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事業仕分け8日目 国土交通省のGISモデル事業を「予算大幅削減」

2009年11月27日 10時16分55秒 | 予算・事業仕分け
国土交通省の「モデル事業」として4つの事業が仕分けの対象となった。そのうち、地域づくりに取り組むNPOなどを支援する、「新たな公」によるコミュニティー創生支援モデル事業(3億円)は予算要求の9割削減、地理空間情報活用サービスモデル実証事業(1億円)は、予算要求の大幅削減が決定した。

「地理空間情報」を扱うITシステムは「GIS」のことであり、モデル事業は今回が初めてではない。仕分け人からの指摘どおり、相当に一般化したITシステムである。
公開された説明資料によると、モデル事業の必要性として、「個人情報の取扱い等に関するルールの整備」と「地理空間情報の標準化の推進」の2つの課題があり、検証して解決することで、新たなサービスが創出できるとのこと。民間主導での新規サービスの創出・展開やデータの標準化の検証ならば、経済産業省が担当してもよいし、具体例として提示されている「地理空間情報を活用した高齢者複合支援サービス」は厚生労働省や消防庁、警察庁が担当してもよい。道路をはじめとする地理空間なので、国土交通省が担当するしてもよい。このように「GIS」に関しては、様々な理由をつけて複数の省庁が同じようなモデル事業を繰り返してきた。逆にいえば、国土交通省が新たにモデル事業を展開する必要はないといえる。

モデル事業(説明資料)
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov26-pm-shiryo/1-63.pdf

「個人情報の取扱い等」に関しても、通常時の取り扱い方と非常時の取り扱い方のルール、様々な主体が共有して活用することに関するルールの議論は、様々なところでなされてきている。一般的な個人情報の保護と活用のルール=バランスの議論があり、災害発生時などに「弱者」となる可能性が高い高齢者や障害者などの個人情報の保護と活用のルールがある。さらに、取り扱う個人情報が一般的な情報か、センシティブな情報かというレベルに応じて、ルールが決まることがある(例えば、医療機関が管理する医療情報か、それとも介護事業者が管理する介護情報か、民間企業がサービスの提供のために管理している個人情報か)。個人情報を管理し共有する機関=主体が、医療機関か介護事業者、民間企業や地域住民かによってもルール=守秘義務のかかり方や遵守すべきガイドラインが違ってくる。
緊急時には、保護されるべき個人情報であっても第三者に提供するというルールの場合、「緊急時」とはどのような時か、誰が判断するのか、提供先で情報の目的外使用や不適切な管理がなされた場合に誰が責任をとるのか。逆に、必要としているにも関わらず個人情報だからと提供しないことによって生じた不利益に対して誰が責任をとるのかなど、考えなければならないことは多くある。

しかし、国土交通省が改めてそれらの議論をゼロから始めなければならないことはないし、地理空間情報に紐づけて考え方を整理し実証する必要性はあまり感じない。
予算が大幅に削減されても続けるとすれば、各分野の有識者を集めて、個人情報の取り扱いについての論点を整理した上での議論、これまでに各省庁で行ってきたモデル事業をレビューした上での地理空間情報のデータフォーマットなどの標準化の議論をする。1年間かけて(これまでに、どこでも検討されていない)実証して明らかにしなければならないことが見つかったとすれば、仕分け人にも必要性が伝わる「具体例」を出せるのではないだろうか。今回の「具体例」に書かれていることは、10年ほど前に出されていてもおかしくないような内容である。

新たなサービスの創出にあたって、この2つの課題が障壁になっていたとすれば、国の考え方・方針を打ち出すことで自然にサービス産業が立ち上がるだろう。ここまでくれば、民間に任せたほうがよい。


仕分け結果の詳細(11月26日分)
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112601000905.html