われているとの告発が相次ぎ、社会問題化すれば、(まだ国会にも提出されていないが)賃借人保護法が強化され、賃貸保証業者による個人情報と信用情報の収集と一元管理が禁止されることになるだろう。個人情報保護の観点からも、このデータベースのあり方を注視していきたい。

介護保険の事務手続き見直しの意見募集中

2010年02月05日 09時51分49秒 | 高齢者医療・介護
厚生労働省は、介護保険制度の事務手続きを見直すための意見の募集を始めた。期間は2月3日から3月31日まで。電子メールまたは郵送・FAXで、厚生労働省老健局振興課に。

介護保険制度に係る書類・事務手続の見直しに関するにご意見の募集について
http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p100201-1.html

介護保険最新情報 Vol.130
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/FCEF71E9-6D80-41AF-A2F7-B36B16617FA0/0/ki_v130.pdf

今回の意見募集の背景には、長妻大臣が今国会の予算委員会で「申請する書類が大変だ」という介護事業者の声を紹介し、見直しのための意見を募集する意向を示したことがある。意見は分析・検討したうえで、具体的な見直し策に反映させる方針。厚生労働省は、介護保険制度上の提出書類に記載する項目や様式、書類の提出頻度などの見直しを想定しているとのこと。

介護保険の事務手続き見直しで意見募集―厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26182.html

2000年度の介護保険制度の施行前から、提出しなければならない書類の様式の多さや煩雑さはわかっていた。以下ような構造になっていて調整がつかなかったこと、施行前だったため「現場が大変になる」という意見に説得力を持たせることができずに「見切り発車」となった経緯がある。法改正や細かなルールの改正の積み重ねで複雑さが増し、さらに事務が肥大化しているのも確か。様式の廃止や項目の見直しといった小規模かつ現実的な見直し(現場の負担軽減につながる見直しなら歓迎なのだが)に留まることなく、大胆な見直しにも取り組んでいただきたい。

複雑さ、煩雑さの根本には、保険制度として必要になる事務処理(報酬の請求に必要なもの)と、ケアマネジメントから始まる利用者の自立生活支援に必要となる事務処理(ケアプランやサービスを提供する事業者間でやりとりされるもの)が混在していて、切り分けられていないことがある。
保険制度なのだから、被保険者が介護を必要としていて、サービスを利用することが適切であると認められなければならない。そのための専門職として介護支援専門員がいて、作成したケアプランに基づいてサービスが提供されるという構造になっている。この基本構造は崩すことはできない。
事務手続きが煩雑だからといって、サービスの質が低下するような見直しでは駄目。サービスの選択権を利用者に渡す(利用券方式)などの見直しを行い、この構造を崩してしまうと、サービスを利用・提供する目的が不明確になり、サービスの質=得られる効果・便益は低下してしまう。やはり、この構造を基本として、いかにスムーズに情報を流すかを考えるべきだろう。
例えば、介護報酬の請求は、基本的にIT化されている。しかし、事業者間のやりとりは、依然として紙とFAX、電話であり、標準化がなされていないためにIT化できない。介護報酬系とサービス提供系の事務が連動していないために、紙台帳をみてコンピュータに入力していたり、標準化がなされていないために、市町村や事業者ごとに作成する様式がばらばらだったりする。思い切って事務処理を見直すとともに、事業所ごとにばらばらに作成している書類・情報項目を標準化する取り組みに着手してはどうだろうか。そうすれば、一般企業がすでに実現しているEDIのノウハウを介護保険分野に取り入れられる。かなりの事務効率化が期待できる。日々のやりとりで蓄積されるデータから、介護報酬の請求に必要なデータが作成できるようになれば、多重の管理は不要になる。

電子データ交換
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E4%BA%A4%E6%8F%9B

また、ケアマネジメントの理論において、サービスを提供するにあたっての目標を明確にすることはとても大事なこととされているが、実際の現場は、そうでなかったりする。ニードがあり、目標があり、それらを実現する方法としてのサービスがあるという順で考えるよりも、利用したいサービスがある、サービスを利用することで充たされるニードがあると考える「サービスオリエンテッド」が実際には残っている。理論と実際が離れすぎているために、情報項目の枠を埋めること(手段)が目的化してしまっている。現場に役立つ現実感あるものとし、少しずつ「ニードオリエンテッド」に近づけるような戦略性があってもよいと思う。

児童養護施設の入所者も対象に ~子ども手当法案(要綱)のURL

2010年02月04日 09時55分39秒 | 子ども手当・子育て
長妻大臣は、参議院本会議の代表質問で、児童養護施設などに入っている子どもにも「子ども手当」を支給する方針を明らかにした。
国会に提出済の「子ども手当法案」の支給要件は、児童手当法の要件を踏襲したもので、父または母などの生計維持者には支給できるが、児童養護施設の施設長や里親などには支給できない。そのため、「安心こども基金」などを活用して2010年度分を支給、2011年度分からは支給要件を見直すことになりそうである。なお、必要な予算額は、6億5000万円とのこと(約5000人分)。

