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悪質な家賃取り立ては懲役、賃借人保護法案の概要が明らかに

2010年02月06日 09時45分17秒 | ベーシックインカム
敷金・礼金が不要のいわゆる「ゼロゼロ案件」で、少しでも滞納があると、暴力的に取り立てようとしたり、督促状を貼り付けたりする、合鍵を使って家のなかに入り込み家財道具を処分したり、鍵を交換して締め出したりするといった「追い出し屋」の被害が相次いでいる。
これらは、誰がみても違法行為と思うが、いわゆる「追い出し屋」は不動産会社や家主でないため、宅建業法や借地借家法などでは規制できない。そのため、どこも取り締まることができず、被害にあった入居者が裁判に訴えるしかなかった。国土交通省の民間賃貸住宅部会・不動産部会などでも「追い出し屋」の被害と法の不備が取り上げられており、業界団体の「自主規制」では被害が止まらないだろうとの判断から、「追い出し屋」をターゲットとする「賃借人保護法(仮称)」が整備されることになったのだろう。

賃借人保護法では、具体的には、大家や賃貸保証業者が、滞納を理由として、無断で鍵を交換したり、家具類を持ち出す、深夜や早朝に家賃を払えと訪問したり電話したりすることを禁止。これらの追い出し行為をすると告げることも禁止。違反した場合には、懲役2年または300万円以下の罰金。悪質なケースには両方を科すこともできるようになる。また、賃貸保証業者は登録制となり、悪質な業者は排除されることになる。
2月下旬に法案を閣議決定。今国会での成立を目指すとしている。

悪質な家賃取り立て行為は懲役 賃借人保護法案の全容
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2010020501000716.html


賃貸保証業者のここしばらくの動き方は、正直なところ適切とはいえなかった。業界としての「自主規制」では不十分で、法規制を強化すべきとの判断につながったのではないかと思う。このような検討がなされているなか、大きな批判を集めていた家賃滞納データベースの運用を開始したことは、注目に値する(さらに批判を集めるようなもの)。
家賃滞納データベースとは、連帯保証会社でつくる「全国賃貸保証業協会(LICC=リック)」が入居者の信用情報を登録し、一元管理しようとするもの。家賃の保証委託契約を結ぶ際に、生年月日や電話番号などの個人情報を収集。家賃の滞納があれば、その事実と金額、返済状況を登録していく。滞納があれば、データは消えない。このデータベースに滞納の履歴があるなどの理由から保証契約を拒まれたら、入居に必要な審査が通らなくなる。「ブラックリスト」として使おうとしているのは間違いないと日本弁護士連合会などが反対していたが、2月1日から加盟13社で運用を開始。1年後には約100万件の登録を見込んでいるとのこと。

家賃滞納データベース1日運用開始 日弁連など反対の中
http://www.asahi.com/national/update/0130/OSK201001300075.html?ref=goo

日本弁護士連合会
「民間賃貸住宅政策について(意見募集)」に対する意見書
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/100129.html

家賃滞納データベースが「ブラックリスト」として使われているとの告発が相次ぎ、社会問題化すれば、(まだ国会にも提出されていないが)賃借人保護法が強化され、賃貸保証業者による個人情報と信用情報の収集と一元管理が禁止されることになるだろう。個人情報保護の観点からも、このデータベースのあり方を注視していきたい。