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ハーグ条約の加盟圧力が高まる 子どもの「奪取」と「拉致」

2010年02月07日 09時49分44秒 | 子ども手当・子育て
子どもの奪取に関する「ハーグ条約」があり、先進国のなかで締結していない国は日本だけということは、多くの国民にとって初めて聞くことだろう。ハーグ条約とは、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」のことで、国際結婚の破綻などに伴い、一方の親が他方の親(親権あり)に無断で子どもを自国に連れ去った場合、それを「子の奪取」とし、子どもを親権のある国に戻すことを義務付けるもの。1980年に署名、1983年に発効した多国間条約で、欧米を中心に81カ国が締結している。

国際結婚の増加に伴い、日本人の親が子どもを日本に連れ帰るケースが増えている。親権を侵害されたもう一方の親の国で「親権が侵害された」と訴えることになるが、国をまたがっているために何もできない。そのため、先月末にアメリカのジョン・ルース駐日大使など8カ国の大使らが岡田外相を訪れ、ハーグ条約への早期加盟を要請している。

「子の奪取に関する条約」日本の早期加盟要請
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100130-OYT1T00726.htm

直後の報道では、政府として前向きに検討するものの、欧米と日本では結婚観に違いがあること、法制度に違いがあることなどから検討に時間を要していることへの理解を求め、8カ国の大使らも「前向きな対応に勇気づけられている」との声明を発表したことから、外交的なやりとりだったのかと思われた(発効したのは1983年。検討に時間を要していると理解を求めるのは難しい)。

対日関係に影響も=「子の奪取」で懸念表明-米次官補
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201002/2010020200850

米が日本にハーグ条約加盟迫る 「拉致問題支援に悪影響」
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020601000521.html

ハーグ条約 腰重い日本 米『普天間より深刻』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010020602000225.html


しかし、6日に明らかになったことは、「米議会でも懸案事項になっている。日米関係の大きな懸念になりかねない」ということ。来日したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、日本とアメリカの間で約70件が未解決のまま(日本とアメリカの二重国籍の子ども)だと明らかにした。外務省が把握している「日本人による子の奪取」は、アメリカとの間で77件、イギリスとカナダでそれぞれ37件、フランスで35件など。「普天間よりも深刻」や子どもの奪取は「拉致」であり「拉致問題の支援にも悪影響」とまで言われたら、政府としても動かざるを得なくなる。

政府は、これらの加盟圧力に先立って、外務省に「子の親権問題担当室」を昨年の12月1日に設置。外務省が把握しているケースの対応を一本化するとともに、ハーグ条約への加盟の是非についても検討を進めることになっている。
国際的な批判を避けるためにも批准に向けた検討を本格化する必要があるが、「外圧」に屈するようなことがあってはならない。欧米諸国とは、家族観(親子の関係性)が違うし、親権・監護権などの考え方も違う。これらの文化的・社会的な違いから、批准に慎重になっていることを明確に伝えるべきだろう。これらの違いが慎重論の根本にあることは、アジアやアフリカの諸国がほとんど批准していないことからも裏付けられる。


3 コメント

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参考のため (正己)
2010-02-07 21:21:10
以前に偶然見つけて、ブラウザの履歴に残っていたのですが、参考のため↓
「ハーグ子奪取条約について」
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20100122-83.html
「どちらの親に子を育てさせるべきかという判断(すなわち監護権に関する判断)をせずに、実力による奪取があった場合には原則として必ずもとの国に子を戻させる」
とい原則があるようですが、興味深いのは例外がある点。
「もっとも、この原則には、若干の例外が定められている。」以下です。
ただ、これは奪取後のことですが、奪取前の監護権の判断基準について報道量が少ないような気がしています。DVや虐待があった場合の具体例が載った報道を見たことがありません。
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離婚後の子供の親権に関する米国の法律 (正己)
2010-02-07 21:39:32
上のコメント内で紹介したページと同じサイトに、次のようなページもありました。
「離婚後の子供の親権に関する米国の法律」
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20100122-82.html
その他の関連文書はまとめて
http://tokyo.usembassy.gov/pdfs/wwwf-american-view201001.pdf
長いですが、私が興味を持ったのは
「親に子供と接触させないようにするには、例えば子供に対する虐待や親の重大な精神疾患など特殊な状況のあることが証明されなければならない。親が子供を虐待した場合や、親に重大な精神疾患のある場合でさえも、裁判所は、親と子が裁判所の監督下で接触することを許可する可能性がある。」の部分と、「メアリーとリチャードの事例」です。
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ありがとうございます (e-wel&gov)
2010-02-08 20:21:45
アメリカの映画やドラマをみていると、ご紹介いただいたようなシーンが出てきますね。
アメリカからみれば「自分たちの常識が何で通じない?」との思いがあるのでしょう。
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