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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

年末年始の「生活総合相談」に要した国費が明らかに 5535人に7億9000万円

2010年02月19日 09時26分51秒 | ベーシックインカム
年末年始に194の自治体が実施した「生活総合相談」に訪れた求職者などは5535人、仕事探しや生活保護などを中心とする相談件数は6135件。それに要した国費は7億9000万円だったことが、政府の貧困・困窮者支援チームによる全国の実施状況の取りまとめにより明らかになった。

宿泊場所1万7000人分提供=年末年始の困窮者対策実績-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100217X242.html

時事通信社の記事をどう読めばよいかわからないが(ひどい文章なので、7億9000万円の内訳がわからない)、かかった費用を窓口に訪れた人数で割ると、1人あたり14万2728円。これを高すぎるとみるか、安いとみるか。ハローワークの職員に加えて市町村や社会福祉協議会の担当職員などの人件費(これまでの報道を合わせ読むと、延べ1万7654人の宿泊費などを含むと思われる)と考えると、経費としては妥当な金額。コストパフォーマンスを論じるならば、生活総合相談に訪れる人数を増やす努力がどれほどなされたのか、自立に向けてどのような働きかけを行ったのか(プロセス)、生活総合相談により貧困・困窮者層から抜け出すことができたのは何人なのか(アウトカム)を問うべきだろう。
時事通信社が報じた数値(インプットとアウトプット)を、貧困・困窮者支援チームの会合で報告しておしまいにしてはならない。きちんとプロセスとアウトカムを検証し、支援策として妥当であったのかを評価していただきたい。

年末年始の生活総合相談の実施状況
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisin/Hdai6/siryou2.pdf


それよりも心配なのは、政府の貧困・困窮者支援チームの動き。第6回会合(1/13)の資料7「ワンストップ・サービス・デイ、年末年始対策の実施を受けた課題と今後の対応について」をみると、あまりにも現実感・切迫感がない。

緊急雇用対策本部推進チームの活動状況
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisin/

ワンストップ・サービス・デイ、年末年始対策の実施を受けた課題と今後の対応について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisin/Hdai6/siryou7.pdf

今後の対応についての1つめに「景気の回復による雇用機会の確保・拡大」があげられている。景気の回復を目指し、国として様々な手を打とうとしているのはわからないでもないが、生活困窮・貧困状態にある人たちへの対策としては、いささか「他力本願」的にも思える。また、「第2のセーフティネットの改善等」や「第2のセーフティネット等のサービスを日常的にワンストップで提供でき、切れ目のないセーフティネットを実現するための体制整備」においても、生活困窮・貧困状態にある人たちに1分1秒も早く手を差し伸べるには、ほど遠いようにも思える。事態はもっと切迫していることは、言われなくてもわかっているはず。役人がつくるような、しっかり書かれているけれども中身がない文書で「今後の対応」とまとめているようでは、残念である。

生活保護受給者、10年で2・3倍…大阪市財政圧迫
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100218-OYO1T00980.htm?from=top

大阪市の生活保護受給者の急増(2010年度予算における生活保護費は2863億円で、一般会計の16.9%を占める)の記事からも、あまり積極的な対策をとると財政面への跳ね返りが大きくなること、そのために支援策を抑え気味にしなければならないとの事情もわからないでもない。しかしながら、湯浅氏を事務局長に迎え、「生活を守る」ことをスローガンに取り組んでいるのだから、「絵に描いた餅」になるかもしれないけれども、(厚生労働省からの圧力を排して)真にあるべき第2セーフティネットの姿を堂々と論じていただきたい。