<子ども手当>児童養護施設の入所者も対象に 長妻厚労相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100203-00000081-mai-pol

実は、これは、先月の中頃には明らかになっていた方針。第7回厚生労働省政策会議(1月14日)の議事要旨には、「施設に入っている子どもや親のいない子どもには支払われるのか」に対して「施設に入所している子どもについては、親が監護していれば親に子ども手当が支払われる。ただし、親が虐待などを行っている場合には、子ども手当は支払われない」「仮に施設に支払う場合、施設長が財産処分できるのかなどの問題が生じる」、それを受けての「施設に入所している子どもこそ、温かい手を差し伸べるべき」といったやりとりが残されている。

第7回厚生労働省政策会議の議事要旨
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/k0114-2.html

第8回厚生労働省政策会議(1月22日)の配布資料に、子ども手当法案の概要と要綱があった。「子ども手当法案」の正式名称は「平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案」。全文が掲載されたら、改めて取り上げたい。

第8回厚生労働省政策会議
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/k0122-1.html

平成22年度における子ども手当の支給に関する法律案(仮称)の概要
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/dl/k0122-1a.pdf

平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/dl/k0122-1b.pdf

子ども手当の支給要件は、以下のようになっている。

一 支給要件
子ども手当は、次のいずれかに該当する者が日本国内に住所を有するときに支給するものとすること。
(一)子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母
(二)父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持する者
(三)子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母であって、父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持するもの

これは、基本的には、児童手当法の第四条(支給要件)の「支給要件児童」を「子ども」に置き換えたもの。児童養護施設などの入所者が支給要件から外れる理由は、国会の質問・答弁の記録(2008年5月30日)によると、「児童福祉施設に入所し、又は里親に委託されている児童については、当該児童が孤児であるか否かにかかわらず、別途措置費等が支弁されており、当該施設の長又は里親は当該児童の生計を維持しているものとは認められないことから」とのこと。

児童手当法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO073.html

児童手当制度に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a169459.htm

答弁本文情報
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b169459.htm

第2回障がい者制度改革推進会議にて、「障害」の定義などを議論

2010年02月03日 09時45分01秒 | 自立支援法・障害
内閣府は、2日に「障がい者制度改革推進会議」の第2回会合(主要議題:障害者基本法など)を開いた。先月の初会合で会場に入れない傍聴希望者が多く出たことから、インターネットなどを使って会議の様子が配信されることになった。
リアルタイムで配信された映像・音声を使い、全国各地で「傍聴する会」が開催されたほか、その映像・音声は、内閣府のホームページに置かれているので、オンデマンドで確認できるようになっている。

推進会議開催状況 動画配信(第2回)
http://wwwc.cao.go.jp/lib_05/video/suishin1.html

配布資料に加え、推進会議の模様が映像・音声で残されていくので、後からの検証も容易になるし、情報を完全公開することで決定の透明性を担保できるようになる。国の検討体制に参加できなかった団体などにも推進会議の模様が臨場感をもって伝えられるし、ヒアリングやホームページなどを使って意見を伝えることで、仮想的ではあるが参加できるようになる。このようなITを活用した情報の提供と収集(双方向)による参加は積極的に進めるべきだし、他領域に先んじて様々な試みがなされていることは高く評価できる。これが国民生活に関わることを検討するにあたってのスタンダードになれば、と思う。

話し合われたことは、障害者基本法の基本的な性格、障害の定義、差別の定義、基本的な人権の確認と障害者権利条約の批准後のモニタリング、障害者に関する基本的な施策など。
第2回会合のポイントは、障害の定義に関わる議論。このブログでも取り上げてきたが(正しく理解できているか、伝えられているか自信はないが)、障害者が困難に直面することを個人の心身の機能などに求める「医療モデル」から、それらが社会的な活動や参加の障壁となっている、障害があるのは社会の側で、社会に対して障壁を取り除くように要請する「社会モデル」に転換し、障害の定義に盛り込むべきとの意見が多く出されたこと。
第2のポイントは、差別の定義に関して、障害者基本法に「障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と書かれているけれども、「権利利益を侵害する行為」の具体性に欠けているとの指摘。「直接差別」「間接差別」「合理的配慮を行わないこと」の差別の3類型が含まれることを明記すべきとの意見が出されている。

障害者基本法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO084.html

次回開催は、2月15日の予定。、「障がい者総合福祉法」(仮称)をはじめ、障害者自立支援法や障害者の雇用などについて話し合われる予定。それまでに配布資料を読み込み、映像・音声で様子を確認することにしたい。

障害者の定義を「社会モデル」へ―制度改革推進会議
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26176.html

<障害者基本法>抜本改正で推進会議一致 差別禁止法制定も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100202-00000129-mai-pol