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税と社会保障の共通番号の関連法案、2011年に提出か

2010年02月02日 10時06分59秒 | 情報化・IT化
先月の中頃に、税・社会保障の共通番号制度の検討を前倒しの方針と報じられたが、管副総理・大臣へのインタビューで具体的なスケジュールが明らかになった。

2009年度
・「番号制度に関する検討会」などの検討体制を立ち上げ
・基本的な方向性を議論
2010年度
・夏頃までに、基本的な考え方(3類型)を整理。年末までに絞り込み
2011年度
・関連法案の提出、成立
2013~2014年度
・共通番号の付与やITシステムの改修などの施行の準備
・2014年1月から制度導入

2011年度に関連法案を提出してから、共通番号の導入までに1~2年は必要になると述べているので、検討の開始から法案の提出までを1年間ほど前倒しすることになる。税と社会保障の制度にかかる全国民(外国人を含む)に番号を付与し、本人に通知したり、勤務先に知らせたりするための「準備期間」には、1~2年は必要になる。国や地方自治体のITシステムだけでなく、民間企業などにおいてもITシステムの改修・機能追加が必要になるし、社員・職員から共通番号などを集め、管理するための事務処理も必要になる。2014年度から導入しようとすると、検討の前倒しが必要になるとの判断なのだろう。

全国民に番号が付与する仕組みとしては、既に住民基本台帳ネットワーク(住民票コード)がある。しかし、国民は付与された番号を知らなくても構わないし、住基カードを持っていなくても何のペナルティもない(残念ながら、持っていたとしても、大きなベネフィットがない)。しかし、今回の共通番号は、知っていないと報酬を受け取れないし、社会保障の給付を受けられないかもしれないというような日常生活に直結する番号である。いつ、どこで必要になるかわからないので、常に携帯していなければならないし、書くように求められたときに書けるようにしておかなければならない。日常生活に直結する番号だけに、全国民に漏れなく番号が付与したことを確認してからでないと制度を導入できない。準備期間の大変さは、これまでの諸制度とは比にならないだろう。

なお、共通番号の基本的な考え方の3類型は、以下のとおり。

1)新しい番号を付与
 共通番号として、国民一人ひとりに番号を付与していく。このブログでも取り上げているが、住民異動との連動性が求められるので、既存の番号制度とのインタフェースを持つことになると思われる。

2)基礎年金番号を活用
 基礎年金番号をそのまま使う。しかし、基礎年金番号を持っていない国民も多く、所得の把握や社会保障給付に支障が出るおそれがある。年金制度に未加入であっても共通番号が必要になれば、基礎年金番号を付与するような運用になると思われる。

3)住民基本台帳(住民票コード)を活用
 全国民に付与済の住民票コードをそのまま使う。外国人登録は別なので、日本国内にいて、国内の企業などから報酬を得ている外国人労働者には新たに番号を付与する必要がある。また、住民票コードの利用にあたっては、厳しい制限が加えられている。日常生活に直結する番号として使うことを想定していなかったため、法改正は困難を極めると思われる。

3類型ごとにメリットとデメリット、費用、実現可能性などを評価して絞り込みがなされることになる。個人的には、社会保障カードの導入にあたって検討したことが使えると思いつつ、政権も変わったことだし、体制を一新してゼロベースで検討してほしいと思う。また、全国規模のITシステムを前提とした制度になると思われるので、実務的な検討をする委員会のメンバーには、現実的な検討と他分野の専門家と正面から議論ができるIT業界の代表(専門家)を探し出して加えてほしい。

子ども手当、満額の支給は困難か 財源論は避けて通れず

2010年02月01日 09時45分42秒 | 子ども手当・子育て
野田財務副大臣は、31日のNHKの番組で、2011年度からの子ども手当の満額支給について、「難しい。ハードルは高く、これからの作業になる」と述べた。前日の30日、愛知県豊田市で開かれた民主党支部の総会でも同じように述べており、財務省からの牽制が早々に始まったと思われる。
政府の方針として決まったわけではないが、財政状況を客観的にみれば、満額の支給が先送りされても仕方ないようにも思える。子ども手当の満額支給よりも子育て環境の整備に予算を振り分け、支出を抑えて財政の健全化に取り組むほうが、国民の理解を得やすいのではないだろうか。野田副大臣は、「中期的な財政フレームを作っていく。3か年にわたる歳出計画、歳入の見通し、歳出削減をどうやるかを作る。その流れの中で予算編成をやっていく。できないとは言っていない。これからの作業だ」「どういう知恵を出すのかだ」とも述べているので、いろいろな考えを出しつつ、世論を見極めようとしているのかもしれない。

子ども手当満額「難しい」=11年度以降見通し-野田財務副大臣
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100131X297.html

2011年度予算を組み上げる前に、特別会計を含めて事業仕分けと組み替えに取り組み、予算化していくことになる。ただ、子ども手当の満額支給には5兆円を上回る予算が必要との試算があり、それだけの額が簡単に出てくるとは思えない。さらに、このブログでも取り上げた「子ども・子育てビジョン」の実現には、年間7千億から1兆円ほど必要になることを考えれば、限られた予算をどう割り当てるべきかという現実を踏まえた議論を始めなければならないことがわかる。

<子ども手当>11年度満額「厳しい」 税収低迷理由に--野田副財務相
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100131ddm002010114000c.html

政府の国家戦略室は、「中期的な財政運営に関する検討会」を開催し、中長期的な財政健全化や複数年度予算などに関する検討を始めている。伸び続ける社会保障費を支えるための財源の確保と、確保した財源を年金・医療・介護・福祉などのどれに割り当てるのか、さらに子ども・子育てに割り当てられた財源を「現物=子育て環境整備」の給付と「現金=子ども手当など」の給付のいずれに割り当てるのかといった「財源論」を避けては通れない。

財政健全化目標めぐる検討開始-政府
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26056.html


野田副大臣の発言に対して、管副総理・大臣と平野官房長官から、さっそくと打ち消すようなコメントが出されている。子ども手当の財源確保の時と同じように、いろいろな考え方を並べておき、制約条件下でベストな「落としどころ」を探ろうということだろう。
平野官房長官は、「どういう財源を充てられるか、これから汗をかかなくてはならない」と述べ、管副総理・大臣は、「社会保障分野だけで6兆円の増額が見込まれる。これをどういう形で埋め込んで、出せるかが問題だ」「やるといったら、やらないといけない」などと述べている。いずれも満額の支給に必要となる財源を確保したうえでの発言ではなく、野田副大臣の発言とバランスをとるためのコメントと思われる。
あと半年もすれば、社会保障費の増額分の「6兆円」をどうするのかに取り組み、何らかの答えを出さなければならない。またまだ様子を探り合っている状況なのだろう。

子ども手当満額支給、菅氏「やるといったらやらないと」
http://www.asahi.com/politics/update/0131/TKY201001310252.html?ref=goo

子ども手当は満額支給=平野官房長官
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100201X385.html